147.反省会 2

「それでは合流後の話であるが……これは特に問題なかったのであるな」

「そうだね。初めてだったけど合流後は繭を1つも破壊されなかったわけだし、この調子でやっていけば問題ないと思うよ」

「そうだな。それに次からは移動速度増加ポーションも用意するし移動時間が短縮できるわけだから、今回よりも楽になるだろう」

「それもそうであるな。あとは合流後の攻撃順に規則性があるかどうかであるが……」

「多分ないんじゃないか? 今回のだって規則性がありそうな順序じゃなかったし」

「そうであるな……あとは……」

「どうした、教授?」

「妖精の繭を移動できるかどうか試すのを忘れていたのである」

「……そう言えば、その発想はなかったな」

「事前に繭をもっと中央寄りに集めておけば楽に勝てそうであるな。次に行ったときに試すのである」

「ちなみにパーティ毎の時って移動できるかどうか試したのか?」

「そっちは最初に試したのであるが、持ち上げようとしても押しても引いても動かなかったのである」


 それで集合後に移動できるか試すのを忘れたって訳か。


「それじゃあ、妖精の繭防衛についてはこんなところで大丈夫かな。あとはラストのボス、妖精郷の封印鬼だけど……」

「おそらく今回戦ったラスボスがレベル52スタートだったのは、そこまでに繭を12個破壊されていたからであろうな」

「そうだろうな。途中で破壊されたときもレベルが上がったわけだし、間違いないだろう」

「そうだね。そうなると、そこまでにどれだけ破壊されずに守り抜くかが鍵になるわけだけど……」

「問題はパーティ毎の防衛の時であるからな。その話はまた後でするのであるよ」

「そうだね。じゃあ具体的な封印鬼相手の戦い型だけど、これも基本に忠実な戦い型しかないと思うんだ」

「そうですね。我々『白夜』が戦ってきた中でもかなりオーソドックスなタイプのボスでした。金棒が2本になったぐらいで攻撃モーションやパターンはあの黒い衝撃波攻撃くらいしか増えていませんでしたし」

「問題はHPがやたらと高いって事か……レベル40の最初の戦いだって2回戦ったどっちも20分近くかかってただろう?」

「計っていましたが、1回目は22分台、2回目は21分台でしたね。攻撃力が上がれば20分を切ることはできるでしょうが、15分まで縮めるのは難しいでしょう」

「うへぇ……ってことは、レベル40のまま戦えたとしてもラスボス戦は1時間ぐらいかかるって事か……」

「実際にはもっとかかると思うぞ。ラストの封印鬼戦は小鬼の襲撃から繭を守りながらになるから、どうしても1~2パーティはそっちに手を取られる。攻撃パーティ数が少なくなればその分時間はかかるわけだしな」

「あー、そうだよね。最後は防衛しながらの戦闘だもんね……」

「そっちも移動速度増加ポーションで何とかできるといいんだけど……そうなると心配なのはポーション中毒か……実際のところの中毒具合はどうなのかな、トワ君?」

「済みませんが、特殊ポーションの中毒値度合いは試した事がないのでわからないですね。特殊ポーションを使ったとしても、普段使うのは、本気でアイテムを作るときにDEXポーションを使うぐらいですし、こっちはポーション瓶を使わなくても効果時間が6時間と長いので中毒の心配はありませんし……」

「ふむ、という事は検証が必要であるな。済まないが移動速度増加ポーションを急ぎで10個ほど用意してもらいたいのである。そうすれば『インデックスわれわれ』で検証しておくのである」

「わかった。多分10個ぐらいならクラン倉庫に入っているからあとで渡すよ」

「作らなくてもあるのであるか……」

「まさか他人に配ると思ってなかったから必要最低限の量しか持ち歩いてなかったんだよ。いくらインベントリに制限がないと言っても必要ないポーションを普段から持ち歩くのも手間だし」

