156.錬金アクセサリー
今日も今日とて夜のログイン。
まずはいつも通りに日課のマナカノン製造から。
そういえばガンナーギルドで聞いたけど、マナカノン以外の製造については受注するプレイヤーがそれなりの数いるらしい。
1日に5回分の制限は1人当たりの制限であって、全プレイヤーの制限じゃなかったんだな。
さすがに、今では10万人を軽く超えているらしいプレイヤーのうち5回しか受けられないんじゃ問題か。
でもマナカノンは俺しか受けていないらしいので、しばらくはマナカノン販売の独占状態が続きそうだ。
……さすがにわざと低ランクのマナカノン作るのは面倒だから、早く他にも作れるプレイヤーが出てきてほしいのだがな……
マナカノン製造が終わったら、昨日決めた予定通りに錬金術ギルドに行くことに。
2階の受付へと行きサイネさんの元へと直行する。
「いらっしゃいませ、トワ様。本日のご用件はなんでしょうか?」
「えーと、錬金術でアクセサリーを作れるって聞いたんだけど本当?」
「ええ、可能ですよ。もっとも相応の技術は必要ですが、トワ様ならまったく問題ないでしょう。講習を受けていただければ問題なく使用可能となると思いますが、講習をご希望ですか?」
「そうだな……来たついでだし受けていくか」
「かしこまりました。講習については材料を受講者に用意していただく場合と、材料を当方でご用意させていただく場合とで受講費用が変わりますがどうしますか?」
「用意する材料って?」
「金属のインゴットが1つに宝石が2つになります」
宝石が2つか……それを用意するのはきついな。
『ライブラリ』には細工師がいないから宝石の原石はそのまま放置されていて、宝石の在庫はまったくないや。
「宝石の用意が難しいので材料を用意してもらう方でお願いします」
「かしこまりました。それでは講習費用は20万Eとなります」
「20万Eね……はい、これで構わないかな?」
「確かにお預かりいたしました。それではご案内いたしますのでこちらへどうぞ」
サイネさんに案内されて2階の奥の方にある部屋へと通された。
どうやらここは講習などで使われるスペースのようだな。
それなりの広さのあるスペースに1人でいるのもなんだが、他に受講者がいないならそれで構わないだろう。
しばらく待つと、講師役であろう錬金術師が部屋にやってきた。
「君が今回の受講生かね。……君クラスならばすぐにでも扱えるだろうな」
「初めてなので失敗するかも知れませんがね。よろしくお願いします」
「ああ、よろしく頼むよ。早速だが、まずはスキルブックを渡そう」
手渡されたスキルブックは【アクセサリー錬成】のスキルブック。
名前のままだが錬金術でアクセサリーを作るために必要なスキルらしい。
講師役に促されるまま、まずはスキルブックを使用してスキルを覚えてしまう。
分類は特殊になってスキルレベルはなしか……錬金術スキルのスキルレベルが影響するんだろうな。
「スキルは覚えられたようだね。人によってはスキルを覚えるのに失敗してしまう事もあるのだが、さすがに上位錬金術士であればそんな事はないか」
「そのようですね。それで、次はどうするんですか?」
「そう慌てることはない。次は実践だよ。これが素材だ」
渡されたのは銀のインゴットが1つと宝石が2種類、アイオライトとターコイズだな。
宝石は装備やアクセサリーに付け加えることでステータス補正を上昇させることが出来るアイテムだ。
上昇量が品質によって固定されていてそこまで効果が高くないから、ライブラリではあまり使わない。
クラン内に細工士がいないため宝石を自作できないというのもあるが。
「錬金術でアクセサリーを作る際には土台となる金属のインゴットが1つ、それから能力を決める宝石が2つまたは3つ必要になる」
「2つか3つですか?」
「左様。基本は2つだが、応用として3つの宝石を使うことも可能となっている。もちろん難易度は上がるが……君のスキルならば3つでも練習すれば大丈夫であろう」
「そうですか、それでは早速実践してみても構いませんか?」
「ああ、構わないよ。そこにある錬金セットを使いなさい」
設置されていたのは……うん、中級錬金セットだな。
さて、品質限界は★8の訳だがどこまで品質を上げることが出来るか……
ちなみに、用意された素材の品質は全て★4で統一されていた。
「それじゃあ、始めますか。錬金っと……」
素材全てに魔力を通して一度分解、そして再構築する。
再構築の時になんのアクセサリーを作るのか選べるんだな……
