135.レイドアタック ~打ち合わせ 2 ~

「さて、それでは『ライブラリ』の参加も決まった事であるし、問題は残りのパーティ枠であるな」

「そうだね。『白夜』から出せそうなのは2パーティが限界かな。秘密を守れるパーティと言う意味では」

「そこまで隠すようなことかな?」

「未発見レイドエリアなら情報はなるべく隠したいところだね。初回クリア報酬の件もあるし」

「初回クリア報酬ねぇ……俺達としてはあまりこだわるつもりはないんですけど……」

「レイドの初回クリア報酬は豪華であるからなぁ……なるべくならば情報を外に漏らしたくはないのであるよ」

「まあ、そう言うことなら秘密にするのも構わないんだけどな……問題は残りの1パーティか2パーティをどうするかだ」

「うーむ、『インデックス』としても出せるのは最大でも2パーティであるな。それに2パーティ目はあまり戦闘慣れしていないメンバーも含まれるのである」

「そうなると別に2パーティ集めた方がいいのか? でも、そんな簡単にパーティ集めることもできないしなぁ」

「まあ、トワ君達は戦闘クランではないのであるからな。そちらの繋がりは弱いのであろう」

「そうなると僕達、という事になるんだろうけど……できれば『ライブラリ』で集めてほしいところだね」

「そうですね。今回の情報は『ライブラリ』からもたらされた物ですし可能な限り『ライブラリ』の利益になるようにした方がいいかと思いますよ」

「『ライブラリ』の利益ねぇ……トワ、パーティの当てに思い当たる節はある?」

「うーん……まったくないわけじゃないけどなぁ……あっちもレイドアタックなんてやったことがないだろうし……」

「おや、当てはあるのであるか?」

「まあ、ない訳じゃない、と言ったところだな……」

「ふむ、その当てとは誰じゃ?」

「まあ、身内というか……妹とリクのパーティならいいんじゃないかなと思うんだ」

「ふむ、ハル君とリク君のパーティであるか」

「確かに、彼らなら戦力的にも大丈夫だろうし異存はないかな。問題は参加してもらえるかどうかだけど……」

「そこなんですよね……まあ、ダメもとで当たってみるしかないかな……」

「そうだね……リク1人だけなら無理矢理でも参加させることができるけど……」

「……まあ、その辺はお手柔らかにな。とりあえずハルに連絡してみるか」

「私はリクに連絡してみるね」


 とりあえず俺とユキで手分けして連絡を取ってみることにした。

 さて、俺は妹様に連絡をするとしようか。


 フレンドリストでログイン中なのを確認してフレチャをつなぐ。

 程なくしてフレチャが繋がりハルと連絡が付いた。


『はいはーい。お兄ちゃんどうしたの? そっちからゲーム内で連絡なんて珍しいね?』

「ああ、ちょっと相談事があってな……」

『お兄ちゃんから相談事なんて本当に珍しいね。それで、どうしたの?』

「ハルに、というかハルのパーティ全員に依頼なんだがな……」

『うん? わたし達のパーティに依頼? いったいどうしたの?』

「実は未発見っぽいレイドエリアを見つけてな。そこの攻略に6パーティ必須でパーティが足りないんだ。それでハルとリクのパーティにも参加してもらえないかと思って……」

『未発見のレイドエリア!? 何それ面白そう、ちょっと待ってね!』


 ハルが一度フレチャを待機モードにした。

 おそらく向こうのパーティで打ち合わせをしているのだろう。


『お待たせお兄ちゃん! その話詳しく聞かせて!!』

「うん、まあ、そうだな。今暇か?」

『うん、平気だよ。あ、どうせなら『ライブラリ』のクランホームの方が皆にも説明できるし早いよね! じゃあそっちに行くね!』


 言うがすぐにフレチャが切れてしまった。

 まあ、あの勢いならすぐにでもこっちを訪ねてくるだろう。


 あとはリクの方だが……


「リクが詳しい話を聞きたいからこっちに来るって。ハルちゃん達はどうだった?」

「こっちも同じだな。詳しい話を聞きに来るそうだ」

「ふむ、それならばパーティ数の問題は解決できそうであるな。あとは、できれば現地を視察したいのであるが……」