「うん? その言い方だと他の特殊ポーションも数量はあるのかい?」

「ええ、まあ。使う機会の多そうなDEXポーションと移動速度増加ポーションしか作り置きはありませんけど。材料費と手間賃をもらえるなら納品もできますよ?」

「……ちなみに上昇量ってどれくらいなんだい?」

「移動速度増加ポーションは★9で30%上昇15分間、DEXポーションは★9で60増加の6時間だったはずですね」

「……それは、どんな種類があるのでしょうか?」

「んー、まず基本ステータス6種増加、移動速度増加、詠唱速度増加、リキャストタイム減少速度増加、あとは……物理と魔法のレジストとアンチ、つまりバリアポーションぐらい?」

「……つまりは全てを把握している訳ではないのであるな……」

「仕方が無いだろう。レシピは錬金術ギルドか調合ギルドで買うしかないわけで、今のギルドランクじゃ買えないレシピがあるかも知れないんだからな」

「ちなみに錬金術ギルドと調合ギルドのギルドランクはいくつなんだい?」

「12と14です」

「……普通に全プレイヤーの中でもトップクラスだと思うのであるよ……」

「そうは言われてもな……ああ、あとまだ買っていないレシピもあるから全部が全部作れるわけじゃないぞ? 物理のレジストポーションとアンチポーションは聞いたことのない素材を要求されてるから作り方からしてわからない訳だし」

「……ちなみにアンチマジックポーションとレジストマジックポーションを売ってもらうことは可能ですか?」

「少量なら可能ですよ。大量となると素材の関係で難しいですけど……」

「可能なら使う素材を教えてもらいたいんだけどな……」


 んー、どうしたものかな。

 白狼さんになら教えてもいい気がするけど……


「それならあとでメールで送りますよ。全部を教えるつもりはありませんけど」

「さすがに全部を教えてくれなんて言わないさ。それに全部を教えてもらってもうちの調合士や錬金術士では再現できないだろうからね」

「錬金術ギルドや調合ギルドでレシピを売ってますからね。ミスリル金と同じでレシピを使わないと再現できない種類のアイテムだと思いますよ?」

「だろうね。でも、僕達も攻略にほしいから今度注文するかも知れないな」

「基本ポーションならいくらでも作りますけどね……アンチポーションやレジストポーションは勘弁してほしいって言うのが本音ですね……」

「まあ、その辺は素材を聞いてからだね。もし作っても良い気になったら頼むよ」

「わかりました。色々便宜を図ってもらってますしそこは考えておきます」

「話はまとまったであるか? そろそろ本題に戻るのである」


 いけない、完全に脱線してた。


「それで、基本ステータスのポーションならどれでも用意できるのであるか?」

「ああ。ただ、DEX以外のレシピはまだ買ってきてないからレシピの入手から始めないといけないけどな」

「……ちなみに効果は重複出来るのであるか?」

「あまり検証していないけど、多分無理。DEXポーションの効果時間中に移動速度増加ポーション飲んだことはあるけど、DEXポーションの効果が消えたから。レジストマジックポーションとアンチマジックポーションの組み合わせは重ねがけできたけど、他の組み合わせだと無理だと思うよ」

「他の組み合わせは試していないのであるか?」

「そもそもバリアポーション以外だと、DEXポーションと移動速度増加ポーションのレシピしか買ってないから他は試していない。あと、バリアポーション系とそれ以外の特殊ポーションの組み合わせも試していないかな。バリアポーションのコストが高すぎるからあまり試すことが出来ないし」

「そうであるか……重複可能であればかなり今回の攻略の役に立ったのであるが……」

「うん? どういうこと?」

「トワ君はステータス60増加というのを甘く見すぎである。それだけ上昇すれば、普通のプレイヤーならば50%から30%は増加していることになるのである。育っていないステータスであれば下手をすれば倍になってもおかしくないであるな。例えばトワ君のSTRとか」