とりあえず基本的な指輪で構わないか。
作るアクセサリーの種類まで決めたら後は最後に魔力を流し込んで完成。
1回の作成で消耗するMPは50か、多くもなければ少なくもないと言ったところか。
さて、出来たアクセサリーは……
―――――――――――――――――――――――
アルケミストリング ★7
錬金術によって作成された指輪
素材としてアイオライトとターコイズが使用されている
装備ボーナスDEX+16
AGI+16
INT+16
MND+16
DEX+16 AGI+16 INT+16 MND+16
耐久値:120/120
―――――――――――――――――――――――
★7か、初めてにしてはまあまあだろう。
見た目はシンプルに2つの宝石がはまった銀の指輪だ。
そしてステータス上昇の種類が多いな……
「完成したのかね。……ふむ、初めてにしてはかなりの腕前だな」
「ありがとうございます。それにしても、いろいろなステータスが上がりますね」
「錬金によるアクセサリー作成の利点は宝石によって上昇させるステータスの種類を選べると言うことだな。2種類で作れば2つ分の効果が、3種類で作れば3つ分の効果が期待できるぞ」
「ちなみに、3種類で作った場合って1つ1つのステータス上昇値が下がったりするんですか?」
「そんな事はない……だが、品質を保つのが難しいからな。品質が下がることによってステータス上昇値が下がることはありえるだろう」
うーん、品質さえ保てればいろいろなステータスを高めることが可能になるのか。
問題は宝石の供給だよな……市場で買いあされば問題ないか?
「ちなみに、同じ宝石を使った場合ってどうなるんですか?」
「効果が重複するからな。ステータスの上昇値が高くなる。さすがに倍にまではならないがね」
同じ宝石で特化型を作るか、ばらけさせて汎用型を作るかと言ったところか……悩ましいところだな。
「さて、講習はこれで終了だが何か質問はあるかね?」
「土台となる金属は何でもいいんですか?」
「ふむ、基本的には錬金術素材だからな。魔力と親和性の高い金属の方が好ましい。これ以上は自力で調べるといいだろう」
「それじゃあ、宝石によるステータス上昇の種類は?」
「それも自分で調べた方がいいな。錬金術士は叡智の探求者であらねばならぬ」
つまり、そこまではサービスしてくれないという訳か。
「ああ、そうだ。この講習を受講した錬金術士にはインゴットを錬金するためのレシピの販売許可も出ることになっている。インゴットを入手する当てがないならば買っていくといいだろう」
「わかりました。それではありがとうございました」
「うむ。それでは頑張るのだぞ」
講習会場から受付に戻り、サイネさんから各種インゴットのレシピを購入。
下位金属は値段的にそこまで高くなかったし、さすがにダマスカス以上のレシピについてはそもそも作る機会がなさそうなので購入を見合わせた。
上位金属がほしければドワンに精錬を頼もう。
そしてワグアーツ師匠の家によって修行用の素材を受け取ってから、クランホームに帰宅。
談話室に戻ってくるとちょうど柚月がいた。
「あら、お帰りなさいトワ。それで、アクセサリー作りの詳細はわかったの?」
「ああ、わかったよ。ただし面倒そうだ」
俺は試作品として作ったアクセサリーを柚月に見せる事にした。
「……ずいぶんといろいろなステータスが上昇するのね。これってステータスの種類はどう決めたの?」
「使った宝石の種類によって固定だそうだ。逆を言えば宝石の種類さえ揃えれば好きなステータスを上昇させることが出来るみたいだな」
「ふうん。となると、どの宝石でどのステータスがあがるのかを調べなきゃいけないわね?」
「さすがにそれは面倒だ。それじゃなくても、クラン内に細工士がいなくて宝石が作れないのに、いちいち調べてまわるために宝石を買ってもいられないだろ?」
「つまり?」
「困ったときの情報屋、『インデックス』で情報がないか聞いてみるよ」
「それが良さそうね。それじゃあ、収穫があったら教えて頂戴。この分で行けば、今のアクセサリーよりも強いアクセサリーが手に入りそうだからね」
「わかった。それじゃあな」
……さて、先に教授に連絡を取って情報がないか確認してみるか。
メールで『アクセサリー錬成について情報がないか』を聞いてみてと……
よし送信、後は返事を待つことに……って、もう返信が来たな。
何々、『現時点で判明している宝石のステータスリストならあるのである』か。
それ、ほしいな。
