148.装備更新の相談
修理を終えた装備を配り終えた後、早速装備の更新についての話を始めることになった。
「それじゃまず、装備の更新をしたいパーティってどれくらいいるの?」
「うむ、まず『インデックス』のパーティは更新をお願いしたいのである」
「えーと俺達のパーティも更新をお願いできるかな?」
「わたし達もお願いしたいな」
「『インデックス』にリクとハルのパーティか。『白夜』は大丈夫なのかのう?」
「僕達は平気だよ。まあ、時間があったらやってもらいたいけど、そっちを優先してもらって構わないかな」
「そうですね、『
「そうなると、あとは納期と予算ね。特に納期はさすがに数が多いからね。2~3週間は見てほしいわ」
「わたし達はそれでも構わないです」
「俺達も大丈夫だぜ」
「『インデックス』もである。まあ、武器は急いでもらえると嬉しいのであるが……」
「そこは今受けてる依頼との兼ね合いもあるし、イリスの受け持ち分野の装備の人もいるからね。詳しい話は……また明日にでも集まって話を詰めるのはどう?」
「そうであるな。今日のところはさすがに疲れているのである。そろそろ解散した方がよいであろう」
「それじゃ、今日は解散かな?」
おっと、解散する前にハル達は残ってもらわないとな。
「解散するのは良いがハル達のパーティは残ってもらえるか。少し相談があるんだが?」
「うん? わたしは構わないけど、皆は?」
「私は大丈夫です」
「ボクも大丈夫かな」
「私もです」
「私も平気ね」
「私も大丈夫」
「だって。それで相談って何?」
「装備の更新の話だ。使いこなせれば少なくとも遠距離攻撃手段が足りなくなることはなくなるはずだからな」
「え、何か方法があるの!? 教えて教えて!」
「その話、俺達も興味があるな。ついでに聞いていっていいか?」
「ああ、構わないぞ。たいした話ではないからな。本人以外にとっては」
本人に取っては結構大きな問題だろうけど。
「話はついたようだね。それじゃあ僕達は失礼するよ」
「今日はお疲れ様でした。また、今度挑戦しましょう」
「私も今日はこれで失礼するのである。装備の更新については、打ち合わせ時間が決まったら連絡がほしいのである」
「了解よ。それじゃあ、またね」
「うむ。さらばである」
『白夜』の2人と教授はホームポータルから帰っていった。
「それで、お兄ちゃん。遠距離攻撃手段を増やす方法って何?」
「その前に、セツさんは短剣使いのスカウト系統職で間違いなかったよな?」
「はい。それであっています。あと、名前は呼び捨てで構いませんよ。私の方が年下ですし」
「そうか、わかった。それで、そのスキル構成なら話は簡単だ。セツが遠距離武器を使えるようにすればいい」
「遠距離武器を使えるようにって……お兄ちゃん、簡単に言うけど遠距離武器はそれなりに難しいんだよ?」
「そこについても考えてる。大事なのは先手を取ることで、できれば相手の行動を阻害したいって事だろう?」
「うん、まあ、そうなるけど……」
「なら話は早いな。『ライフル』を使えるようになってしまおう」
「ライフルって……お兄ちゃん、ライフルってそんなに扱いやすい武器じゃないって話だけど……」
「それは前に私も調べたのでわかります。何でもDEXが相当高くないと狙いがつけにくいし、威力が高くなるとSTRも必要なんですよね? そんな武器を扱いこなせるかどうか……」
「……いや、そんなに悪い提案でもないと思うぜ?」
「リクさん?」
「短剣使いでスカウト系って事はDEXボーナスはかなり乗っているはずだ。それに【器用さ上昇】系のスキルも高レベルで持っているんだろう? ならライフルも扱えるはずだ」
「そうなんですか?」
「ライフルを扱う上で目安になるのは、【ライフル】スキル補正なしでDEX130前後【ライフル】スキル補正ありでDEX100前後らしいからな。もちろん強力なライフルを扱うにはもっと高いDEXが必要になってくるが……」
「さすがに、DEX値がそこまで高いとは思えないんですが……」
「【器用さ上昇】はスキル進化済みだろう? それに【短剣】系統も超級スキルを覚えてるだろうし、そこまで上がっていれば特に問題はないはずだ。ライフルにもDEXとSTRのボーナスを乗せるつもりだからな」
「お兄ちゃん、さらっと★10以上の装備を用意するって言ってるよね……」
「俺達が用意するんだから当たり前だろう? それで、早速で悪いんだが試してもらいたいんだが大丈夫か?」
