119.ガンナーのジョブツリー 2
「やっぱり悩んでいるようね」
「やっぱり、という事はここに来ると大抵の人は悩むんですね?」
「ええ。下位のジョブで他にやりたかったことを見つけたり、上位のジョブでどれを選ぶべきか悩む人は多いわね」
「そう言う人はどうしてるんですか?」
「まあ、悩み抜いて決めてもらうしかないんだけど……あなたならさらに別の道を選ぶことができるはずよ」
「さらに別の道?」
「そう、超級ジョブなんて呼ばれているジョブね」
超級ジョブ。
それはβのときは名前だけあったジョブだ。
そこにたどり着くためには複数のジョブをマスターしなければならないと言う噂だった。
もちろん、β時代は未実装だったので噂でしかないのだが。
「あなたなら少なくとも2つの超級ジョブの道が示されているはずよ。確認してご覧なさい」
「えーと、とりあえずわかりました」
絞り込み検索機能があったため、『超級ジョブ』のみ表示するようにした。
……というか、正式名称なんだな『超級ジョブ』って。
絞り込み結果で表示されたジョブ数は5つ、うち3つは『???』だった。
残り2つは何らかの条件を満たしているのだろう、黒色だが内容を見ることができる。
表示されていたのは以下の2つだ。
―――――――――――――――――――――――
マスターガンナー
3次超級ジョブ
全ての銃種を極める道に進むガンナー
銃による全ての銃種に補正がつき銃ごとの
特性を活かした戦法を好む
転職条件
【銃】スキルレベル30
【ハンドガン】スキルレベル40以上
またはハンドガン武器熟練度100
【ライフル】スキルレベル40以上
またはライフル武器熟練度100
【マナカノン】スキルレベル40以上
またはマナカノン武器熟練度100
【マギマグナム】スキルレベル40以上
またはマギマグナム武器熟練度100
スキル【ホークアイ】所持
2次職を3種類以上マスターする
職業補正
HP:1.40
MP:1.70
ST:1.70
STR×1.20
DEX×1.30
INT×1.30
ハンドガン装備時の攻撃力に補正・中
ライフル装備時の手ぶれ・反動に補正・中
マナカノン装備時のクリティカル威力に補正・中
マギマグナム装備時の魔法攻撃力に補正・中
―――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――
魔弾
3次超級ジョブ
魔法系の銃種を極める道に進むガンナー
魔法系全ての銃種に補正がつき魔法系銃種ごとの
特性を活かした戦法を好む
転職条件
【銃】スキルレベル30
【マナカノン】スキルレベル40以上
またはマナカノン武器熟練度100
【マギマグナム】スキルレベル40以上
またはマギマグナム武器熟練度100
スキル【ホークアイ】所持
2次職を3種類以上マスターする
職業補正
HP:1.20
MP:2.20
ST:1.40
DEX×1.30
INT×1.40
マナカノン装備時のクリティカル威力に補正・大
マギマグナム装備時の魔法攻撃力に補正・大
―――――――――――――――――――――――
『マスターガンナー』の最終ジョブは『銃聖』だろう。
『魔弾』の方の最終ジョブは『魔弾の射手』かな?
さすがにこれ以上のジョブ内容は開示されていなかったので不明だ。
どちらにしても『超級』の名を冠するだけあって強力なジョブだ。
しかし、どうしてこれらの超級ジョブの詳細が確認できたのだろう。
「ジョブツリーの中で条件を表示できるジョブは、転職条件の中の1つ以上を満たしているジョブよ」
アリシアさんがそう告げてくる。
だが、少なくとも俺は【ホークアイ】なんてスキルは持っていないし、【マギマグナム】のスキルレベルだって30に届いていない。
だが、これの意味するところは……
「おそらく、あなたの武器熟練度が100を越えているからでしょうね」
俺の疑問を先読みしたのかアリシアさんが言う。
「あなたはかなりの数の武器を製造しているでしょう? 使うばかりが武器熟練度を上げる方法じゃないのよ?」
「そうは言われてもね……」
正直困惑してしまう。
「そうそう、これはさっき渡し忘れた物なんだけど」
そう言って手渡してくるのは1枚のプレート。
プレートにはガンナーの武器である4種の銃種のシンボルが掘られている。
「それ、各武器の熟練度がわかるマジックアイテムなのよ。『ウェポンチェッカー』って言うんだけどね。ギルドランク13で与えられるマジックアイテムね。正式にはガンナーギルド向けだから『ガンウェポンチェッカー』かしら」
「それで、どうやって使えばいいんですか?」
「簡単よ。それに魔力を通すの」
「えーと、つまり、こうかな」
『ガンウェポンチェッカー』とやらに魔力を込めてみる。
するとそれぞれのシンボルからゲージが伸び始める。
マナカノンを示すゲージは2割程度の長さで止まってしまったが。
ライフルは5割程度、マギマグナムとハンドガンについては端まで届いていた。