教授にフレチャで連絡してみよう。
「もしもし、教授?」
『おや、反応が早かったであるな。アクセサリー錬成まで手を伸ばすとは思っていなかったのであるよ』
「昨日、柚月が情報を見つけてきたようでな……」
『ああ、昨日の露店騒ぎであるか。掲示板を眺めていたが、なかなか大騒ぎになっていたのであるよ』
「そっか。それはともかく、今判明しているだけでもいいから宝石の効果リストがほしいんだけど」
『構わないのである。商談をしたいので我々のクランホームまで来てほしいのである』
「わかった。それじゃあすぐに行くよ」
『待っているのである。それでは、さらばである』
さて、それじゃ『インデックス』に行くとしますか。
「お早い来訪ですね、トワさん」
「やあ、どうも」
『インデックス』についたらインデックスのクランメンバーに出迎えられてしまった。
おそらく教授からの指示だろう。
「マスターが待っていますのでこちらへどうぞ」
「ああ、ありがとう」
彼に案内されてたどり着いたのは一際豪華な装飾が施された扉。
おそらく教授の執務室、と言ったところだろう。
「教授、トワさんが到着しました」
「うむ、入ってほしいのである」
「という訳なのでどうぞ」
「ああ、失礼するよ」
『インデックス』を訪れた事は何回かあるけど大抵はロビーで話を済ませてるからな。
さもなくば打ち合わせルームか。
教授の執務室に入るのは何気に初めてだったりする。
「ようこそである。トワ君」
「お邪魔するよ、教授。しかし、思ったよりも豪華な執務室だな?」
「大手ギルドとしての箔付けのためであるよ。個人的にはもっと研究室のような雰囲気の方が好みであったのであるがな……」
「そうか……それで、宝石のリストというのは?」
「少なくとも、今出回っている宝石については調べてあるのであるよ。それで、今調べている分だけでいいのであれば5万E、今後の追加分も含めて調べてほしいのであれば40万Eであるがいかがであるかな?」
「ずいぶんと強気な値段設定だな?」
「宝石代もバカにならなかったのであるからな。そもそもアクセサリー錬成自体が5月末のアップデートで追加されたコンテンツで、あまり広くは知られていないのである。それを調べたのであるから相応の対価はもらわねばならないのであるよ」
「そっか。まあケチるような場面でもないからな。40万Eの方でよろしく」
「そういうと思っていたのである。それではこれが今判明している宝石と対応ステータスの一覧である」
渡されたメモ用紙には20種類以上の宝石についての情報とアクセサリー錬成をした場合のメモが書き込まれていた。
……現時点で既にこんなに沢山の種類の宝石が実装されているのか……
「……宝石の一覧に『パール』とか『コーラル』ってあるけど海のフィールドなんて確認されてたっけ?」
「ダンジョンの宝箱に時々入っているのであるよ。逆に言えばそれしか入手経路がないゆえ、他の宝石よりも少し高めであるな」
「とりあえず、一覧はわかったよ。メモに書いてあるけど、属性をあわせることで複合属性強化も手に入るって本当?」
「嘘は教えないのであるよ。ただし、メモにも書いてあるとおり、★6以上の完成品である事が条件であるがな」
「……これはすぐには実戦向けの装備は出来そうにないな」
「我々の錬金術士も試行錯誤を繰り返している状態である。効果の種類が多すぎて困っているのである」
「だろうな……さて、それじゃあ取引も終わったしこれで失礼するよ」
「わかったのである。今週の土曜日もよろしく頼むのであるよ。それから、そのときには新情報も公開できると思うのである」
「新情報ね……攻略に役立つ物?」
「残念ながら、攻略には役立たないのであるな。ともかく土曜日を待つのである」
「こっちもやることはたまってるからな。色々片付けていかないとやることがあふれそうだよ」
「そちらも大変であるな。それではさらばである」
「ああ、またな、教授」
教授の執務室を出た後は、元来た道を戻り『インデックス』のホームポータルへ。
さて、戻ったら何から始めようかなぁ……
**********
~あとがきのあとがき~
トワが受け取った現時点で判明している宝石のリストは全部で22種類あります。
ここに上げてもいいんだけど長くなるので割愛します()
なお、宝石リストを作るのにも1時間ぐらいかかった模様。
コーラルは珊瑚の事ですよ。
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