158.レイドアタック 3 ~事前準備~
色々と支度を調えて迎えたレイドアタックの日。
間に合った装備はと言えば、ハルパーティのセツ用のライフルとリクパーティのシノン用の弓くらいだ。
もっとも、どちらも★11で揃えた一級品なのは間違いないので今日の攻略でも多いに役立ってくれるだろう。
レイドアタックの前に新しい装備の確認をしてもらうと言うことで、2人のパーティには事前にクランホームに集まってもらっていた。
武器を更新することになった2人は、それぞれ新しくなった装備の使い勝手を確認している。
俺の方は、ハルのパーティメンバーのセツだな。
「それで、新しいライフルの使い勝手はどうだ?」
「うぅ……とても使いやすいです」
「そうか、それならよかった」
調子に乗って作った結果、攻撃力が半端ない数値になってしまったからな。
反動のことを考えると扱いこなせるか疑問だったのだが、杞憂で済んだようだ。
「ですが、こんな強力な装備をいただいて本当によろしいのですか? 正直、あまり支払えるお金に余裕は無いのですが……」
「んー、そこはあまり気にしなくていいぞ? どこかのパーティが対応能力低いとクリアできないタイプのレイドだし。そうだな、とりあえず2Mもあればいいや。後払いでも構わないからさ」
「……2Mでしたら即金で支払えますので渡しますが……本当に構わないのですか?」
「ああ、構わんぞ。というか、使ってもらわないと俺が持っていても使わない装備だからな」
「……わかりました。それでは大事に扱わせてもらいます」
「そうしてくれ。で装備の名前は決まったのか?」
「……はい、『雪花』でお願いします」
「了解、ちょっと貸してくれな……はい、終了。フレーバーテキストも少しいじっておいたから、何か不都合があったら言ってくれ。あと、トレード不可の設定だが設定しても構わないか?」
「はい。というより、こんな装備を他人においそれとは渡せません」
「それもそうか。それじゃあとりあえず30日で設定するか」
「……永久でも構わないですよ? これ以上の武器なんて、少なくとも半年は手に入らないでしょうし」
「そうか? ならトレード不可じゃなくて、装備者固定をかけるか……はい、完了。それじゃ、これはセツ専用の武器だから」
「はい、ありがとうございました」
とりあえず、こっちの調整は無事済んだようだな。
あとは、あちらの調整だが……
「トワー、装備ボーナスの振り直しアイテムって余ってる?」
「うん? 余っているがどうかしたのか?」
「どうやらボクの作った弓が強力過ぎて、今のボーナスじゃ満足に扱えないみたいなんだよねー。アクセサリー装備を変えてSTRを上げたら扱えるようになったから、ボーナス設定を振り直せば使えるようになりそうだと思って」
「そうか、わかった。それじゃ、これを使ってくれ」
「ありがとー。それじゃ、作業してくるねー」
確か、イリスの弓も攻撃力400の大台に乗せたとか言ってたよな。
……弓の攻撃力って
確か、イリスはSTRが低くても扱える高攻撃力な弓の研究をしていたはずだが……さすがに間に合ってなかったか。
それとも改良を施した上で、まだSTRが足りていなかったか。
どっちもありえそうだから困るな。
……どうやらあちらもボーナス振り分けを変えたら無事扱えるようになったようだな。
これで今日挑む分には問題はなくなったな。
リク達のパーティがこちらの方にやってきた。
そろそろ出発の時間だな。
「なあ、トワ。なんなのお前のクラン。少なくとも攻撃力400超えた大弓なんて俺達知らないんですけど?」
リクがそんな事を聞いてくるが、弓の攻撃力事情なんて俺に聞かれても困る。
そこのところに詳しいのは、弓を作っているイリスだろう。
「それを俺に聞かれてもな。弓の攻撃力に関してならイリスの方が詳しいからそっちに聞いたらどうだ?」
「もう聞いたよ。試しにいくつか作ってみたら出来たそうだ……あれだけの高攻撃力でデメリットなしとか、本当にヤバイよ……」
「それならそう言う事なんだろ。ライフルだって一手間加えれば攻撃力400行くんだし、遠距離武器は回転率が悪いからな。その分、攻撃力が上がりやすいとかなんじゃないのか?」
「……いや、それにしてもヤバイだろ。普通に近接装備の倍はあるぞ……」
「それは俺も知ってるが。システム上、問題ないんだから大丈夫だろ? それよりもそろそろ時間だ。レイドエリア前に向かうぞ」
「……ああ、わかったよ。今回は妖精の繭を守り切ってみせるぞ!」
とりあえずリクの方も気合いが入ったようだな。
空回りしないといいけど。
ハルやリク達と一緒にレイドエリア前に移動すると、『白夜』の面々が既に待機していた。
教授達はまだ来ていないみたいだな……
とりあえず、白狼さんに挨拶をするか。
