123.ダンジョンアタック 準備
明けて日曜日。
俺は午前中にやらなきゃいけないことを終えてログイン。
オッドが工房で頑張って修練に励んでいたので一声かけてからクランホームを出る。
やってきたのはガンナーギルド。
マナカノン製作依頼をこなしてギルド貢献値を上げるためだ。
「いらっしゃいませトワ様。本日のご用件は?」
「マナカノン製造の依頼を受けに来たんだけどあるかな?」
「はい、大量にたまっています。最大で5件分50丁の作成ができますがいかがいたしますか?」
「最大数でお願いします」
ギルドの受付嬢にクエストを受けることを伝えて銃製造用の作業室へと通される。
俺はさっさとマナカノンの作成を始めて、1時間程度で50丁作成が完了する。
その後は受付に戻って作業終了の報告を行い、検品してもらった後クエスト終了となった。
ガンナーギルドのランクを14に上げる必要があるみたいだし、マナカノンの製造も出来る限り受けておかないといけないな。
ガンナーギルドで用事を済ませた後はワグアーツ師匠の家によって練習用素材を受け取る。
素材を受け取ったらスキル修練だが【魔力操作】の方は大分形になってきたと思う。
少なくとも最初の頃の無駄に大量の魔力が注ぎ込まれている感じはなくなった。
ただ、【気力操作】についてはまだまだ進歩が見えていない。
【魔力操作】は【魔石強化】で何となく感覚がわかるが、【気力操作】は似たようなスキルを覚えていないので未だに感覚がつかめない。
コップにバケツの水を大量にドバドバ注いでいるような感覚なのはわかるんだけど……
そんなこんなで今日も1日分の練習素材20セットを無駄にしてしまった。
【魔力操作】だけでも進捗が見られるだけマシというところか。
「あ、トワくん、こんにちは」
「ユキか。こんにちは。今日はどうする予定なんだ?」
「ランサーギルドに料理の納品に行ってきて、スキル練習用の素材をもらってきたところかな? だからこれから【魔力操作】と【気力操作】の練習だよ」
「ランサーギルドに料理の納品?」
「うん。何でも遠征や野外修練用の食料が足りてないんだって。それで指定された系列の料理を納品するとクエストクリアになるの。ギルド貢献値が高めだから結構お得なクエストだよ」
前にユキのギルドランクを聞いたときに意外と高かったのはこう言う理由があったのか。
「そう言えば、明日からダンジョン遠征だけどそっちの準備は大丈夫か?」
「うん、私は大丈夫。新しい装備をドワンさんに頼んでるから」
「それなら大丈夫か。俺は店売り用の商品と遠征用のポーションを作ってるよ」
「うんわかった。じゃあ、シリウスを貸してもらえるかな。あの子達用の新作料理があるから食べさせてみたいんだけど」
「はいはい、わかったよ」
俺はユキから一歩離れて眷属召喚でシリウス(幼体)を召喚する。
シリウスは俺に少し甘えるような仕草を見せた後、呼び出された用件がわかっているのかユキの元へと移動する。
ユキの方でもプロキオンを召喚しているのでフェンリルの幼体2匹にユキがじゃれつかれている状態だ。
そんな様子を眺めていたオッドが声をかけてくる。
「ユキ様はフェンリル達によくなつかれていますニャ」
「ああ、そうだな」
「ひょっとしてご主人様よりなつかれているのではないですかニャ?」
「さあ、知らないな。さあ、俺達も作業に戻るぞ」
この日は武闘大会でその有効性を示し、メッセージボードでも要望が多く売れ筋商品となりつつある高品質ライフルやマナカノンを始めとした銃種や、いつものポーションの作成で昼時間のログインは終了した。
なお、作成途中でドワンから魔石強化をいくつか依頼された。
―――――――――――――――――――――――――――――――
夜時間のログイン。
まずは昼間と同じようにマナカノンの製造クエストとスキル練習素材の調達から始める。
……3次職で超級職を目指すならマナカノンもどこかで自分用の物を作成して扱えるようにしないとな。
クランホームに戻ると俺以外のメンバーは勢揃いしていた。
どうやら明日からのダンジョンアタックに向けて新しい武器のお披露目をしていたようだ。
「あ、帰ってきたわね、トワ。ユキの武器を見てみなさいよ。なかなか渾身の出来よ?」
「そうじゃの。最高級素材を使える故に渾身の出来となったのう」
「攻撃力的に製造クリティカルも発生してるねー。これなら聖霊武器の素材としても文句ないよねー」
ユキが大事そうに抱えている一振りの薙刀に対して、それぞれ自分の感想を述べた。
「あの、トワくん。この武器で私の聖霊武器を作ってくれませんか?」
「ああ。ユキが構わないなら俺は一向に構わないぞ」
ちなみにユキの持っている薙刀のステータスはこれだ。
