124.ダンジョンアタック 1

 『墓地ダンジョン』、正式名称は『古代の地下墳墓』というその名の通り古代の墓をメインにしたダンジョンだ。

 場所は第4の街の南東側、騎獣で1時間ぐらい進んだところにある。

 『墓地ダンジョン』の名前の由来通り、このダンジョンに出現するモンスターは基本アンデッドばかりだ。

 最奥部に待ち構えているボスレベルが45であるため『45レベルダンジョン』と大まかに区切られている。


 さて、俺達ライブラリ一行は装備を整えた次の日、つまり月曜の夜にこのダンジョンを訪れていた。

 だが、ダンジョンの入口は人もまばらで流行っているようにはまるで見えない。


 これは私見も含まれるが、アンデッド系モンスターのドロップが極めて美味しくないことが要因に上げられる。

 腐肉であったり謎の骨であったり、あるいは痛んだ装備品であったり……とにかくドロップアイテムが渋い。

 そのうえ、毒や病気などのバステを使ってくる敵や物理攻撃に極端に強い耐性持ち、あるいは物理攻撃無効などの特殊能力を持ったモンスターがわんさかいる。

 手に入るアイテムは使い道がほぼない上に回復アイテムの消耗が激しい、そういうダンジョンなのだ。


 それで不人気ダンジョンの1つになると言うことは間違いない。

 また、動く骸骨のスケルトンはともかくゾンビやスペクター、レイスと言ったモンスター達はあまり気持ちのいい物でもない。

 実入りが少ないこととモンスターが気持ち悪いこと、この2つがこのダンジョンから足を遠ざけている要因だ。


 そんな『墓地ダンジョン』の入口にたどり着いたわけだが……


「ここが『古代の地下墳墓』なんだ……」

「ああ、とりあえず入り口前の転移ポータルで転移先登録だけは先に済ませるぞ」

「それもそうね。毎回1時間移動するのも馬鹿らしいし」

「それにしても本当に他の人達がまばらだねー」

「ドロップも大したことはなく、モンスターも気持ち悪いとなれば人も寄りつくまいよ」

「まあ、そういうことだ。経験値的には美味しいけどな。俺達には」


 そう、このダンジョンは俺達にとっては非常に経験値稼ぎをしやすいダンジョンになる。

 理由は単純で、神聖属性持ちが2人もいるからだ。

 神聖属性の対アンデッド特攻は基本4倍ダメージ、効きが悪い相手でも3倍ダメージは入る。

 光属性の2倍ダメージから考えると、倍率だけで2倍、実際には防御力計算が入るので倍率以上の火力が出せる。

 そのため今回はユキにアタッカーに加わってもらい、柚月がヒーラーをメインにする予定だ。

 タンク役はプロキオンにやってもらう。


「とりあえず、今日の目標は地下5階のボスを倒してショートカット開通でよかったかしら?」

「ああ、今日はその辺が目標でいいだろう。本格的なレベル上げは地下6階に入ってからの方が効率がいい」

「了解。それじゃあ、料理バフをつけてから中に入りましょうか」

「そうですね。そうしましょう」


 各自、自分達の役割にあったバフが付くように料理を食べる。

 今回はHPとMPが枯渇する恐れがないので薬膳料理ではなく普通のステータスアップ系料理だ。

 あとは、MP管理にさえ気をつければこのダンジョンは問題にならないはずだ。

 特に敵性モンスターのレベルが33~35の地下5階までなら。


「それじゃあ、準備は整ったわね。行きましょうか」

「ああ、早いところ地下5階までは終わらせてしまってレベル上げと行こう」


 こうして俺達はダンジョンの中に足を踏み入れたのだった。



 ―――――――――――――――――――――――――――――――



『墓地ダンジョン』は正式名称を『古代の地下墳墓』と言うだけあって非常に薄暗くジメジメした感じがするダンジョンだ。

 ……薄暗いのはともかく、ジメジメした感じまで再現しなくてもいいと思うのだが、このゲーム。


 入ってすぐの小部屋を抜けると狭い通路があり、その奥に哨戒中と思われるスケルトンの一団が見えた。


「ストップ。この先にスケルトンがいる。数は……5かな」

「よく見えるわね。やっぱり【夜目】スキルのレベル差かしら」

「多分な。それじゃあ俺から先に先制攻撃を仕掛けるから前衛ドワンとユキ、プロキオン。後衛は柚月とイリスで頼む」