「それは構わないけど誰かが案内に付かないとな」

「それならボクが案内するよー。ちなみに教授は惑いの森奥のポータル開放済み?」

「うむ、開放済みである。白狼君達はどうかね?」

「僕達も解放済みですね」

「それならすぐ行けるねー」

「でも、『ライブラリ』の方はどうなんだい? トワ君達が発見したのなら3人は開放してるだろうけど柚月さんとドワンさんは解放してないんじゃないかな?」

「……ええそうね。私達は惑いの森すら行ったことがないわ」

「そうじゃの。行くとすれば第4の街から移動となるのう」

「ふむ、それならついでに開放するのがいいんじゃないかな。僕と十夜、教授にイリス君、それに柚月さんにドワンさんでちょうど6人だしね」

「……それならお言葉に甘えることにするかのう。柚月もそれで構わんな?」

「まあ、決まっちゃった物はしょうがないしねぇ。私も一緒に行くわ」

「それでは決定であるな。準備がよければ第4の街まで移動である」

「僕達は構わないよ。柚月さん達はどうかな?」

「私達も大丈夫よ。イリスの装備は大丈夫?」

「へいきー。そんなに痛んでないし、惑いの森で使ってたのは両手斧だからねー。本装備の弓は痛んでないよー」

「ふむ、それならば我々は出発するのである。ハル君とリク君達の説得は任せたのである」

「多分説得するまでもないと思うけどな。まあ、そっちは任せてくれ」

「うむ。では行くのである」


 教授と白狼さんと十夜さん、それからイリス達の6人はホームポータルから転移していった。

 さて、俺とユキはハルとリクのパーティの相手だな……



 ―――――――――――――――――――――――――――――――



「お待たせお兄ちゃん! そしてリクさん達にも声をかけてたんだね」

「転移門のところでハルちゃん達と鉢合わせしたときは驚いたぜ。それで具体的にはどんな話なんだ?」


 教授達が出て行って15分ほどで2人がそれぞれのパーティメンバーを伴ってやってきた。

 どうやらあちらはあちらで鉢合わせになったらしいな。


「とりあえず店先で話すことでもないからな。クランホーム内に入るゲスト権限は出したから中で話すぞ」

「オッケー。それじゃ皆、中に入ろうか」

「俺達も入らせてもらうぜ。それで、どこで話すんだ」


 全員がクランホーム内に移動したのを確認してどこで話し合いをするかを確認する。


「そうだな……2階に行くのが面倒じゃなければ会議室、それじゃなきゃ談話室だな」

「うーん、わざわざ会議室で話すようなことでもないよね。談話室でいいんじゃないかな」

「そうだな、俺もそれで構わないぜ。皆はどうだ?」

「どこでもいいんじゃないか? クランホーム内だったらどこで話しても一緒だろうし」

「そうですね。それに『ライブラリ』の談話室ってちょっと興味あるかも」

「特別な物は特に何もないけどな。それじゃあ談話室にしようか」


 特に反対意見は出なかったので談話室で続きの話をすることに。

 談話室に着いたらそれぞれが席に着き話を始めることになった。


「それで、お兄ちゃん。具体的にはどんなレイドエリアなの?」

「具体的なところは何もわかってないんだけどな。何せまだ誰も入った事がない筈なんだから」

「うん? 入場パーティ数に制限でも付いてたのか?」

「ああ、付いてたよ6パーティ必須って言う制限がな」


 その制限数の話が出たところで全員が息を呑んだ。


「……6パーティ制限ってフルレイドじゃない! なんでそんなレイドエリア見つけたの!?」

「そこを怒られてもな……偶然だよ」

「お兄ちゃんの偶然ってホントインパクトが大きいよね。この間のフェンリルもそうだけど」

「……ああ、フェンリルの発見も偶然だったよなぁ」

「……まあ、その辺は置いておくとしてだ。6パーティって具体的には決まってるのか?」

「ああ、俺達『ライブラリ』が1パーティ、『インデックス』から1パーティ、『白夜』から2パーティまでは決まってる」

「つまり私達が参加すれば6パーティ埋まるんだね!」

「そう言うことになるな」

