118.ガンナーのジョブツリー 1

「まずは、ギルドランク13達成おめでとう」

「ありがとうございます」

「ギルドランク13、と言うか12ね。そこまで達した場合、ギルドから様々な特典が受けられることになっているわ」

「様々な特典ですか?」

「ええ、そうよ。とは言っても、あなたの場合、あまり意味のないものがほとんどなんだけれど……」


 意味がないってどうい事だ?


「まずはマギマグナムについての情報開示ね。これは既に覚えている以上意味はないわね」

「つまり本来なら12になってやっと情報が開示されると?」

「本来ならね。ただし、サザンが許可したなら例外よ。マギマグナムを開発したのは彼だしね」

「つまり、その辺の線引きは各ギルドマスターの裁量次第と?」

「身も蓋もないことを言えばね。それにサザンに会えても気に入られなければ教えてもらえない訳だし」

「なるほど……」

「あと、彼から【魔石鑑定】と【魔石強化】の2つのスキルをもらったでしょう。あれは、ガンナーギルドでは教えていないわ」

「つまりこの2つがほしければサザンさんに会いに行けと」

「そう言うことになるわね。会いに行っても紹介がなければ相手にしないだろうし、見込みがなければ教えてくれないと思うけどね」


 ふむ、なにげに重要な内容じゃないだろうか。

 とりあえずメモしておいて、今度教授に教えておこう。

 教授ならいいようにしてくれるだろう。


「マギマグナムについてはもういいかしら? 次にギルド内の販売所で買えるアイテムのグレードがアップするわ」

「そう言えば王都のガンナーギルドって販売所がありましたね」

「他の街じゃあ、規模が小さすぎて設置できないからね。主に銃や弾丸を取り扱っているのだけれど……あなたにはこれも必要がなさそうね」

「基本はマギマグナムと、それを基にした聖霊武器ですからね。ハンドガンやライフルも扱いますが、そちらはメインとは言えませんね」

「まあ、マギガンナーとしては正しいあり方じゃないかしら。マギマグナムの魔法増幅効果を使って戦うのがマギガンナーの基本だからね」


 まあ予想はしていたが、マギガンナーは銃で戦うよりも魔法で戦う事を考えた結果のジョブか。

 マギマグナム装備時に魔法攻撃力が上がるんだからある意味当然か。


「それからガンナーギルドから受けられる依頼のグレードもアップしてより高難易度なクエストも受けられるようになるけど……あなたは戦闘よりも錬金術士としてギルドに貢献しているものね。あまり意味がないかも知れないわね」

「そうなんですか?」

「基本的に追加されるのは高難易度のモンスターの魔石や素材、討伐などが主よ。あとは変わり種で、高品質な銃の納品依頼なんかもたまにあるけど……あまりお勧めはしないわね」

「理由を伺っても?」

「単純に市場価格よりも安く買いたたこうって連中しかいないからよ。あなただって自分の作った銃を安売りするつもりはないでしょう? 一応、正式な手順に則って依頼を出してきているから依頼として受理しているけど、それにすら値しないような中身よ。もちろん、ギルド貢献度もそんなに高くないわ。それに手を出すなら、ハンドガンかライフルを作ってもらった方がマシね」

「うん? ハンドガンやライフル作りが王都でできるんですか?」

「ええ、可能よ。あなたにはマナカノンを優先してもらいたかったから教えていなかったけど、王都のガンナーギルドでもハンドガンやライフルの製造依頼は出しているわ。人は集まってないけどね」


 そもそも、ハンドガンやライフルを作れる錬金術士やガンナーが少なすぎるからなあ。

 それは仕方が無いだろう。

 これも、教授から情報を流してもらうようにするか。


「後は……そうね、ガンナー系のジョブツリーが閲覧可能になるわ」

「ジョブツリー?」

「ええ、そうよ。そのジョブに就きたい場合、前提条件としてどのジョブを修めていないといけないか、あるいはどのようなスキルを持っていないといけないかがわかる資料よ」

「そんなのあったんだ……」

「まあ、異邦人は知らなくても仕方が無いわね。何せ各ギルドの機密事項でもあるのだから。ああ、それと閲覧できるのはあなたが就くことができそうなジョブのみになるわ。今、マギマグナム系の特化クラスであるあなたがハンドガン系の上位特殊クラスに就くことはできないからね。そう言った部分の情報は読み取れないわ」

「それだけでも十分にありがたいんですけどね……」

「あと、一部、ジョブツリーに出てこないジョブ系統もあるのよね……そう言ったジョブは、そのジョブに就いている人の個性が反映されてできたオリジナルジョブだと思えばいいわ」


 オリジナルジョブか、そんなのもあるんだな。

 ……というか、ユキの戦巫女ってオリジナルジョブじゃなかろうか?


