144.レイドアタック 2 ~ボス戦 2 ~
キリがいいところで区切ってしまったので今回は短め。
ご了承を。
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「ちょ、こんな時に敵襲なんて!」
「しかも、よりによって北側からかよ!」
レイドメンバーからも焦りの声が発せられる。
ほぼ全員が広場の南側に引き寄せた封印鬼の相手をしている状態で、北側からの援軍というのは非常にまずい。
「教授! 増援の数と種類、それからレベルは!」
「待つのである……剣と斧がそれぞれ3、弓と杖が2、合計10体である! レベルは全て40である!」
「戦力を分けるしかないか……第1から第3パーティは封印鬼から離脱し、敵増援の対処に当たってほしい!」
「了解です。行きましょう、皆さん!」
「おう!」
「それじゃ、こっちはよろしく!」
「ああ、任せておけ!」
第3パーティの面々が号令に従い、すぐさま離脱して北側へと走り抜けていく。
少し遅れて第1と第2パーティも封印鬼から離脱して北側からの増援に対応し始める。
俺も黒牙にウェポンチェンジして、縮地なども使いすぐさま北側へと移動した。
俺が到着した段階で、既に北側では交戦が始まっていた。
最初に抜けた第3パーティが前線を食い止めている一方で、中央付近に残っていた後方支援部隊が先に杖小鬼を片付けてくれていたようだ。
「教授、今の状況は?」
「見ての通り、杖は始末したのである。だが弓からの攻撃が始まってしまっているのであるよ」
「いきなりだったからな、仕方が無いか。とりあえず弓を落とすぞ!」
俺は弓小鬼に狙いを定めてチャージショットを撃ちこむ。
さすがにレベルが低いだけあり、既に半分近くのダメージを受けていた弓小鬼はその一撃で砕け散った。
残り1体の弓小鬼の方も遠距離攻撃部隊の集中砲火を浴びてすぐに倒されることとなった。
あとは、前衛部隊の方だが……こちらもあと少しで全滅だな。
援護する必要はない……というか、援護するまでもなく片付いたようだった。
「とりあえず妖精の繭を破壊されることは免れたのであるが、いきなりの増援は厳しいのであるよ……」
「いきなりか……何かトリガーがあると思うんだけど……」
「それなら予想できますよ」
俺と教授の話し合いに入ってきたのは十夜さん。
何か気付いたことがあるようだ。
「今回の襲撃は封印鬼との戦闘開始から60秒後に開始されていますね」
「60秒後であるか……よく数えていたのであるな」
「レイドボスなどでは特定周期で使ってくる範囲攻撃などはざらにありますからね。戦闘開始と同時に計測タイマーをスタートさせていたんですよ」
「なるほど……となると、今後も60秒ごとに襲撃がある可能性があると?」
「60秒周期なのかそれとも別の時間なのかはわかりませんが、断続的に襲撃はあるでしょうね」
「そうなるとあらかじめ戦力を分散させておく事も必要であるな……」
「まずはレイドチャットで白狼に連絡しましょう。その上でどの程度の戦力を予備として留めておくか考えましょう」
「白狼君は戦闘中であるが……レイドコマンダーともなればその程度の余裕はあるのであろうな。まずは白狼君に連絡である」
ひとまず3パーティ全部を中心部付近に残してレイドチャットに切り替える。
『白狼君、今大丈夫であるか?』
『ええ、大丈夫ですよ。その様子ですと襲撃は無事に乗り越えられたようですね』
『妖精の繭の1つがHP半分ほど削られてしまったが何とか被害は防げたのである』
『それでですね、今後も断続的な襲撃が予想されるため、いくつかのパーティは封印鬼との戦闘に加わらずに中央部で待機した方がいいと思いまして相談しようと連絡したわけです』
『敵の増援はどんな感じだったんだい?』
『全部で10体。前衛型が3体ずつ、後衛型が2体ずつ合計10体であるな』
『なるほど……それなら第2と第3パーティで防ぐことは可能かな?』