「ねえ、皆、この話乗ろうよ! 未発見のレイドエリアとかきっと楽しいよ!」

「その前にだ、レイドエリアには推奨レベルがあっただろう? 推奨レベルいくつのレイドエリアなんだ?」

「レベル45『制限』だ」

「……何?」

「だからレベル45『制限』だ。教授も初めて聞いたらしいがレベル制限レイドだ」

「……レベル制限レイドか。あるだろうってのは知ってたがまさか見つかるとはな……」

「それで、どうする? 参加してくれるならもっと詳しい話をするし参加しないならそれでも構わないぞ。まあ、今日の話は黙っておいてもらわないと困るけど」

「……俺達も参加の方針でいいか、皆?」

「ああ、構わねえぜ。って言うかレベル制限レイドとか誰もやったことがないんだろ? 面白そうだぜ!」

「構わないんじゃないか。ここまできたら乗りかかった船だしな」

「……他に意見がないなら俺達のパーティは参加だな。ハルちゃん達はどうするんだ?」

「え、わたし達はもう参加って事で話はついてるよ? ここに来る前にレベル65とかじゃなければ参加するって決めてたからね!」

「相変わらず思い切りがいいなぁ。それで、もっと具体的な話に移ろうか。見つけたレイドエリアってどこにあったんだ」

「……ここからは外に漏らさないでくれよ」

「言われなくてもわかってるって。それで、どこなんだ?」

「惑いの森の最奥部のさらに奥。花畑がある場所からさらに奥へ進んだ場所だ」



 ―――――――――――――――――――――――――――――――



「おー! こんな場所にお花畑があったんだね!」


 場所の説明をしたら「一度現地を見てみたい」という話になったため、惑いの森奥へと足を運ぶ事になった。

 なお、ハルやリク達のパーティは既に惑いの森はクリア済みだったため惑いの森奥のポータルまではすぐに移動できた。

 今回のレイドエリア攻略中だけ、と言う条件でハルやリク達のパーティメンバー全員に『ライブラリ』のポータル利用権限を与えてある。


「それで、この先はどうすればいいんだ?」

「ちょっと待ってくれ。オッド、済まないがもう一度道案内を頼む」

「わかりましたニャ。それでは皆さん、こちらですニャ」


 オッドを先頭に俺達は森の奥へと足を踏み入れた。

 ……やっぱりここからは足場が悪いよなあ。


「この先に道ってあるの?」

「ない。だからオッドに道案内を頼んでいるんだ。はぐれたらさっきの花畑まで戻されかねないから気をつけろよ」

「はーい。それで、どれくらい時間かかるの?」

「さっき歩いたときは30分から40分ぐらいだったな」

「……それって短縮できない?」

「見ての通りここは森の中だ。騎獣に乗って移動もできないし諦めろ。2回目以降はポータル転移が使えるようになる」

「はーい。40分歩くのはさすがにきっついなぁ……」

「確かにな。俺は全身鎧だしかなりきついぜ」

「……ああ、この辺はセーフティーエリアのようだから装備外しても問題ないぞ」

「……それを早く言ってくれトワ」


 そんな雑談をしながら歩くこと40分近く。

 薄暗い森を抜けてレイドエリアのある広場へとたどり着いた。


「おや、トワ君達も来たのであるな」

「あれ、教授。まだ戻ってなかったのか?」

「うむ、どのような物か色々調べていたのでな。まあ、柚月君達はもう既に帰っているが」

「それで何を調べていたんだ?」

「まあ、いろいろである。一度戻って私のケットシーでもここに来られるかなども確かめていたのである」

「その様子だと大丈夫だったようだな」

「うむ、大丈夫だったのである。これで『白夜』のパーティがここを訪れるときの道案内を出来るのであるよ」

「別に教授が案内しなくても俺達でするけど?」

「どちらにしても『インデックス』のパーティも道案内が必要なのである。私ができた方が楽である」

「まあ、それはそうだがな」

「お兄ちゃん、ポータル登録終わったよ。これからどうするの?」

「ああ、そうか。さてどうした物かな……」

「それならば『ライブラリ』に戻るのである。今から戻ればまだ柚月君達もいるはずである」

