160.今週の予定
「さて、今週はどう動くか考えないとな」
全パーティが揃っての反省会が終わった後、俺達『ライブラリ』が今週どう動くかについての話し合いとなった。
談話室には『ライブラリ』メンバーが全員揃っている。
「とりあえず確認だけど、装備はまだ作り始めないんだよな?」
「ええ、まだ【魔力操作】も【気力操作】も出来てないからね。それから素材ももう少しほしいところだわ」
「わしも同じじゃのう。まずはスキルを今週中に覚えられるかどうかが勝負じゃわい」
「ボクも一緒だねー。どうやってスキルを覚えようか模索中だよ。……あと、ちょっと変わった弓のレシピを見つけたからそっちの研究かなー?」
「あ、私、【気力操作】は出来るようになりました」
「ユキ、本当!?」
「ああ、本当だ。俺も使ってるところを確認したからな。あと俺の方は【魔力操作】を覚える事が出来た」
「ふむ、それは明日にでも実践してもらうとしようかの。それで、それ以外の予定じゃが……どうする?」
「うーん、難しいところよね。スキル修練は確実に行うとして、他はどうするか……」
「そうだな……とりあえず俺達自身の種族レベルを上げに行くのはどうだ? 来週に行ってる余裕はなさそうだが」
「……それもそうね。古代神殿だっけ? そこでレベル上げすると効率がいいって言われてたわね」
「そうだねー。今週中にボク達のレベルを45以上まで上げておこうか」
「わしも異存はない。むしろ今週中に終えてしまわねば面倒な事になるじゃろうな」
「それじゃ、そっちの方は決まりね。そういえば、トワ。錬金術で作るアクセサリーの話はどうなったの?」
「ああ、アクセサリー錬成の話か。聞いてきてあるし、もう作る事が出来るぞ。……ただし、前にも言ったとおり非常に面倒だが」
「面倒? ああ、宝石ごとに上がるステータスが変わるって話?」
「そういうこと。ステータスの上昇値が宝石によって異なるんだよ。宝石の種類毎に上昇するステータスが決まっていて、どの宝石を使うかでどのステータスが上昇するか、あるいはどの属性が強化されるかが決まるみたいなんだ」
「ちなみにどの宝石でどのステータスが上がるかはわかってるの?」
「そっちは『インデックス』に言って聞いてきた。これが宝石毎の上昇ステータス一覧だ」
俺はインベントリから一覧を取り出して柚月に渡す。
柚月はその一覧を見て……うん、顔をしかめてるな。
「……これはまた面倒なシステムね……」
「ああ、面倒なシステムだ。正直、ステータスを上げるだけのアクセサリーを作るんだったら、普通に細工スキルで作った方が早いな」
「ってなると、大事なのは属性上昇が出来るって事かしら……」
「後はその気になれば6つのステータス増強効果を得られることだな。アクセサリー錬成で使う宝石の数は2個か3個だから」
「……さすがに3個の組み合わせまで考えるとなると、頭が痛くなるのう」
「そうだねー。ボクの場合は、ほとんど魔法を使わないからステータス増強だけでいいんだけど、それでもどのステータスを上げればいいのか悩むところだよねー」
「わしも同じじゃな。ステータスだけ上げることが出来ればよい。……だが、そうなると普通のアクセサリーでもいいという話になるか」
「まだ、市場に出回っているアクセサリーのランクが低いからな。複数のステータスを上げられるのが強みではあるが……」
「使う宝石の組み合わせが膨大すぎるのが問題よね。さて、どうしたものかしら……」
「まずは試しに1人1種類ずつ作ってもらうのがいいんじゃないかなー? その結果を見て、他のアクセサリーも変えるかどうか決めようよ」
「……まあ、それしかないわよね。さて、そうなるとどの種類のアクセサリーを作ってもらうかよね……」
「言っておくけど、俺にデザイン性を期待するなよ? そっちはあまり得意じゃないんだから」
「わかっているわよ。……でも、見本となるスケッチでもあれば大丈夫でしょう? 完成見本のスケッチは描いて上げるから、それを見てデザインしてみて頂戴」
「……わかった。どこまで再現できるかわからないがやって見るよ」
「なら決まりね。私は耳飾りがほしいかしら。デザインとしてはイヤリングね」
「ボクはネックレスがいいなー。ペンダントタイプのネックレス」
「わしもネックレスがいいのう。デザインはこだわらなくていいからデフォルトで構わん」
「あの、私は指輪がいいな。できる?」
柚月がイヤリング、イリスとドワンがネックレス、ユキが指輪ね。
全員の希望はこれで確認出来たかな。
「……希望は確認した。後はどの宝石で作るかだな」
「……それが問題よね……一覧はあってもどの宝石で作るかを実際に決めて、その宝石を手に入れないといけないんだから」
「そうじゃのう。お勧めの組み合わせというのも、まだないわけじゃからな」