 ああ、その考えはなかったな。


「ふむ、話はわかったけど、それが今回の攻略とどういう関係が?」

「つまりメインの攻撃参照ステータスが60も上がっていれば、攻撃力にそれなりの差が生じると言うことである」

「ああ、なるほど。封印鬼退治の時に移動速度増加ポーションを飲まないメンバーが飲めば、時間短縮が狙えるという訳か」

「そう言うことである。ちなみに、料理バフとの共存は可能であるか?」

「そっちは出来る事を確認済み。料理とDEXポーションの二段バフでないと★11は安定しないから」

「……★11をその気になれば量産できるという発言の意味はこういうことだったんだね……」

「……まったく、ろくでもないもの作ってやがるな……」

「んー、感覚的にはエナジードリンク飲むのと変わらないんだけどな。味もエナジードリンクみたいなものだし」

「ゲームの中でまでエナドリ決めてるんじゃないって言ってるんだよ……」

「失礼な。普段はエナジードリンクなんて飲まないぞ?」


 あれ、あまり得意じゃないし。


「とにかく、トワ君はSTRポーションとINTポーションを用意してもらいたいのである。それから、特殊ポーションの重ねがけが出来ないかもこちらで試しておくのである」

「了解。そう言うことなら、今度ギルドに行って買ってくるよ」

「あとはそれでどれだけ攻撃力が上がるかだね……」

「そうであるな。次に料理バフの話になるのであるが、こちらはどうするのであるか?」

「しばらくは調査目的になるから薬膳料理のままでいいんじゃないかな。ちなみにユキさん、STRやINTが上がる料理ってどれくらい作れるかな?」

「えっと、普段から持ち歩いているのでそちらは大丈夫です。言ってもらえればすぐに用意できます」

「了解。クリア目的の段階になった時点で料理も切り替えると思うから、その時は準備をよろしくね」

「はい、わかりました」

「料理の話もこれで大丈夫であるな。あとは、装備の更新であるが……」

「そっちは俺の専門外だからなあ。柚月やドワン、イリスと相談だな」

「……いや、トワ君にも作ってもらいたい装備はあるのであるよ」


 うん? 銃以外で作れる装備なんてないんだけどな?


「魔導書、グリモアールが錬金術で作成する装備なのである。済まないのであるが、明日にでも相談に乗ってほしいのである」

「ああ、そう言うことな。わかった、あとで話そう」

「……とりあえず今日話し合うべき事は終わりかな?」

「あともう一つ大事なことが残っているのである。このレイドの情報を公開するかどうかである」

「そこは非公開でいいんじゃないかな。そもそも到達方法が限られているわけだし、公開しても面倒になるだけだと思うよ?」

「それに初クリア報酬がほしいというのも本音ですね。レイドの初クリア報酬は非常に豪華ですから」

「それじゃあ、その方針で行きましょう。ハルとリクも構わないな」

「オッケーだよ! 他の皆も話さないようにね」

「俺達もそうする。情報は漏らさないから心配するな」

「それではこのレイド情報は秘密という事にして……他に何か全体で話すことはあったかな?」

「そうであるな。あとは個々の話となるであろう」


 どうやらこの反省会もこれで解散のようだな。

 あとはドワンや柚月達の修理が終わっているかどうかだけど……


「お待たせー。修理が終わったわよ」

「待たせたかのう?」

「いや、むしろ今終わったところである。それで相談があるのであるが……」

「いいわよ。どうせ装備の更新の事でしょう?」

「柚月と話しておったからのう。相談に乗ろうではないか。まず修理が終わった装備を配ってからじゃがのう」


 どうやらこっちの話も手早く済みそうだ。



**********



~あとがきのあとがき~



全体での打ち合わせは終わったけど個別打ち合わせはまだ続くんじゃ……

さすがに長くなりすぎるのもアレなので、次の1話で終了させる予定。


あと、特殊ポーションのレシピですが、調合ギルドと錬金術ギルドのどちらでも買えるようになっています。

どちらで買ったとしても完成品を作るための調合用レシピの他に、中間生産品を作るための錬金術レシピがついてきますので……


なお、特殊ポーションのレシピは第3章80話の終わりに錬金術ギルドに行ったときに購入しています。

(しれっと81話で作成していますがそう言うことです)

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