125.ダンジョンアタック 2
「チャージショット!!」
俺はスキルを使いスケルトンメイジの頭蓋骨を吹き飛ばす。
敵がスケルトンとスケルトンアーチャーしか出てこない地下1階と2階の探索は非常にスムーズに終わった。
『墓地ダンジョン』は入る度に構造が変化するタイプのインスタンスダンジョンだが、鉱山ダンジョンのように採掘しながら進むわけではないので下り階段を見つけたらすぐに次の階へと進んでいった。
地下3階からは今までのスケルトンの代わりにスケルトンウォーリアーやスケルトンメイジなどの上位種が出現するようになる。
これに加えてゾンビやゴーストなどのモンスターも追加され、一気に敵のパターンが増えてくる。
小部屋の数も多くなり、それに比例するように敵との戦闘も多くなるため消耗が避けられないのだ。
……普通なら。
俺達の場合、後方から魔法を飛ばしてくるため厄介なスケルトンメイジを一方的に処理できる上に物理耐性が極端に高いゴーストは神聖魔術で一撃、残った敵は近寄ってきた順に倒していくというパターンで進んでいる。
「……こうして進んでいくと大分ぬるいダンジョンよね……」
「本来ならこの階層からはメイジとゴーストによる被害が出てくるんだがなぁ……」
「トワとユキが速攻で倒してしまっておるからのぅ。残りの敵も少々強くなった程度でしかないからまだまだ余裕じゃわい」
「ボク達の場合、装備が強すぎるからねー。多分、後半にならないと苦戦しないんじゃないかなー」
「まあ、油断は禁物ですよ。ゴーストは神聖属性と光属性以外はダメージがあまり通らないみたいですし」
「……武器にホーリーウェポンが常にかかっているせいで、物理攻撃すらゴーストを一撃で散らせるのだがの」
「まあ、とりあえず今日の目標の5階まではサクサク進んでしまおう。この辺の敵じゃまだ格下だから経験値的なうまみも少ないからな」
「……そうね、下り階段を見つけたら先に進んでしまいましょう。宝箱もこの辺の階じゃあまりいい物は出ないみたいだし」
「大当たりだったら【呪魔法】のスキルブックが出ることもあるらしいがな」
「……出ても使わないし、確かボスのレアドロップにもあったわよね」
「まあな。どちらかと言えば、15階のラスボスを周回してドロップを狙うのが一般的だ」
「【呪魔法】って何ですか?」
「バステ・デバフ専門に近い魔法よ。要するに敵の行動阻害や弱体化関係を集めた魔法属性ね。【付与魔法】の逆に近いわね」
「初期スキルからは選べないし、入手できるのが一番早くてこのダンジョンだからな。知名度も低いし使ってるプレイヤーも少ないだろうな」
「【闇魔法】との統合進化で【死滅魔術】って魔法系統が手に入るけど、これも使い勝手にクセがある魔法形態だからねぇ……」
「まあ、俺達にはあまり縁が無い魔法だろう。もしスキルブックが出たら……まあ、そのときに考えよう」
「それもそうね。さあ、先に進みましょ」
結局、宝箱はいくつか見つけたもののたいした物は入っておらず、そのまま地下5階にあるボス部屋へとたどり着いたのだった。
―――――――――――――――――――――――――――――――
「さて、ボス部屋な訳だけど、ここのボスって何だったかしら」
「カースドナイトっていう、でかいスケルトンだな。装備もしっかりしてるし攻撃力もそこそこ高い。バランスのいいボスだよ。それから取り巻きにレッドスケルトンが数匹かな」
「レッドスケルトンはスケルトンの上位版じゃったか。まあ、今の戦力差なら余裕じゃろう」
「そうだねー。作戦は?」
「プロキオンとユキでカースドナイトを足止めしてもらって、その隙に俺達4人でレッドスケルトンを殲滅する。レッドスケルトンが片付いたら全員でカースドナイトを攻撃だな」
「うん、わかった。お願いね、プロちゃん」
「オン!」
「さて、それじゃあ料理バフの効果時間もまだ残っているし、早いところボス戦に挑みましょう」
「そうだな。それじゃあ行くぞ」
俺達はボス部屋の扉を開けてボス部屋へと入る。
そこには事前情報通りカースドナイトとレッドスケルトンが待ち構えていた。
レッドスケルトンは標準で剣と弓を両方使うため、距離があっても油断はできない。
俺はまず手始めに、最奥にいるレッドスケルトンに狙いを定めてライフルで撃ち抜く。
レッドスケルトンであってもさすがに俺のライフルに対抗出来ないのか一撃で砕け散った。
俺の攻撃で幕を切って落とされた戦闘は、終始こちらのペースで進んだ。
配置されていたレッドスケルトンの数は全部で8体。
そのうち離れたところにいた2体は俺がライフルで撃ち抜いた。
その間にユキとプロキオンはカースドナイトに接近してヘイトを取り、ターゲットを固定する。
後は近い距離にいたレッドスケルトンはドワンが一気に距離を詰めて殴り砕き、中距離の敵にはイリスの弓と柚月の魔法による攻撃が降り注ぐ。