「うーん、そこは悩むところだよねー」
「さて、どうしたものかしら……」
柚月達3人は一覧表を見ながらどれがいいかを選び始めている。
正直、俺からお勧めできるものもないし、各自で決めてもらうしかないよな……
「ねえ、トワくん。私の場合ってどうすればいいかな?」
「ユキの場合か……ちょっと待ってな」
俺は一覧表の
……とは言っても、ユキの場合は色々パターンが考えられるから結構難しい。
アタッカーとしてみた場合、必要になってくるのはSTR、INT、光属性、神聖属性。
サポート要員としてみた場合、必要になってくるのはINT、MND、神聖属性、回復。
さて、どうしたものかな……
「ユキはどの構成で強化したいんだ? 例えば、物理攻撃力優先とか、魔法攻撃力優先とか」
「えーと、私はどちらかというとサポート力を強化したいかな?」
サポート力か、それなら……
「ダイヤモンド、パール、それにムーンストーンかな。これで、INT上昇、MND上昇、光・回復・神聖強化の効果が得られる」
「えっと、ダイヤモンド、パール、ムーンストーンだね。出来れば高品質のものの方がいいよね?」
「そうだな、まだアクセサリー錬成を試してないからどこまで出来るかわからないが、できるだけ高品質なのを使った方がいいだろうな」
「うん、わかったよ。それじゃあ買ってくるね」
ユキはマーケットボードの方に向かっていき、市場からアイテムを選び始めたようだ。
……俺も自分用に何を使うか考えないとな。
「……あら、ユキはもう何を使うか決まったの?」
「ああ、決まった。INT・MND・光・回復・神聖強化だな」
「……完全にサポート用の構成ね。……でも、神聖属性のレベルが一番高いのはあの子だし、間違った選択じゃないのよね」
「そういうことだ。柚月の方は決まったのか?」
「見ればわかるでしょう。まだ悩み中よ。属性優先で行くのか、ステータス優先で行くのか検討中」
「そうか。それじゃあ、俺は自分の分を考えることにするよ」
「わかったわ。……ああ、ちなみに、複合属性を上げたい場合ってどうすればいいの?」
「複合元の属性2種類を揃えれば複合属性の強化も可能だって教授が言ってたぞ」
「そっか、了解。それじゃ、もう少し考えてみることにするわ」
柚月の方も自分の宝石をどれにするか再度考え始めたようだ。
俺も自分の分を決めないといけないけど、属性を優先するかステータスを優先するか、どうしたものか……
属性を優先だと、エメラルド・オパール・ルビーで、AGI・INT・火属性2・風属性2。
ステータス優先だと、アイオライト・ターコイズ・ラピスラズリで、DEX2・AGI・INT2・MND。
さて、どっちを作るか……って、自分の分だしどっちも作ればいいのか。
自分の分は指輪にして、その両方を使えるようにしておこう。
そうと決まれば俺も市場から宝石を買わないとな……
さて、俺もマーケットボードにアクセスしてと……宝石一覧を見てみるけど、かなり大量の出品があるな……
まだ、宝石を使った強化は主流になってないからな。
使うのは宝石をアクセサリーに使う細工士ぐらいで、他は全部出品者だから出品量が大量なんだろうか。
……そう言えば、細工ギルドに宝石の原石を持ち込めば磨いて宝石にしてくれるんだっけ。
普段使わない情報だからすっかり忘れてた、というよりうちのクランでは誰もやってないな。
出品一覧の中から品質が低いものを除いてっと……★4以上まで絞り込むとかなり数が減ったな。
さて、どうしたものか……練習用もほしいから★4で練習用を買い集めて、自分の分は出来る限り高品質で買うとするか。
とりあえず、練習用は……適当に★4を30セット分でいいか。
試作品を売ることも考えて、属性強化系を優先で作るとしよう。
「トワくん、私の分の宝石は準備できたよ」
市場から適当に宝石を買いあさっていると、ユキに声をかけられた。
「ん、わかった。それじゃあ一度預かるよ」
「うん……はいこれでお願い」
手渡されたのは先ほど指定した、ダイヤモンド・パール・ムーンストーンのセット。
ただし、1セットではなく2セットある。
品質は……どれも★7だな。
「指輪だけじゃなくてイヤリングも作ってほしいの。お願いできるかな?」
「まあ、そう言うことなら。ただ、デザインはあまり上手くないから、デフォルトになるけど問題ないか?」
「うん、それは構わないよ。それじゃあ、お願いします」
「ああ、任された」
ユキから受け取った宝石をインベントリに区分けしてしまっておく。
品質が高いから他のと混ざることはないけど、念のため分けておかないとな。
さて、そうなると今度は自分の分の宝石だが……うん、どの宝石を探しても★7までしかない。
一応、エメラルドとアイオライトだけは★8があったけど……値段が高すぎる。
