169.装備更新(リクパーティ他)

 ハル達のパーティが帰っていった後、入れ替わるようにリク達のパーティがやってきた。

 リク達の装備についても完成しているので、この場で引き渡しを済ませてしまうことになった。


「さすがドワンさんだな。まだ最前線でも滅多に使われてないアダマンタイト製の鎧を作れるなんて」

「ふむ、わしとしてもなかなかいい経験値になったぞい」


 この会話が示すようにリクの防具は総アダマンタイト製の全身鎧だ。

 おそらく職業効果によるものだろうが、鉄鬼の装備より防御力が低いがそれでも最前線パーティでも滅多に持っていない総アダマンタイト製だ、物理防御力は群を抜いている。

 リクはこのほかにミスリル金の合金製の鎧も一式発注しているらしい。

 【重装行動】は持っているらしいので装備重量はあまり気にしないが、物理防御だけ高いアダマンタイトだけでは不安があるということだろう。

 ちなみに、ミスリル金とあわせる金属はメテオライトと聞いている。

 また、リクはドワンに武器も依頼しておりそちらも受け取っていた。

 武器の方は一般的な長剣で、これといった特徴のない剣に仕上がっているらしい。

 属性なども特に付与せず、純粋に高攻撃力に仕上げた品だそうだ。


 周りでは他のパーティメンバーにも装備が配られており、それぞれが装備の着け心地を確かめているところだった。


 拳闘士系のダンは革鎧一式を装備している。

 この革鎧は氷鬼と雷獣の革を合わせて作られているため、それぞれの属性防御が上昇するおまけ付きだ。

 それ以上に拳闘士としては、敏捷性AGI上昇効果の方が嬉しいだろうが。

 それから武器としてナックルを受け取っていた。

 どうやら両手で1つのセット装備のようだな。


 重剣士のガインはリクよりは軽装になるが金属鎧、こちらはメテオライトとミスリル金の合金製である。

 特筆すべきはその武器だろう。

 前にあったときは普通の大剣、つまりは両手剣を使ってたと記憶してたが、今は特大剣を使用しているらしい。

 実際に総アダマンタイト製の特大剣は非常に重たいが、攻撃力上昇は670まで届くという恐ろしい武器となっている。

 普通のザコモンスターならこの剣で殴られるだけでも一撃死するだろう。


 レンジャーのシノンの防具は雷獣の革製ソフトレザーアーマー。

 俺の空狐装備と同じく素早さ重視の装備だ。

 そして武器の長弓だが、先週のレイド挑戦前にも更新していたが今回も新しい弓を渡すことになったらしい。

 その弓の攻撃力は一般的なそれを遥かに上回るものだった。

 イリスが手渡したその弓は正式には【魔導弓】と分類される弓らしい。

 武器分類としては魔導弓と長弓の両方の性質を持っているので問題ないらしいが。

 イリスがどこかから見つけてきたこの魔導弓は矢を放つときに魔力MPを消費する代わりに、矢の威力を上昇させる効果があるらしい。

 実際、攻撃力表示を見せてもらったが『356+200』という表記になっていたしな。

 シノンはこれを手に入れたときに新しい派生スキルが現れたらしく、少し悩んでいたが派生スキルを覚えたようだ。


 神官のマリエは接近戦も行うことがあるという事なので、革鎧に魔術士系のステータスボーナスを張り付ける形になった。