「こんばんは、トワ君。そちらの準備はどうかな?」
「こんばんは白狼さん。こっちの準備は大丈夫ですよ。……とは言っても今週は装備の準備とかに手を取られてレベル上げに行ってる余裕なんてなかったですけど」
「知ってるよ、掲示板でも騒動になっていたからね。僕のクランからも何人かあの時に装備を買えた人がいたらしいよ」
「そうですか。まあ、もう処分する在庫もあまり残ってないですし、同じような事はもう出来ないですけど、しばらくの間は」
「まあ、そんな頻繁にあんな騒ぎを起こされても困るからね。そこのところは自重してもらえると助かるよ」
「わかってますよ。それじゃなくても、ここ数日はお店に来るオーダーメイド目当てで客が多かったらしいし」
ここ数日は『ライブラリ』を訪れる客足がかなり多かったらしい。
柚月は全て『しばらく忙しいから却下』していたらしいけど。
実際、レイドメンバー用の装備作成で柚月達はかなり忙しい状態のようだ。
俺は作る数がそんなにない……というか、ポーションぐらいしか用意しなくても済むので準備にそこまで時間はかからないが、10人以上の装備を作っているドワンや柚月はかなり忙しいようだ。
レイドメンバー以外にも事前に受けていたオーダー分の作成もあるからな……
本当にご苦労様と言うところか。
「そう言えば教授達は? まだ来ていないんですか?」
「来ていないと言えば来ていないんだけど……正確には、一度来たけどまた戻ったという感じかな?」
「うん? 忘れ物でもしたんですか?」
「新しい内容の検証らしいよ。1時間くらいしかかからないはずだと言っていたけど……」
「1時間って結構な時間ですよね?」
「ここに来る前に『白夜』に来ていたからね。そのときに聞いた話だよ。時間的にはそろそろ来るはずなんだけど」
「一体何の検証をするつもりなんでしょう?」
「そこまでは教えてくれなかったね……どうやら来たようだよ」
白狼さんの視線を追うと、森の中から出てくる教授達の姿があった。
でも、教授が森の中から出てくる理由ってなんだ?
「おや、他のメンバーも揃っていたのであるな。待たせてしまったのであるか?」
「……いや、集合時間には十分に間に合っているからいいけど……何でまた、森の中から出てきたんだ?」
「ケットシーの案内なしでここまで来る方法を実践していたのであるよ」
「……そんな方法があるのか?」
「うむ、あったのである。ケットシーに聞けば教えてくれるのであるが、ケットシー達の協力なしでここを訪れるには【妖精の導き】という特殊スキルが必要なのである。今回はそのスキルを使った場合、実際にたどり着けるかどうかの検証をしてきたのであるよ」
「【妖精の導き】ねぇ……聞いたことのないスキルだけど……」
「トワ君は知らないだろうね。【妖精の導き】はダンジョン内で使うと近くの宝箱の場所に案内してくれるスキルだよ。もっとも、入手経路が特殊なのと効果が地味なのとであまり広くは知られていないけど」
「そうなんですか? ちなみに入手経路って?」
「土曜日だけ王都に出没する
「まあ、存在は知っていても買わない人の方が多いけどね。僕達も存在を知ったときに探して買ったけれど、土曜の夜だったのに20個残ったままだったからね」
「まあそんなわけで【妖精の導き】でも花畑からここまで来られることがわかったのである」
「それって必要な情報か?」
「今後、情報を売るときには必要になってくる情報である。今週分の【妖精の導き】は買い占めてしまったのであるがな」
「……まあ、構わないけどさ。それで、レイドに挑む準備は出来てるのか?」
「大丈夫であるよ。それから、特殊ポーションの中毒値であるが、移動速度増加ポーションは極端に低いようであるな。効果時間が切れる度に使う程度であれば中毒は発生しなかったのである。ステータス増加ポーションは、それなりの中毒値上昇があるのであるが……効果時間が極めて長いので問題にならないのである」
「そっか。それじゃあ、ポーションを配布してレイドに挑もうか」
「ああ、『白夜』の分のポーションは移動速度増加ポーションだけで十分かな。先週もらったポーションがまだ残っているからね」
「『インデックス』も同じである。ステータス増加ポーションも試供品としてもらったものが残っているので問題ないのである」
そういう訳らしいので『白夜』と『インデックス』には移動速度増加ポーションだけ配ることに。
ハルやリク達には普通にポーションを配った。
正直、在庫が余ってしまったが……途中で補充したくなった時用として考えておけばいいか。
さて、それではレイドアタックを始めようか!
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