きっと細工士が頑張って作る宝石の限界が★7で、製造クリティカルが出て★8といったところなんだろう。
さすがにどの程度の装備が出来るのかわからない以上、★8はいらないな。
★4の宝石だと1個1万から2万程度だけど、★7になると1個40万からか……結構高い。
問題なく買える範囲だから買うけど、これは商品として作るときにどうするか考えないといけないな。
……面倒だから、宝石は持ち込みのみにするか。
自分の分の宝石も確保し、ユキの分も含めて使う宝石の組み合わせをメモしておく。
さすがにこれだけの数があると、どれを組み合わせるのかわからなくなるからな。
組み合わせのメモを書いていると、柚月達3人も宝石を決めたらしくマーケットボードにアクセスしていた。
マーケットボード前で待っていてもしょうがないので、近くの椅子に座って柚月達の買い物が終わるのを待つ。
やがて柚月達の宝石選びも終わり、俺の方に宝石を持ってやってきた。
「それじゃあ、これでお願いね。……それにしても宝石も高品質になると、それなりに高いわね」
「普段使わないからそう思うんだよー。ボクは杖を作るときの装飾で使うこともあるから、相場は知ってるけどね」
「いざ自分用となると高品質がほしくなるが、品質が揃わないのでは限度が見えているからのう。そういう訳でこれで頼むぞい」
柚月達から渡された宝石の組み合わせもメモに追加する……追加するのだが……
「ドワン、同じ宝石を3つっていうのはどうなんだ?」
「わしが戦闘用で使うのであれば必要なステータスなど知れているからのう。同じ宝石だけで作るサンプルも必要じゃろう」
「……まあ、それもそうか。とりあえずこれで作らせてもらうよ」
「うむ。頼んだぞい」
「デザイン見本は明日の夜までには作っておくわ。私とイリスの分ね」
「了解。……ああ、そうだ。ドワン、アクセサリーの錬成にインゴットを使うんだけど用意してもらえるか?」
「わかった。何が必要なんじゃ?」
「練習用のアクセサリーで銀が30個。本番用のアクセサリーでミスリル金が7個かな」
「それならばすぐ渡せるので今渡そう。全て★11だが問題ないな?」
「うん、十分。それじゃお願い」
「うむ。……それではこれがインゴットじゃ」
「ありがと。明日の昼間にでも練習して、夜には本番を作れる準備をしておくよ」
「わかったわ。それじゃあ、よろしくね。私はイリスとデザインを考えてくるから」
「それじゃー、明日よろしくね、トワー」
「わしは自分の工房で作業でもするとしよう。わしの分のアクセサリーは地味なので十分じゃからな」
「わかった。それじゃあ、またな」
柚月達3人が出て行ったため、談話室には俺とユキの2人きりになった。
さて、ユキの分のアクセサリーはデザインどうしようか……
「ユキ、デザインの希望はあるか?」
「ええと……特にないかな。デフォルトでも構わないよ?」
「そうか……まあ、わかった。明日考えてみるよ」
「うん、お願いね。あ、あと、明日は夜までログイン出来ないからよろしくね」
「わかった。とりあえず任せておいてくれ」
「うん、よろしくね。……それじゃあ、今日はもう落ちるね。お休みなさい、トワくん」
「ああ、お休み、ユキ」
ユキがログアウトするのを見送った後、俺は日課のマナカノン製造と練習素材の受け取りにワグアーツ師匠の家へと向かうのだった。
それが終わったら俺も今日は寝るとしよう……
**********
~あとがきのあとがき~
やることの少ない一週間のため、自分達のレベルアップを優先することに。
プロットを見直したんだけど、レベル上げをする暇があるのがこの一週間だけだったんじゃよ。
そして、興味がある方向け、誰がどの宝石でどんな効果のアクセサリーを作る事になったのかのメモ。
属性やステータスの種類の後に数字がある場合は同じ効果の重なっている数、括弧で書かれているのは属性の組み合わせによって発生する複合属性。
トワ:指輪×2
エメラルド・オパール・ルビー
=AGI・INT・火2・風2・(雷2)
アイオライト・ターコイズ・ラピスラズリ
=DEX2・AGI・INT2・MND
ユキ:指輪・イヤリング
ダイヤモンド・パール・ムーンストーン
=INT・MND2・光・回復・神聖・(神聖)
柚月:イヤリング
アクアマリン・オパール・トパーズ
=INT・火・水・土・風・氷・(雷・溶・氷・樹)
イリス:ネックレス
オブシディアン・スピネル・ターコイズ
=STR2・VIT・DEX・AGI・INT
ドワン:ネックレス
オブシディアン×3
=STR3・VIT3
どの宝石がどんな効果を持っているかについては、要望があったら一覧を追加します。
前にも書いたけど22種類もあるので結構長くなるんですよ……
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