 基本はシノンと同じ雷獣のソフトレザーなので敏捷性AGIも上昇する防具一式に大満足のようだ。

 武器については接近戦で殴るためのメイスと遠距離戦で魔法を使うための短杖の2つを受け取っている。


 最後に魔術士のシャルには魔術士向けとしては一般的なローブセットが渡されていた。

 もちろん、見た目こそ普通のローブセットではあるが、その性能は一般品とは比較にならない高性能品である。

 武器はミスリル金で装飾を施した長杖。

 魔法攻撃力は484となり、今回作成した魔術士向け装備の中でも最高の攻撃力となっている。


「そーいえば、トワ。盾って聖霊武器にできんの?」


 リクからそんな質問が飛んできた。

 リクも聖霊武器を作るための前提条件は揃えてあるらしい。


「うん? ……試した事がないからわからないな」

「そうか、ちょっと試してもらっていいか?」


 試してみないことにはわからないしな、試してみるほかないだろう。


「それじゃあ、工房に行くぞ」

「りょーかい。それじゃ皆、ちょっと行ってくるわ」


 工房に移動して試してみた結果、盾も聖霊武器化できると言うことがわかった。


「それで、そのアダマンタイトの盾を聖霊武器化するのか?」

「んー、聖霊武器化するならミスリル金の盾の方がよさげなんだよな。汎用性ありそうで」

「それなら、今日のところはここまでか?」

「そうだな、サンキュ」


 検証を終えた俺達は談話室へと戻ってくるが、この短い間にも談話室にいる人数は増えていた。

 教授達『インデックス』のパーティメンバーも装備の受け取りにやってきたらしい。


「トワ君であるか。お邪魔しているのである」

「教授達も装備の受け取りか」

「その通りである。我々の装備まで用意してもらえて助かるのであるよ」

「余計なお世話じゃなかったならよかったが」

「『インデックスうち』のお抱え職人の目標にもなるのでこれはこれでいいことなのである。……出来れば、まだ未検証の★12装備が見て見たかったのであるが」

「それは無理だな。まだ俺達のうち誰も★12は作ったことがないからな」

「それは残念である。出来たら教えてほしいのであるよ」

「出来たらな。どうすれば出来るのかは目処が立っているが、いつ出来るかは目処が立たない状態だからな」

「うむ、それで構わないのである。他にも協力関係にあるクランはいくつかあるが、どこも★12に関してはあまり色よい返事がもらえないのであるからなぁ」

「だろうな。まあ、出来たら教えるよ」

「そうしてほしいのである。……それにしても、『ライブラリ』の本気装備というのは恐ろしい性能であるなあ」

「恐ろしい性能と言われてもな……普段はこんなの作らないというのは本音であるが……」

「そもそも素材供給が追いつかないであろうからな。もう少し最上位素材が出回るようになればいいのであるが……」

「さすがに、それはまだきついだろ。クランで取りに行ってるのはクラン内で消費されるのがほとんどだろうし、そうじゃなくても大抵は自分達で消費して終わりだからな」

「そうであろうなぁ。なんとももどかしいのである」

「それに最上位素材といっても、レイド産の素材は出回ってすらいないからな……サンプルとして『白夜』から分けてもらったのはあるが、それだって極めて少量でまだ手を付けてないって言ってたし」