『ふむ、次の襲撃があれば試してみるのである』
『それじゃあ次の襲撃時にそれを試してみてほしい。それで第1パーティは次の増援までは中央付近で待機。第2と第3の戦闘で手出ししなくても大丈夫そうなら封印鬼への攻撃に戻ってほしいかな』
「了解、それじゃ俺達は次の襲撃まで様子を見させてもらうよ」
『よろしく頼むよ。あと、さっきの角から発生した黒い衝撃波だけど雷属性攻撃を加えなくても発生したよ。タイマーを見る限り45秒間隔で攻撃してくるみたいだ』
「そっちも了解しました。それじゃ、次に戻った時は遠慮なく雷属性攻撃を叩きこませてもらいますね」
『お願いするよ。それじゃあ、そちらも頑張って』
こうしてレイドチャットでの報告は終了した。
ひとまず俺達は様子見だけど……そろそろ2分、つまり次の襲撃時間だよな。
「次の襲撃が来たようですよ! 方角は東側!」
「わかったのである。それではトワ君達はここで待機しているのであるよ」
「わかってるって。でも、抜かれそうになったら遠慮なく攻撃させてもらうからな」
「任せたのである。では行くのであるよ!」
第2と第3パーティが東側に出現した小鬼達に攻撃を仕掛ける。
……さすがは『白夜』の第2パーティだけあって処理の仕方がスムーズだな。
『インデックス』のメンバーもサポート慣れしているというのか、こちらはこちらで問題なく対応している。
……これなら俺達の出番はなさそうだな。
程なくして2回目の増援部隊も殲滅された。
これなら俺達第1パーティは戻っていても大丈夫だろう。
「ただいま戻ったのである」
「おかえり教授。俺達の出番はなさそうだな」
「そうですね。第1パーティには封印鬼への対処に戻ってもらって大丈夫ですよ」
「そう言うことらしい。皆、戻るぞ!」
「おう!」
「りょうかーい」
「わかったわ」
「うん!」
十夜さんの許可も出たので俺達は封印鬼の方まで戻ってくる。
封印鬼のダメージも結構蓄積されていて、もうちょっとで1本目の8割を切りそうだ。
「おかえり。あっちは大丈夫そうだね」
「ええ。さすがにレベル40の部隊でしたので問題ないかと」
「それなら、こちらの方を頼むよ。もうしばらく戦えばゲージ半分だからね」
「了解です。そう言えばあの衝撃波攻撃はどうするんですか?」
「2回目も受けたけどバステやデバフがないからね。ダメージ量もそこまで高くない魔法属性攻撃のようだから、前衛は回避しないで受けた上で回復役にエリアヒールで回復してもらう事にしてるよ」
「じゃあ後衛は受けない方向でいいんですね」
「そうだね。余り範囲も広くないからマギマグナムの有効射程ギリギリから撃ってもらえれば、相手の攻撃は当たらないはずだよ」
「了解です。そう言うことらしいから、全員攻撃開始だ!」
「っと、その前にもう少しで衝撃波攻撃の時間だ。それをやり過ごしてからの参加の方がいいね」
「了解じゃ。それではわしら前衛は少し様子を見させてもらうぞい」
「私達後衛は攻撃開始ね。さあガンガン行くわよ!」
「張り切ってるねー柚月。ボクも負けないぞー」
うん、他のメンバーの士気も高いようだ。
これならもうしばらくは耐えられるだろう。
さて、俺も攻撃を再開するか……
「マギチャージ・サンダーボルト。マギグレネード!」
「ラピッドシュート!」
「ラーヴァラッシュ!」
俺達の攻撃は寸分違わず封印鬼の頭部に命中した。
ん? ちょうどあの黒い衝撃波を放つ予備動作をしていたはずだけど攻撃がこないな……
「どうやら角にエネルギーを蓄えている動作をしているとき、頭部に大ダメージかノックバック攻撃かを与えるとキャンセル出来るようだね……」
「うん、まあ、狙ってやるのは難しそうですけど狙えたらやることにしますよ」
「頼んだよ。さあ、僕も戻って攻撃に参加するよ」
俺達も南側に戻って封印鬼との戦闘は再開され、激戦の様相を呈していくのであった。
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