「ええと……【銃】スキルがないのですが大丈夫でしょうか?」
「うーん、【銃】スキルぐらいはほしいな。確か王都のガンナーギルドには【銃】スキルのスキルブック売ってたはずだしちょっと買ってきますか」
「あ、あの。場所を教えていただければ、自分で買いに行きますよ?」
「うん? そうか。それなら場所だがマップの……ここだな」
「……ずいぶん半端な場所にありますね……」
「……まあ、ガンナーギルドの宿命みたいなものだ。ガンナーギルド前にはサブポータルも用意されてるから戻ってくるときはそれを使えば大丈夫だ」
「わかりました。それではすぐに行ってきます」
セツはホームポータルから転移していった。
最寄りの王都のサブポータルへと転移したはずだから、20~30分もあれば戻ってくるだろう。
「そう言えばお兄ちゃんのクランって、サブポータル移動も解禁してるんだったよね」
「ああ。あると便利だからな」
「あれって結構なお値段だったと思うけど、大丈夫なの?」
「お金の心配ならいらないわ。クラン口座に入っている資金量がかなりな額に登っているからね。1Mくらいの出費でサブポータル移動ができるなら安いものよ」
「うーん、さすがにお金持ちは発想が違うなぁ……」
「まったくだぜ……俺達だと1M稼ぐのに結構時間かかるのにな……」
「まあ、そこは生産職と戦闘職の違いでしょ? なんだかんだ言っても私達だって仕入れが発生するわけだから、そこまで極端に儲けてる訳でもないのよ。とりあえず彼女が戻ってくるまでの間に他の皆の装備希望を教えてくれるかしら?」
柚月が中心となり、ハルやリクのパーティの装備内容が決まっていく。
ただ、そこは作るのが『
半端な素材で作る予定はない。
「ふむ、重装備系の装備はやはりダマスカスを使った方がいいかのう」
「あと、通常の武器もだな。重くなるって欠点はあるけど、攻撃力的にもかなり増すだろう?」
「大剣や大斧のような重量武器ならばな。通常のロングソードなどを作る場合はダマスカスよりもメテオライトの方が応用が効くぞい」
「ふーん、その辺は当事者と話し合ってからだな。それで、金属防具は?」
「こちらも重鎧はダマスカス……と言いたいところだがそうなると【重装行動】が必須レベルになってくるからのう。ダマスカスと別の金属での合金がベターな選択肢だろうよ」
「そうなるか……柚月の方は話がまとまったか?」
「そうねぇ、こっちも大分話はまとまったわ。ただ、素材がねぇ……」
「採取するのが難しい素材が必要とか?」
「布系装備は
「確かにのう。ダマスカスにせよアダマンタイトにせよメテオライトにせよかなり重い金属じゃな」
「そうなってくると革鎧の方がいいと思うのだけれど……」
「でもわたし【金属鎧】のスキル持ってますし……」
「そこが悩みどころなのよね……ちなみにミスリル金って重たいのかしら?」
「ダマスカスなどに比べれば軽いな……ふむ、ハルの嬢ちゃんにはミスリル金とメテオライトの合金製鎧を作って見るか。それならば物理防御と魔法防御をそれなりの高さで維持した装備が作れるだろう」
「あと、革装備は欲を言えば氷鬼や雷獣素材がほしいところだけど……」
「あ、雷獣素材なら結構あります。雷獣周回していましたので」
「そう? それならそれを使わせてもらう事にして……リク君達は何かその辺の素材って持ってないかしら?」
「
「そう? それならそっちも使わせてもらうわね。あとはドワンの鉱石類だけれど……」
「鉱石の類いはちょっと……」
「俺達も持ってないですね……」
「まあ、そっちは期待してなかったから大丈夫じゃよ。あとは値段の話だが……」
「うう、そこですよね……」
「まあ、最初にいくらぐらいなら出せるか聞いてみましょうか?」
さすがに値段の話はきついよな。
普通に『
「……俺達が出せそうなのは1人当たり3Mぐらいですね」
「わたし達も同じくらいかな……さすがにそれじゃ足りませんよね……」
「まあ足りないわね。ただ、今回は貸しって事で請け負っても構わないわよ」
「え、本当ですか!?」
「マジかよ……!!」
「あくまで今回だけよ。条件は今日と同じくレイド攻略に手を貸してくれること、それでどう?」
「それならもちろん!」
「……俺達も大丈夫です!」
どうやら話は決まったようだな。
ただ気になることが1つ。
「……柚月もレイドアタックに参加するんだよな?」