「やっぱりね。ハンドガンとマギマグナムの熟練度が100になってたのね」
「ハンドガンは長く使ってきましたけど、マギマグナムはそこまで長く使ってないような?」
「武器の作り方を知っていると意外と早く上がるものよ? あと、かなりハードな使い方してたんじゃないかしら?」
「ハードな使い方か……」
心当たりがないわけじゃない。
武闘大会の前に聖霊武器絡みで鉱山ダンジョンを攻略していたとき。
あの時に使っていたメイン武器はマギマグナムだった。
「一応ありますが、それだけでそんなに上がりますかね?」
「まあ、『ガンウェポンチェッカー』が十分な熟練度があると表示している以上はそうなんでしょう。実際、これは各種マスターを目指す人間の為に作られたマジックアイテムなんだから」
「つまり他の職種でも同じようなアイテムはあるんですね?」
「あるわよ。剣士だったら剣士用の、ランサーだったらランサー用のそれぞれの『ウェポンチェッカー』が存在しているわ」
「……それにしても、作った人間だと熟練度が上がりやすいとなると、職人が有利では?」
「まあね。職人の方が熟練度が上がりやすいことは確かだけど、ある一定ラインまでよ? それを越えるには、実際に戦場に出て戦うしかないわ。それもできれば自分よりも強い敵を相手にね」
やはり、最後は実戦に勝る経験は無しという事なのだろう。
実際、職人が『剣聖』だ、なんて名乗っても滑稽だろう。
相応に実力が無い限りは超級ジョブは扱いきれないのだ。
超級ジョブになったって超級スキルが使えるようになるわけでない。
超級スキルは超級スキルで、別にしっかりと覚える必要があるのだ。
どちらにしてもこれらの超級ジョブに就くには2次職を3つマスター、つまりレベルマックスにしなければいけない。
だが、確か転職する場合、元のジョブのレベルは1に戻るはずだが……
「あら、今度は何が引っ掛かっているのかしら?」
「転職条件に複数のジョブのマスターがありますけど、これってどうやるんですか?」
「確かに。普通に転職した場合は、最初から経験を積み直すことになるわね」
「なら、この条件を満たすことはできないんじゃ?」
「そこはギルドランク14まで上げてもらえればわかるわ。もちろん、戦闘系のギルドの場合だけどね。生産系のギルドの場合は生産系のギルドで聞いてね」
「……そうですか、わかりました。それじゃあ、これからも通って銃を製造していきますよ」
「そうしてもらえるとこちらとしても助かるわ」
いいように乗せられている気がするが仕方が無いだろう。
討伐系や納品系のクエストをやるよりも銃製造の方が俄然効率がいいのだ。
素材をギルドで用意してくれる上に、錬金術のスキルレベルを上げられる事も助かる。
さて、とりあえずは次の目標になる2つの2次ジョブの詳細を確認して帰るか。
―――――――――――――――――――――――
ハイマギガンナー
マギマグナムの扱いにさらに長けたガンナー
マギマグナムの特性を利用した戦法を得意とする
職業補正
HP:1.20
MP:1.65
ST:1.15
INT×1.30
マギマグナム攻撃時の魔法攻撃力に補正・中
―――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――
エンシェントガンナー
マギマグナムを魔法触媒として扱うことに長けたガンナー
マギマグナムから放たれる魔法を核とした戦法を得意とする
職業補正
HP:1.15
MP:1.75
ST:1.10
INT×1.30
マギマグナム攻撃時の魔法攻撃力に補正・小
魔法使用時の魔法攻撃力に補正・中
―――――――――――――――――――――――
まあ、転職に条件があるわけじゃないし、今日は転職後のジョブ詳細が知れただけでも十分か。
「ああ、そうそう。2次職以降の転職だけど、こちらの用意した課題をクリアしないと転職出来ないから気をつけてね」
「えっ……ちなみにどんな内容ですか?」
「何に転職するのかによって変わるけど、何になりたいのかしら?」
「ハイマギガンナーかエンシェントガンナーですね」
「それなら両方とも王都か第4の街近辺のダンジョンボスをどれか1体討伐ね。クエストを受けてからじゃないとボスを討伐しても無効だから気をつけてね」
「はい、わかりました。教えていただきありがとうございます」
「ええ、毎年クエスト受注を忘れて行く人が多くてね……本当に気をつけてね?」
俺は目の前に迫っていた2次ジョブへの転職に必要なクエストの存在を初めて知った。
……これは、対策しないといけないな。
ともかく、まずは生産系スキル練習のための素材を取りに行くところからだな……
こうして、俺はガンナーギルドを後にしてワグアーツ師匠の家へと向かうのだった。
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