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退魔薙刀・細雪 ★11
メテオライトとミスリル金によって
作成された美しい薙刀
神聖属性の魔石で強化されているため
神聖属性の攻撃力を強化する特性がある
(製作者:ドワン)
装備ボーナスSTR+100
INT+70
ハードコーティング
攻撃属性:物理・神聖
神聖属性攻撃ボーナス中
ATK+375 MATK+150 STR+100 INT+70
耐久値:250/250
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それにしても珍しい神聖属性なんてよく用意できたな。
……ひょっとして、昼間に強化した魔石ってこれ用だったんだろうか。
「なあ、ドワン。昼間に俺がいくつか強化した魔石があったがこれに使ったのか?」
「そう言うことじゃの。ホーリーハーピーというそのまま使っても神聖属性として扱える魔石を用意できたのでな。それを強化してもらった」
「そんなモンスター聞いたことないけど、どこにいたんだ?」
「荒野エリアの奥地にある山岳地帯に出現するらしいのう。昼間はホーリーハーピー、夜はカースドハーピーになるらしい」
「カースドハーピーは呪属性?」
「わからん。市場に少量とはいえ出回っているのでな。お主の【魔石鑑定】で調べた方が早かろうよ」
「それもそうだ。後で調べてみるよ」
「ちなみにホーリーハーピーが神聖属性なのは、装備強化に使ったら神聖属性が付いたので話が広まったのう。おかげでこっちは元々の供給量が少ないのも手伝ってかなり品薄だ」
「そんな魔石よく手に入ったな、ユキ」
「そこは、ほら。お金の力で何とかしました」
まあ、ユキも俺と同じでお金を使わずに余らせているタイプだからな。
どこかで散財しないと色々問題が出るだろう。
「それで、この武器で聖霊武器を作るのには問題ないよね?」
「ああ、十分だ。それじゃあ工房で聖霊武器化してしまうか」
俺達は工房へと移動して手早く契約準備を整える。
さすがに4回目ともなれば手慣れた物だ。
早速、聖霊の器と武器、それから契約者であるユキをつなげるように魔力を循環させて聖霊武器の契約を行う。
その結果できたユキの聖霊武器はこのようになった。
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聖霊武器 退魔薙刀・細雪 ★* 聖霊Lv1
聖霊の力を宿した薙刀
元より宿していた神聖属性が
聖霊の力によりさらに強化された
装備ボーナスSTR+110
INT+80
ハードコーティング
攻撃属性:物理・神聖
神聖属性攻撃ボーナス大
ATK+390 MATK+175 STR+110 INT+80
耐久値:280/280
―――――――――――――――――――――――
「うわぁ、ありがとうトワくん!」
「ひとまずこれで聖霊武器は完成だな。他の皆は聖霊武器を作らないのか?」
「私はこれといってしっくりこなくてね……」
「わしもじゃの。自分で作るからこそだが一品物はこだわって作りたい」
「ボクも同じ感じかなー。やっぱり1つしか作れない武器はこだわりたいからねー」
「そっか。まあ、作るときは言ってくれ」
「了解。それで、明日からのダンジョンアタックは準備できたのかしら?」
「ボクは大丈夫かなー。念のためこの後矢を作り足しておくけどそれぐらいかな」
「わしも問題ないぞ。小型のメイスと大型のウォーハンマー、両方を新しく拵えたからのう」
「私の方も杖を新調したし、ユキも武器を新調した。憂いはなしね」
「そうだな。あとは各種ポーション類か」
「うん? ポーションまだ作ってなかったの?」
「普通のHPやMPを回復するポーションなら作ってあるよ。用意が足りてないのは状態異常対策のポーション。神聖魔術で回復出来るとは言え、ある程度持ち込んでおくに越したことはないからな」
「それって明日までに間に合うの?」
「材料は揃えてあるから平気。まあ、作るだけ作って使わずに終わる可能性が高いけどな」
「それならそれでいいじゃない。転ばぬ先の杖ってヤツよ」
まあ、ダンジョンに潜ってみてバステをもらって早々に退場しましたじゃ格好が付かないからな。
そうならないためにも状態異常回復ポーションはしっかり作っておかないと。
ユキの武器のお披露目が終わった後、俺以外の全員が訓練所で新しい武器の使い方を試すことにしたらしい。
連携の確認は明日にしてもおそらく問題は無いし、俺はポーション作りに専念させてもらおう。
こうしてダンジョンアタック前日の夜は更けていった。
さあ、明日からは墓地ダンジョンのダンジョンアタックだ!
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