134.レイドアタック ~打ち合わせ 1 ~
新発見のエリア、それもレイドエリアなんて見過ごせない!
(教授や白狼的に)
という訳でレイドアタック開始です。
しばらくはレイドアタックの話が続きます。
**********
「あら、お帰りなさい。どうしたの疲れた顔をして?」
「ああ、うん。ちょっとな」
クランホームに戻ると柚月が談話室にいた。
休憩中だったらしいな。
「これから教授と多分白狼さんが来るから」
「教授に白狼さん? 組み合わせとしては珍しいわね。どちらか片方だけならしょっちゅう来るけど」
「ちょっとな……さっき話したけど、惑いの森の奥にレイドエリアを発見してね……」
「ああ、チャットで話してたレイドエリアのことね」
「誰も攻略してないし、おそらく未発見のレイドエリアだと思う」
「……なるほどね。それは教授が大喜びしそうなネタだわ」
「そういう訳で教授が白狼さんを巻き込んでやってくると思うから」
「オッケー。それで本来の目的の方はどうだったの?」
「そっちは大漁だよー。これでしばらくはトレントウッドには困らないと思うよー」
「それはよかったわ。さて、とりあえず防具の修理をしてあげるから並んでね」
俺達は柚月の指示に従い順番に防具の修理をしてもらった。
全員、布・革装備なので防具は柚月の領分だ。
今回は戦闘でそんなに攻撃を受けることはなかったので防具の修理はすぐに済んだ。
「こっちは終了ね。武器の方はドワンが来たときに修理してもらいなさい」
「おや? ドワンはログアウトしたのか?」
「ログインしてるけど外出中よ。職業ギルドに行ったんじゃないかしら」
「ふーん、それじゃあ戻ってきたらまとめて修理してもらう事にしよう」
防具と違って武器の方は周回してる分、消耗もしている。
斧はサブウェポンにすら使用しないはずなので修理を急ぐ必要はないのだが……その辺は気分かな。
「それで、何でまたレイドエリアなんて見つける事になったのかしら?」
「ああ、それは……」
柚月に経緯を説明しようとすると背後に転移反応があり、ホームポータルから教授と白狼さんがやってきた。
「ふむ、ちょうどよかったというところであるか」
「お邪魔するよ、トワ君、柚月さん」
「ああ、いらっしゃい、教授、白狼さん」
「トワ君、申し訳ないんだけどうちの十夜にもライブラリへの転移権限を与えてくれないかな? レイドエリアという事で僕1人の判断じゃ決めかねることがあるからね」
「『白夜』のサブマスターだっけ?」
「うん、そう。さすがに僕1人じゃ今回の案件は大きすぎるからね」
まあ、確かに教授のことだからレイドアタックをしたいって言い出すだろうからなぁ……
十夜さんもフレンドリストに入ってるはずだからそこから操作してっと……うん、設定完了。
「設定終わりましたよ」
「ありがとう……うん、大丈夫らしい。今からこちらに来るそうだ」
白狼さんが言ってすぐに転移反応があり1人の男性が現れた。
もちろん十夜さんだ。
「お久しぶりですね、トワさん。今日は押しかける形になってしまい申し訳ありません」
「構いませんよ。押しかける形になったのだって、原因は教授でしょうし」
「それを言うならそもそもの原因は、新しいレイドエリアを発見したトワ君達である。そんな事よりも早く話を聞かせてもらいたいのであるよ」
「……まあ、構わないけどね。どうする応接間に移動する?」
「私はここで構わないのである」
「僕達もここで構わないかな」
「それじゃあここで話しますか」
「私、飲み物を用意してきますね」
「ユキ頼んだ。柚月も一応話に参加してくれるか」
「私は発見メンバーじゃないんだけどねぇ……まあ、いいわ。それじゃあ始めましょう」
こうして『ライブラリ』『インデックス』『白夜』の3クランによるレイドエリア報告会が開始されるのだった。
―――――――――――――――――――――――――――――――
「ふむ、それでは今回発見されたレイドエリアは惑いの森の奥にある花畑のさらに奥であるか……1ヶ月前に調査したときには何も見つからなかったのであるが……」
「それって森の奥も調査したのか?」
「もちろん調査したのである。であるが惑いの森と同じくある程度進むと、強制的にループさせられてしまうのであるよ」
「僕もあの森の奥に何かあるという話は聞いたことがなかったな。何の意味もなくあんな場所が用意されているとは思わなかったけどね」
「そうですね。ですがそうなると、今回はどうして発見できたのでしょうか?」
「多分ケットシーが一緒にいたからじゃないかな? 最初に違和感を感じたのもイリスのところのジンベエだし」
「ふむ、それなら納得いくのである。その頃はケットシーを持っていなかったのであるしな」
「ケットシーか。入手方法については教授に聞いてるけどそんなイベントもあるとはね」
「……そう言えばオッド。あれってケットシー3匹いないと見つけられなかったのか?」
召喚状態のまま話し合いの場に臨席していたオッドに確認してみる。
「そんな事はないですニャ。ジンベエ1人でも案内できたはずですニャ。ボク達を呼ぶようにお願いしたのは念のためだと思いますニャ」
「……だってさ。それで、どうしたものかね」
「ひとまず確認であるが今回発見したのは45レベル『制限』レイドで間違いないのであるな?」
「ああ、間違いないよ。モノリスにもそう書かれてた。念のため
「念のため確認したいのである」
「わかったよ……ほい、これだ」
俺はその場にいる全員に見えるように