「そうか、なら一度クランホームに帰還するか」

「はーい。みんなー戻るよ-」


 こうしてレイドエリア前のポータル登録を終えた俺達は一路、クランホームへと帰還するのだった。



 ―――――――――――――――――――――――――――――――



 現地の下見を終えて戻ってきた俺達を待っていたのは、柚月達3人と白狼さんに十夜さんだった。


「お帰りなさい。トワ達も現地に行ってたのかしら?」

「ああ、下見に行ってたぞ」

「という事はそっちの勧誘は大丈夫だったみたいね」

「まあ、そう言うことだな」

「よろしくお願いします! 柚月さん!」

「よろしく。柚月さん」

「こちらこそよろしくね。これでパーティ編成は本決まりかしら」

「そうだな。『ライブラリ』が1パーティ、『インデックス』が1パーティ、『白夜』が2パーティ、それにハル達のパーティにリク達のパーティ、6パーティが揃ったことになるな」

「……そのようね。こうなったら覚悟を決めるしかないか……」

「まだ諦めてなかったのかのう」

「レイドなんてやる予定なかったからね」

「イベントとかでやるかもだよー」

「そう言うときはパスするつもりだったから大丈夫よ」

「それは大丈夫とは言えないな。それでこの後はどうしようか」


 現地の下見も終わったし今日やることは見当たらない。

 後は当日に向けての準備とかだと思うけど……


「そうだね。今回は完全に情報のないレイドエリアだ。情報集めや顔合わせも兼ねて近いうちに1回挑戦してみるのがいいと思うよ」

「白狼君の言う通りであるな。情報がなければ何も対策を立てることが出来ないのである」

「……近いうちですか」

「ああ、出来る限り早い方がいいね。そうすれば何が必要かもわかってくるだろうから」

「……『白夜』のパーティに確認が取れました。明日か明後日の夜なら大丈夫そうです」

「さすが『白夜』は手慣れているのであるな。まあ、『インデックス』もスケジュールは調整済みで明日か明後日の夜なら行けるのであるが」

「あとは俺達だけど……」

「わたし達はどっちでも大丈夫だよ! 特に予定は入ってないしね」

「俺達も大丈夫といえば大丈夫か。何も用事がなかったらボス巡りをしようと思ってた程度だからな」

「……なら、明日にでも行ってみるか。消耗品の類いは十分に在庫があるし」

「まあ、今回は情報集めが目的だからね。消耗品とかも含めてあまり無理のない範囲で行こう」

「それでは今日のところは解散であるな。明日はよろしく頼むのである」

「こちらこそ。レイドエリアのことは参加するメンバーだけに明日教えることにするよ。今日のところは普通にレイド攻略に行くとしか教えていないからね」

「それじゃあわたし達も行くね。お兄ちゃんたち、また明日!」

「俺達も行くか。それじゃあ明日よろしくな」


『ライブラリ』のメンバー以外は三々五々それぞれ帰路につく。


 急な話ではあるが明日の夜にレイドエリア攻略に乗り出すことになった。

 今日はもう遅い時間だし、消耗品の確認は明日の昼間にやればいいか。

 落ちる準備を整えてログアウトするとしよう。



**********


~あとがきのあとがき~



かなり急な話ではありますが、ライブラリ以外のメンバーにとっては特に日程の問題は元からなかったりします。

白夜は普段からレイド攻略をやっているクランなので行き先が変わる程度ですし、インデックスも戦闘班1パーティぐらいだったらすぐに都合がつきます。

ハルやリク達はフリーのパーティですからログインの時間さえあえば問題ないという判断ですね。


……さて、6人×6パーティの36人フルレイド。

書き切れるのだろうか(マテ


それからケットシー任せの道案内ですが、ケットシーに頼む以外にもレイドエリアに到達するための方法は用意されています。

それについての説明もどこかで挟む予定ですが、しばらくはレイドアタックが続くのでそれなりに先の話かなぁ……

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