137.レイドアタック ~緒戦~
さて、全員の自己紹介も終わったところで後はレイドチームを組むだけなのだが……
「俺が第1パーティですか?」
「こう言うものは主催者が第1パーティをするものだよ。それに第1パーティだからってレイドコマンダーをしなければいけないわけじゃないしね」
「レイドコマンダーなんて頼まれてもできませんよ……そちらは白狼さんに任せても?」
「まあ、そうなるだろうね。そちらは任せてもらっても構わないよ」
「それじゃあレイドコマンダーは任せます。それで最初はどう動きますか?」
「そればっかりは何とも言えないな……まず入ってみて様子見だろうね。敵の強さもわからないし」
「……それもそうですね。それにレベル45相当にまで弱体化される以上、どの程度の攻撃力がでるのか試してみないとわからないですし」
「それも一理あるね。まあ、まずは最初の接敵からだ。油断せずに行こう」
こうしてパーティ登録順で一悶着あったがそれ以外は問題なく進んだ。
第一パーティが『ライブラリ』、第二パーティが『インデックス』、第三パーティは『白夜』第二部隊、第四パーティがハルパーティ、第五パーティがリクパーティ、第六パーティが『白夜』第一部隊という事になった。
俺の【気配察知】や【魔力感知】それから【罠発見】に【罠解除】の各スキルレベルを告げたところ、普通にスカウトとして行動できそうだと言われたので、スカウト役も俺が担当することになる。
各パーティへの消耗品の配布が完了して、パーティ内での分配が済んだことを確認した俺はレイドエリアの門の前に立つ。
すると目の前にシステムメッセージが現れた。
〈レイドクエスト『妖精郷の封印鬼』に挑戦することができます。挑戦しますか? Yes/No 〉
全員に確認を取り問題ない事を確認すると俺は『Yes』を選択してレイドエリアの攻略を開始することにする。
〈レイドクエスト『妖精郷の封印鬼』を開始します。制限時間は4:00:00です〉
レイドクエストって制限時間があるのか……
これも初めて知ったな。
「レイド時間が4時間だって!?」
驚いたように声を張り上げたのは白狼さんのパーティメンバー。
レイドの経験は豊富だと聞いていたんだけど……
「白狼さん、レイドの時間で4時間ってそんなに短いんですか?」
「短いなんてものじゃないね。普通は途中で休憩や補給に戻れるように12時間とかそういう制限時間になってるんだ」
「つまり開始した後に外に戻ることができると?」
「普通ならね。ただここはそう言うわけではなさそうだ。途中休憩程度ならともかく補給に街まで戻るとかはできないだろう。本当に厄介そうなレイドエリアだ」
「どうやら予想以上に厄介そうですね……一度引き返します?」
「いや、このまま進もう。4時間という短すぎる時間も気になるし、こうしてる間にも制限時間は減って行っているわけだしね。今日の目的はあくまでも偵察。負けて当然なんだからこのまま行けるところまで行こう」
「了解、それじゃあレイドエリアに入るぞ」
それは開いたレイドエリアの扉に手を触れて、レイドエリアへの進入を行う。
レイドエリアへ進入するときは、レイドエリア前のフィールドにいるレイドチーム全員が一度に転移される仕組みになっているのでその辺は楽である。
こうして、俺達の初めてとなるレイドエリア攻略は幕を上げたのだった。
―――――――――――――――――――――――――――――――
転移された先は、森の広場のような場所でかなりの面積がある。
ただし、転移された場所は広場のど真ん中で、周囲にはザコモンスターがわんさかいる状態だ。
まだ戦闘状態にはなっていないが、こちらから手を出したり不用意に近づいたりすれば、一気にリンクして襲ってくるだろう。
「ちなみに白狼さん。こういう最初の部屋から大量のザコがいるパターンってありました?」
「いやー、僕も初めてだね。とりあえずパーティ単位で組んで円陣を組み、周囲のザコを掃討するところから始めようか」
「そうですね。いつ襲いかかってくるかわかったものじゃないし……全員パーティごとに集まって円陣を組み敵の攻撃に備えろ!」
俺も『ライブラリ』パーティの元へと戻り後衛について『黒牙』を用意する。
今日は【ウェポンチェンジ】に色々と登録してきてあるので使う機会も多くなるだろう。
と言うよりも、【ウェポンチェンジ】は早いところレベルを上げて登録可能数を増やしたいところなのだが……
なにせ装備変更回数の累積数でしかレベルアップしない仕様なのでなかなか上がってくれない。
街中で使用しても上がるらしいが……まあ、今日はそんな事を考えても仕方が無いのでバンバン使っていくつもりだ。
なお、今日はプロキオンを壁役として配置してある。
敵の編成は……『封印の小鬼』か。
『小鬼』と名はついているがファンタジーによくいる『ゴブリン』ではなく東洋の『鬼』を小型化したようなものだ。
レベルは41から43と低めだが、レイドエリアの敵だし果たしてどのような能力を持っているのやら……
持っている装備を見てみると、剣・斧・弓・魔法の4タイプがいるらしい。
とりあえず全員の準備完了を待って一当てだな。
「うん、全員の準備ができたみたいだ。トワ君、始めていいよ」
「それじゃあ、始めさせてもらいますか」
膝立ち姿勢から黒牙で狙いを定めて魔法タイプと思わしき小鬼の頭を撃ち抜く。
すると弱点クリティカルの発動とともに小鬼のHPバーが砕け散った。
「あれ?レイドエリアのザコってHPが多めだったんじゃ?」
「その銃とトワ君の攻撃力が高すぎただけかも知れないけどね。とりあえずほかの敵もこちらを認識したみたいだし散開して敵を迎え撃つぞ!」
それぞれのパーティが散開しつつ弓や魔法による遠隔射撃で牽制しつつ距離を縮めて行く。
俺達『ライブラリ』は俺の攻撃の射線を開けてもらいながら前衛が近づいていく。
俺達の方に向かってきた小鬼は全部で10体だったが、接敵までに4体を撃ち抜いて倒す事ができた。
内訳は俺が3体、イリスと柚月で1体だ。
イリスと柚月の方は、他の近接タイプの小鬼にもダメージを与えている。
近接戦闘が開始されてしまったため、これ以上ライフルで撃ち抜く余裕は無い。
武器をハンドガン――双華――にウェポンチェンジして俺も前線へと合流する。
そこではプロキオンが小鬼達をしっかり引きつけてターゲットをしっかりと引きつけていた。
合計6体の敵に囲まれているプロキオンだったが、柚月から受ける回復魔法の効果でHPにはかなり余裕があった。
……レイドエリアのザコってここまで弱いんだっけ?