モノリスを調べたときの情報が載ってるやつだし問題はないだろ。
「……確認したのである。それにしてもようやくレベル制限レイドエリアが発見であるか」
「さっきも興奮してたけど、レベル制限レイドってまだ確認されていなかったのか?」
「ヘルプに載っていた以上はどこかにあるとは考えられていたのであるが、実際に発見されたのは初めてである」
「僕の方からも補足させてもらうと、今まで発見されているレイドエリアは普通に推奨レベルが設定されてるだけのレイドエリアばかりなんだ。今、『白夜』が挑戦しているレイドエリアも65レベルレイドだしね」
「そうですね。そちらの攻略もなかなか進まなくて手こずっていますが……」
「やっぱり『白夜』でも推奨レベルが65レベルのレイドエリアになると辛いんだ?」
「さすがにね。途中のボスから得られるドロップ品を活用して何とか奥まで行けないか試行錯誤しているけど上手くいかないね」
「それに1回アタックするのに必要なアイテム量もなかなかの量ですからね。そうそう頻繁に挑めるものでもありません」
「……だってさ、教授。どうするつもりだ?」
「無論、未発見のレイドエリアである以上、挑んでみるのが筋であろう。誰も挑んだことのないレイドエリアなどと言う未知の領域に挑まずしてどうするのであるか!」
「そうは言ってもなぁ……6パーティ制限のレイドエリアって他にもあるんですか?」
「そっちも聞いたことがないね。今まで発見されている範囲で一番多いパーティを要求されるエリアでも4パーティ以上って言うだけで6パーティ必須って言うのは僕達が知る限り初めてのパターンだよ」
「その通りですね。最大パーティ数に制限がなければ常に6パーティで挑んではいますが、6パーティ必須なんて制限の付いたエリアは聞いたことがありません」
「ならばこそ最初の攻略者になるべく挑むのであるよ!」
「気持ちはわかるがな……白狼さん、十夜さん、『白夜』で6パーティ……いや、教授達『インデックス』も参加するだろうから5パーティか。それだけのパーティ用意できますか?」
「うーん、さすがに他のレイドエリア攻略とかもあるしそれだけの数を用意するのは難しいかな……」
「そうですね。すぐに動かせるのは2パーティが限度でしょう」
「……だってさ、教授。ちなみに『インデックス』から出せるパーティ数は?」
「……戦闘用のパーティとなると1パーティか2パーティであるなぁ。それに『ライブラリ』を加えても最大5パーティであるか……」
「いや、しれっと私達を巻き込まないでくれる?」
流れで会議に参加していた柚月が待ったをかける。
でも、この流れだと俺達の参加は決定事項だと思うぞ?
「何を言うのであるか柚月君。発見者である『ライブラリ』が参加しないでどうするのであるか」
「私達は戦闘職じゃなくて生産者集団なんだけど?」
「それでも最低限の戦闘力はあるはずである。45制限という事はそこまでレベルを要求されないはずであろう? 今何レベルであるか?」
「う……それは……41レベルよ」
「それならばメインジョブも2次職に転職済みであるな。ならば参加してみるのである。たまには違った世界を体験するのも悪くはないのであるぞ?」
「……トワ、どうするのよ?」
「俺としては挑んでみてもいいと思うけどな。レイドアタックなんてやる機会、滅多にないし」
「うー、イリス、ユキ2人はどうなの?」
「私もできればやってみたいです」
「ボクもー。ダメだったら諦めればいいし一度は行ってみたいかな-」
「うー……」
「……なんじゃ、この集まりは?」
柚月が唸っているところにドワンが帰ってきた。
「おかえりドワン。用事は終わったのか?」
「ああ。鍛冶ギルドに行ってクエストの完了報告をするだけじゃからな。それで、この集まりは一体何じゃ?」
「トワ君達が未発見のレイドエリアを見つけてきたのである。そこを攻略するかどうかと言う話である」
「……まあ、攻略するかどうかまでは話が進んでいるわけじゃないけれどそんな感じかな?」
「それで十夜さんも一緒なのじゃな……それで柚月が頭を抱えている理由はなんじゃ?」
「レイド攻略に『
「なんじゃ、そう言うこととか……それで、トワ。どこで未発見のレイドエリアなど見つけてきたのじゃ?」
「惑いの森の最奥部のさらに先かな。そこでケットシー達が抜け道を見つけてな。そこにレイドエリアがあった」
「なるほどのう……それで、『ライブラリ』も参加するかどうかと言う話になっているわけじゃな?」
「まあそういうこと。ドワンの意見はどうなんだ?」
「……まあ、たまにはそういうことに参加してみるのもいいじゃろう。トワやユキほど動けるわけじゃないがのう」
「……ドワンも参加に賛成なのね……」
「柚月は反対か?」
「私としては裁縫職人であってレイドアタックなんて目指してるわけじゃないのよ……」
「まあ、気持ちはわかるがのう。他のメンバーは乗り気なわけじゃし一度参加してみてはどうじゃ? レイドアタックなんぞ一度でクリアできるわけがないのじゃからダメそうならそれで諦めればいい」
「うー……わかったわよ。とりあえず1回目は参加するわ。それでダメそうなら抜けさせてもらうからね」
「それでいい。欠員はシリウスとプロキオンに任せればいいのじゃからな」
どうやら俺達の参加もこれで決定したようだ。
さて、どうなることやら……
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