「ふむ、『ライブラリ』でもまだ手を付けられていない素材であるか……」

「それで装備を作っているとしたら『百鬼夜行』のようなクランだろうな」

「それは、ありそうであるなあ。あそこは武器も防具も一線級の職人が在籍しているであるが故に」


 教授とそんな事を話ていたら談話室に新たな人影が現れた。

 白狼さんと『白夜』のメインタンク、ガイスさんだ。


「おや、白狼君達も装備を頼んでいたのであるか?」

「ああ、教授。うん、ガイスの盾だけは頼んでおいたんだ。僕等の職人じゃ、今の盾よりも上位の盾が作れないって言われたからね」

「ふむ……ちなみに、どんな盾を発注したのであるか?」

「アダマンタイトとミスリル金の合金製の盾をね」

「それはまた贅沢な組み合わせであるなぁ……」

「少なくとも、今見つかっている金属では最上位同士の合金かな?」

「それで、それは出来上がっているのであるか?」

「うん、出来上がったってメールが届いていたよ。だからこそ今日取りに来たんだけどね」


 盾を頼んでいたのは知っていたけど、そんな盾だったのか……

 よくドワンも受ける気になったものだ。


「受け取ってきましたよ、白狼隊長」

「うん、出来はどうだった?」

「完璧としか言いようがないですね。後は実戦で使ってクセを確かめるだけです」

「それはよかった。さて、それじゃあ少し慌ただしいけどお暇しようかな」


 ああ、そうだ。

 どうせだから、さっきの情報も伝えておくか。


「白狼さん、聖霊武器ですけど盾でも作れるようですよ」

「へえ、本当かい?」

「ええ、さっきリクの盾で試してみたけど問題なく聖霊武器化できそうでしたから大丈夫だと思います」

「そうか……ガイス、どうする?」

「今日のところは様子見とします。実際に使ってみて問題なければ聖霊武器にします。……正直、タンクが武器を強化してもたかが知れてますしね」

「それは仕方が無いところだけどね。さて、有益な情報ももらえたし今度こそお暇するよ、それじゃあ、今週末もよろしくね」

「ええ、よろしくお願いします」


 白狼さん達2人はホームポータルから去っていった。

 さて、俺はこれからどうしようかな……


「トワ君、盾を聖霊武器に出来るというのは本当であるか?」

「うん? ああ、さっき聖霊武器にする直前までは出来たから大丈夫だと思うぞ。実際に聖霊武器化したわけじゃないから、ステータスがどうなるかは試してないけど……」

「ふむ、そういえば我々が試したときは品質が足りなかったのであるな。新しい装備も手に入ったことであるし、我々のタンクでも試してみるのであるよ」

「わかった。何かわかったことがあったら教えてくれ」

「構わないのである。それではまたである」


 教授達『インデックス』のパーティも受け取りと説明を済ませるとホームポータルから去っていく。

 残されたのはリク達のパーティと『ライブラリ』のメンバーのみ。

 リクのパーティメンバーも一通りの説明を聞き終えているらしく、後はリクを待っていたようだった。


「それじゃ、俺達も行くわ。……ああ、そうだ。武器の試しが終わったら全員の聖霊武器化をお願いしたいんだけど、大丈夫か?」

「ああ、大丈夫だ。そのときはまた来てくれ」

「了解、それじゃあまたな」


 これでリク達のパーティも装備品は整ったことになる。

 後は……俺達のパーティだが、こっちはこれ以上の装備強化は望めないだろうな。

 アップグレードするにしても、★11までしか作れないんだったら余り差はないし。


「さて、とりあえず装備の納品は終わった訳だけど……これからどうしたものかしら?」

「ふむ、まずはわしらの装備をアップグレードするかじゃが……正直、これ以上のアップグレードは難しいじゃろうな」

「そうだねー。ボクの武器は魔導弓に変えたけど、他の皆の装備はこれ以上アップグレードするのは難しいだろうねー」

「アップグレードしてもいいけど、この前のダンジョンアタックの時に強化したばかりだしね……どの程度上がるものかしら」

「ふむ……とりあえず、様子見でもよかろう。装備類に関しては、今でもアクセサリー以外はレベルに対して過剰な性能を誇っているからのう」

「そうなるとアクセサリーだけど……錬金アクセサリーでこれ以上の性能は厳しそうだからな。どうにもならないな」

「そうじゃな。せめてあやつがいれば話は変わったのじゃろうが」

「あやつ? ですか?」

「ああ、ユキは知らないわよね。ライブラリにはβの頃は細工士が在籍していたのよ」

「β終了間近になってからログインしなくなっちゃったんだけどねー。今はどうしているのかな?」

「少なくともログインはしておらぬようだな。フレンドリストにはあやつの名前は載っているが一度もログインした形跡がない」

「何も言わず辞めるタイプじゃなかったんだけどね……まあ、いない人間のことを話してもしょうがないし、私達のことを考えましょうか」

「とりあえず後出来そうなことは消耗品の補充と俺達自身の連携強化だな。……あとで古代神殿にでも行ってみるか?」

「まあ、それが妥当なところでしょうね。他には何かあるかしら?」

「これといって思い浮かばんのう。今は連携を強化するより他あるまい」

「そうだねー。そうしよう」

「はい、わかりました」

「それじゃ決まりね。準備が出来たら古代神殿に向かいましょうか」


 こうして、俺達の準備も整いあとは次のレイドアタックである土曜日を待つだけとなった。

 なお、この後、ハルやリク達のパーティ全員分および柚月達の聖霊武器を作ったのは言うまでもない。

 白狼さんや教授にも声をかけたが、それぞれ自前で聖霊武器化できるらしく大丈夫という回答だった。



**********


~あとがきのあとがき~



という訳で全員の装備更新でした。

今回も人数が多いので個別のステータスは省きます。

トワや鉄鬼クラスの装備が全員に行き渡ったんだなと考えておいて下さい。


なお、レイドエリアの仕様上、完全なオーバースペックです。

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