「おっけー。まあ、近づかれる前に終わる気もするけど」

「さすがに全滅させるまでは攻撃回数が足りないよ。……ともかく攻撃準備しますか」


 俺はインベントリより黒牙を取り出す。

 黒牙の装備ボーナスは武闘大会の後に付け替えてSTR極振りにした。

 今のステータスはこんな感じだ。


 ―――――――――――――――――――――――


 黒牙 ★11


 黒き砲身を持つライフル銃

 精密な魔力操作によって製造され、

 素材の性能を限界まで引き出した逸品

(製作者:トワ)


 装備ボーナスSTR+150

       STR+70


 ATK+500 STR+220(150+70)

 耐久値:250/250

 装弾数:5


 ―――――――――――――――――――――――


 装備ボーナスをSTRに極振りすることによって、少なくとも撃った後に後ろに転がることはなくなった。

 銃身が跳ね上がるのはどうしようもなかったが……


「さて、まずは第一射……ホーリーウェポン」


 武器に忘れず神聖属性の付与魔法をかけておく。

 黒牙の攻撃力なら属性効果が乗らなくても一撃の気がするがそこは念のためだ。


 俺は膝立ちの姿勢で狙いをつけて後方に見えるスケルトンアーチャーと思しき敵を狙い撃つ。

 俺自身はライフルの反動で少し後に押し出されたがそれ以外は問題が無く、また狙いをつけていたスケルトンアーチャーは一撃で光の粒子となって消えていた。

 スケルトンの一団は索敵範囲外からの攻撃で完全に統率を失っており、もう一撃ぐらいなら撃ち抜く時間が合ったため、今度は最も近くにいるスケルトンを狙い撃つ。

 二射目も狙いを外さずにスケルトンを打ち砕き消し去ることに成功した。

 だが、さすがに2発も攻撃を加えた以上こちらの位置を感づかれたようで、こちらに向けてスケルトンが迫っていていた。


「トワ、ここから先はわしらだけでやらせてもらうぞ」

「そうね、数的にも優位だしこの階の敵がどの程度の強さなのか確かめないとね」

「わかった、それじゃ後は任せたぞ。ホーリーウェポン」


 前衛として前に出るドワンにホーリーウェポンをかけて攻撃力の底上げを行っておく。

 イリスについてはユキの方でホーリーウェポンをかけ終わっているので問題ない。

 あとは、念のため奇襲がないか警戒するためにウェポンチェンジでマギマグナムを装備しておいて後方に下がる。


 その後の戦いは一方的だった。

 遠距離攻撃を行うスケルトンアーチャーは既に倒され、2人が並ぶのが精一杯の狭い通路で敵はまともな連携が取れず、ユキとドワンの2人だけで残っていたスケルトン3匹を処理してしまっていた。


「なんじゃ、さすがに特攻効果が乗っているとは言えあっけないのう」

「連携も上手く取れていなかったみたいですしこんな物じゃないでしょうか」

「そうね。まあ、まだ最初のフロアだしこんな物でしょう。気を引き締めて先へ進むわよ」

「おー」


 とりあえず緒戦は一方的な戦闘で幕を閉じたのであった。


 こうして俺達の墓地ダンジョンの攻略は開始された。

 まあ、最初の間は敵のレベルも完全に格下だし苦労はしないだろう。


 とはいえ油断せずにキッチリと敵を倒して進まないとな。


**********



~あとがきのあとがき~



ライフルの反動抑制について、大分昔に出てきた話ですがSTR依存です。

武闘大会のときは検証時間が無かったためにDEX-STR型で装備ボーナスを割り振っていたため一発撃つごとに吹き飛んでいましたが、STR-STRのSTR極振り型にすることによって吹き飛ばない程度にはSTRが足りるようになりました。


装備ボーナスの書き換えには錬金術スキルで作成するレアアイテムか課金アイテムが必要になりますが、トワは普通にレアアイテムを使って装備ボーナスの書き換えを行っています。

レアアイテムと言っても今のトワのスキルレベルなら簡単に作れるレベルです。

なお素材がレアなため1つ作るのに相応の資金は必要になります。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る