「ええ、中途半端な負け方じゃ気にくわないからね。今後も限界が見えるまでは参加させてもらうわ」
「そうか、それは良いことだ。それで、足りない素材をかき集めるのはどうするんだ?」
「そっちについても考えがあるから心配しないで。まあ、ちょっと強引な手段だけど」
「うん? まあ、考えがあるなら任せるけど」
「そうして頂戴……ああ、セツちゃんが戻ってきたわよ」
後ろを振り向くとセツが戻ってきていた。
「ただいま戻りました。【銃】のスキルブックってあんなに安いんですね……」
「いくらだったの?」
「3万でした。他の【剣】とかだと10万とかするのに……」
「そこは不人気スキルって事なんじゃないか? 住人売りのスキルブックの値段も時々値上がりしたり値下がりしてるらしいし」
「今じゃ生産職がサブウェポンとして結構使ってるらしいんだけどね、ライフル」
「スキルブックは王都に来るまで買えないからな。敵を最悪でも100回攻撃すれば無条件で覚えられるんだ。そっちを選ぶプレイヤーの方が多いだろうよ」
「そんなものかな?」
「そんなものだよ……さて、準備も整ったようだし、訓練所に向かうぞ」
残っていたメンバー全員が訓練所へと着いてくる。
そこで俺は、インベントリの中に入れっぱなしになっていた武闘大会前に作った練習作を取り出して木弾と一緒にセツに渡す。
「とりあえずそれを使って的を撃ち抜いてみてくれ。システム補正が使えるから狙いもつけやすいはずだ」
「はい、わかりました……って本当に狙いやすいですね」
DEXが高いと本当にエイム補正が優秀なのだ。
どこを狙うかをしっかり意識しさえすれば、後は自然と体が動く。
最後に細かい微調整を自力でやらないといけないが……そこは慣れてもらうしかないな。
いきなり一番離れたところにある的を狙い始めたセツは1発2発と黙々と試し撃ちを続ける。
撃った後に姿勢が崩れる様子もないし、射線がぶれている様子もない。
これなら十分にサブウェポンとして使いこなせるだろう。
最後にチャージショットを撃ちこんで試射は終わったようだ。
「……思っていたよりもはるかに使いやすいですね、ライフルって……」
「DEXの高い斥候職ならの話だけどな。かなりのDEXを要求されるからそっちが足りてないと扱いにくい武器だけど」
「うん、これなら使いこなせそうです。ありがとうございます」
「……あー、それは練習用で作った余り物だからプレゼントするけど、本番用はもっと上位の金属で作るから攻撃力なんかも段違いに上がるぞ?」
「……具体的にはどれくらいまで上げるつもりなの、お兄ちゃん?」
「さすがに400までは行かないと思うが……最低でも350ぐらいまでは上げたいなと思ってる」
「……それ、扱いきれるでしょうか?」
「……まあ派生技能まで上げておいてくれれば何とかなるだろう。品質も★11にするつもりだし」
「……わかりました。どれくらいのものが出てくるのか恐くはありますが、よろしくお願いします」
「ちなみに、リク達のパーティもほしいか?」
「俺達は遠慮しておくよ。使えそうなのはシノンだけだし、そのシノンだってアーチャーだから遠距離攻撃に不満があるわけじゃないからな」
「了解。まあ、気が向いたら声をかけてくれ」
「ああ、わかった」
その後、セツも柚月に新調する装備の希望を伝えた後で今日は解散となった。
それぞれ帰っていくリクやハルのパーティを見送り、店の在庫を確認する。
在庫のポーションが少しばかり減っているが……明日の午前中にでも補充すればいいか。
今日はもうこれでログアウトして寝るとしよう。
**********
~あとがきのあとがき~
初登場の時はガンナーですら扱いにくかったライフルですがセツにとっては余裕で扱える装備です。
さすがに掲示板でくすぶっていたDEX100届くかどうかのガンナーと、最前線付近にいるパーティの斥候職(DEX300は余裕で越えてる)では話になりません。
あと、装備でもDEX上昇してるし……
あと、銃とか弓を扱う場合は本人のエイム力が試されそうですが、このゲームに限ってはそこまで必要ありません。
DEX次第にはなりますが、狙いをしっかりさだめさえすればオートエイムでおおよその照準はあわせられます。
偏差撃ちとかになると話は別ですけどね。
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