俺がライフルで3匹目のレッドスケルトンを撃ち抜いたときには、既に残りのレッドスケルトンも倒されていた。
こうなると後はボスであるカースドナイト1体を倒すだけになる。
プロキオンのヒーラーを務めていたユキがその役割を柚月と交代し、ユキを含めた4人でカースドナイトを一気に攻める。
ユキとドワンは脚部を狙い動きを阻害し、俺とイリスは胸部の鎧を破壊しようとスキルで攻撃する。
カースドナイトは頭部も頑丈な兜で守られているため、ヘッドショットでダメージを与えるのは難しい。
代わりに胸部の罅が入った鎧部分を破壊すると核が露出してそこがウィークポイントとなる。
数回攻撃を加えることで胸部の鎧を破壊することに成功してカースドナイトの核が露出した。
あとは、そこをめがけて攻撃を繰り返すだけだ。
カースドナイトとの戦闘はその後あっけなく終了した。
何回か特殊行動による範囲攻撃のダメージをユキやドワンが受けていたが、すぐに範囲回復で回復されていたし、HP低下に伴う特殊攻撃は露出した核に大ダメージを与えることでキャンセルした。
結局、カースドナイト戦は特に苦労することなく終わってしまった。
ボス戦後はお楽しみのドロップアイテム確認だが……俺のドロップアイテムはカースドナイトの魔石だった。
邪属性なのは珍しいが、正直あまり使い物になる気がしない。
マギマグナムとして組み上げれば何か珍しい効果が付くかも知れないから一応とっておくがハズレ枠だな。
他の皆の表情も渋いのであまりまともなアイテムはドロップしていないのだろう。
「えっと、『カースドナイトの魔核』ってアイテムが手に入ったけどこれっていい物なのかな?」
ユキは相変わらずの引きの良さでレアドロップの魔核を引き当てたらしい。
「確か武器に使えば確率でステータスダウンの呪いを付与出来る効果が付いて、防具に使えば呪属性攻撃に対する抵抗力が上がるアイテムね。……まあ、カースドナイトのドロップの中では比較的当たりの部類ね」
「そうですか……ちなみに一番の当たりってなんでしょう?」
「そうじゃのう……カースドナイト自体がろくな物を落とさないことで有名じゃが……『カースドナイトの曲剣』が割と当たりの部類かのう。……わしらでは誰も使えんが」
「……カースドナイトってあまり美味しくないボスなんですね……」
「まあ、ボスドロップが美味しくないのがこのダンジョンが人気のない最大の理由だからな。そこはレベル上げとして割り切るしかないな」
「そうなんだ……ちなみにこれって何かに使えるかな?」
「うーん……何とも言えないな。まあ、とっておけば何かに使えるだろう」
「そうだね。そうするよ」
「それじゃあ、ドロップアイテムの確認も終わったしショートカットの開通を済ませてしまいましょう」
「それもそうじゃの。今日のメインの目的はそれじゃしな」
「早いところ終わらせちゃおー」
ボス部屋を抜けたところにあるセーフティーエリアで5階へのショートカット登録を済ませた俺達は、一度6階へと下りてみた。
6階からは先ほどのボスの取り巻きだったレッドスケルトンやその上位種が徘徊するエリアになる。
手近なところにいたレッドスケルトンを相手に一戦交えた後、5階のセーフティーエリアに戻る。
「一戦交えた感じ、6階以降も特に問題なくいけそうね」
「そうだな。6階以降は敵の強さが跳ね上がるから油断はできないが、先手をとられない限りは問題ないだろう」
「そうみたいね。それじゃあ、今日はこの辺で切り上げて解散にしましょうか」
「そうですね。結構時間かかっちゃいましたし……」
「これ以降の探索はまた明日じゃの」
「ところで、柚月達は2次職への転職クエスト受けられるレベルになった?」
「残念ながら私はまだね。確か18からだから後1足りないわ」
「わしも同じじゃの」
「ボクは2足りないー」
「それじゃあ明日はレベル上げも兼ねてマップを埋めながら進んでいくことにするか」
「そこまでしなくても大丈夫だと思うけど……まあ、本来の目的が全員の戦闘職を2次職へ上げることだから間違いではないわよね」
「そういうこと。それじゃ、明日の目標は全員が戦闘系2次職転職クエスト受注できるようになるところまでレベル上げ。明後日は地下10階のボス攻略でいいかな?」
「オーケー、その予定で行きましょう」
「よかろう」
「りょうかーい」
「うん、わかった」
「それじゃ、脱出だな」
俺達はショートカットのポータルを利用してダンジョンを脱出、そのままクランハウスへと帰還した。
その後は解散して自由行動となったため、俺はガンナーギルドに行ってマナカノンの製造クエストを受注限界まで引き受けておいた。
……やっぱりガンナーギルドのランクを上げるにはこれが一番手っ取り早いからな。
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