「あら、その顔はなにか心当たりがありそうな顔ね」

「ええ、ランサー系で『戦巫女』ってジョブを知っていますか?」

「私はガンナーだからね、あまりランサーのジョブに詳しいわけじゃないんだけど……気になるならランサーギルドに確認してみましょうか?」

「ああ、そこまでしてもらうほどの事じゃないので」

「そう? なら聞かないけど、とにかくあなたはガンナーとしての可能性を知ることができるのよ」

「それってランク12になれば誰でも解放される物なんですか?」

「ええ、そうね。ランク12になれば開放されるわ」


 これもなかなか面白い情報だ。

 帰ったら教授に伝えねば。


「ひとまず、ランク上昇に伴う特典はこのようなところかしら。何か質問はある?」

「ジョブツリーって言うのを早速見てみたいんですけど構いませんか?」

「ええ、もちろん。受付に行ってジョブツリーの件を伝えてもらえれば案内させるわ」

「ありがとうございます。それじゃあ、俺はこれで失礼します」

「ええ、これからも頑張ってね」


 ギルドマスターの部屋を出て受付へと戻る。

 そこでジョブツリーの閲覧を申し出ると、別の部屋に案内された。


「ここがジョブツリーの確認を行う部屋になります」

「ここが? 見た限り石版が1枚おいてあるだけだが……」

「はい、その石版に手をかざしていただければトワ様のジョブツリーが表示される仕組みとなっております」

「なるほど……まあ、ものは試しだ。やって見るか」


 案内してくれた受付嬢の言う通り。石版の前に立ち左手をかざす。

 すると石版が光り始め、虚空に樹形図のようにジョブの一覧が表示される。

 ……確かにこれは『ジョブ』の『ツリー』だ。


 表示されるジョブの数は10個や20個じゃきかないほどの量が表示されている。

 その中でも、俺が取得出来そうなクラスは白色に、取得できないクラスは黒色に表示されていた。

 ただ、黒色のジョブもジョブ名が『???』になっていなければ条件などが表示されるらしい。


 例えば黒色で表示されている中にはこのようなジョブがある。


 ―――――――――――――――――――――――


 ガンフェンサー


 剣も扱えるガンナー


 銃による遠距離攻撃と剣による近距離攻撃

 双方を用いた戦法を得意とする


 転職条件

【剣】スキルレベル20以上

【銃】スキルレベル20以上


 職業補正


 HP:1.25

 MP:1.05

 ST:1.20


 STR×1.10

 DEX×1.10


 剣攻撃時の攻撃力に補正・微

 銃装備時の手ぶれに補正・微


 ―――――――――――――――――――――――


 ―――――――――――――――――――――――


 シールドガンナー


 盾を構えて護りを固めて攻撃するガンナー


 盾により攻撃を防ぎ反撃として銃で攻撃する

 戦法を得意とする


 転職条件

【盾】スキルレベル20以上

【銃】スキルレベル20以上


 職業補正


 HP:1.35

 MP:1.05

 ST:1.10


 VIT×1.10

 DEX×1.10


 盾防御時の衝撃軽減・微

 銃装備時の手ぶれに補正・微


 ―――――――――――――――――――――――


 そのほか、これらの上位に位置すると思われるジョブも存在しているが、『???』になっているため詳細はわからない。

 ちなみに、『ハンドガンシューター』などのジョブの条件も確認してみたが、【銃】レベル30以上かつ『その武器を扱った事があること』だった。

 条件としてはかなり優しい方だったらしい。


 下位のジョブばかり見ていても仕方が無いので、今現在のジョブ『マギガンナー』の上位ジョブを調べてみる。

『マギガンナー』の上位ジョブは2つ、『ハイマギガンナー』と『エンシェントガンナー』だった。


『ハイマギガンナー』は『マギガンナー』の正統強化盤。

『エンシェントガンナー』は『マギガンナー』をさらに魔術士よりにしたジョブだった。


 俺のイメージとしてはどちらのクラスも一長一短があって決めにくい。

 どうしたものか、と考えているとギルドマスターのアリシアさんが入ってきた。


 こんなところに何か用でもあったのかな?

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