そんな疑問が頭に浮かぶが、まずは目の前の敵の殲滅からだ。
俺達の攻撃を受けた小鬼達はなすすべもなく倒されていった。
「ねえ、トワ。レイドエリアの敵ってこんなに弱いものだったかしら? ザコでもかなり強いって聞いてたんだけど……」
「俺も同感だ。とりあえず敵の掃討を終えてから白狼さんに確認してみよう」
第一段階として最初にリンクしてきた一団は片付いたが、周囲にはまだ他にも敵の集団がちらほらと存在している。
おれは再びウェポンチェンジで黒牙を取り出すと他のパーティとかぶらない位置にいた集団に狙いを定めて撃ち抜く。
今度の集団は全部で6体、接敵までに可能な限り減らせると思うんだけど……
こうして、敵の集団ごとに分断しての戦闘は20分ほど続き、大きな広場全体の敵を掃討し終えた。
いやー、最初の一体を攻撃したときにフロア全体の敵がリンクしないかと少し焦ったが、そんなこととはなく無事に集団ごとに分断して敵を撃破できた。
「トワ君、そっちの消費はどうだい?」
白狼さんが消耗状態の確認に来たようだ。
「うちのパーティでは柚月がMPポーションを数個使用したぐらいですね。HPポーションの消耗はほぼなかったです」
「そうか。さすがだね。まあ、他のパーティも似たようなものなんだけど」
「……やっぱりレイドエリアにしては敵が弱いですか?」
「正直に言って弱いね。これなら、普通にダンジョンで出てくる敵と大して変わらないよ」
「やっぱりそうですか……」
「これがこのレイドエリアの仕様なのか、それとも最初だけなのかはわからないが油断はしないようにね」
「ええ、わかってますよ。ところでレベル45制限の方はどうだったんですか?」
「こう言ってはなんだけど、かなりステータスが下がってるね。スキルの威力も普段に比べて大分落ちている気がするよ」
「なるほど……そう言えば俺のライフルもワンパンではあったけど威力が落ちていたような……」
「どうやら装備にも影響があるみたいだからね。用心するに越したことはないよ」
「それで、この後はどうしますか?」
「10分ほど休憩してから奥へと進んでみたいと思う。残り制限時間も3時間30分を切っているからあまりのんびりはしていられないからね」
「わかりました、それじゃあ皆にもそう伝えておきます」
「頼んだよ。それじゃあまた後で」
俺は皆の元に戻りこれから10分間休憩した後、森の奥に進むことを伝えた。
連戦になれていない柚月が少々気疲れした様子だったが、他のメンバーはたいした疲労を感じていないようだった。
「はあ、やっぱり来るんじゃなかったかしら……」
「諦めろ。どちらにしても1回は来ておかないと話が進まないんだからな」
「それはそうでしょうけど……さすがに連戦は辛いわ……」
「その辺だって直になれるさ。ともかく10分間の休憩をもらったんだ。今のうちに消耗品や装備品の状態チェックを済ませよう」
「そうじゃの。トワよ、ライフルをバンバン使っていたが耐久値は大丈夫か?」
「そっちは平気。まだ90%以上残ってる。防具も心配ないかな」
「私も特に問題ありません」
「ボクもー。というか、聞いていた話より手応えなさ過ぎ?」
「わしも消耗はしていないのう。柚月はどうじゃ?」
「MPポーションを少々使ったくらいかしら。さすがに魔術士系統の私には連戦するとMPがね……」
「そう言うことならわしのMPポーションを分けておこう。わしはMPはほとんど使わないのでな」
「ありがと。さて、そろそろ10分経つみたいだしそろそろ出発準備を整えないとね」
実際、後2分ほどで予定時間の10分になるところだ。
皆、それぞれのパーティごとに森の奥へと進むための準備に入っている。
俺達は消耗も少なかったのでこのまま進めるが他の皆はどうだろう?
ともかく今は、準備を整えて集合場所へと集まるとするか。
**********
~あとがきのあとがき~
レイドエリアなのにザコが弱い、その理由はいずれ説明が入ります。
ええ、多分、きっと……
途中、『街まで戻れる』という表現が出ていますが、レイドクエストを受けるとクエストを放棄するまでは何度でもレイドエリアに出入りできる仕様です。
途中のボスまで倒して補充や修理に街まで戻れる仕様です。
それから、本文中で出てきたパーティ分け。
今後のレイドアタックでもずっと使い続けられる事になりますので、もう一度書き出しておきます。
第一パーティ:『ライブラリ』(トワ達)
第二パーティ:『インデックス』(教授達)
第三パーティ:『白夜』第二部隊(『白夜』サブマスター十夜達)
第四パーティ:ハルパーティ(ハル達)
第五パーティ:リクパーティ(リク達)
第六パーティ:『白夜』第一部隊(『白夜』クランマスター白狼達)
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