67.GW1日目 ~魔導銃作成~
「あ、お帰りなさい、トワくん。……教授さんと一緒だったの?」
クランホームに戻った俺達を出迎えてくれたのはユキだった。
ちなみに、変装はしていない。
「ただいま、ユキ。……ちょっと教授に呼ばれててな」
「邪魔するのであるよ、ユキ君。なに、準備が終わればすぐに去るのである」
「そんなすぐには準備できないよ」
「急ぐのである。時は有限なのであるからな」
「そうは言われても、今の装備じゃきついからな。武器だけは更新させてもらう」
「……そう言えば、トワ君は種族レベルいくつなのかね?」
「……25だな」
「……それでは、さすがに深層はきついのであるなぁ」
「装備を調えれば何とかなるだろう? 殴られる前に魔法で殴る方式なら……」
「……フェンリル戦の焼き直しであるな」
仕方が無いだろう、相手のレベル30以上だからまともに戦ったらすぐに死ぬ。
「……そう言えば、何でマーケットボードと、出張販売所が談話室にあるんだ?」
周囲を見たときに、出かけるときは談話室になかったオブジェクトがあった。
「えっと、それは柚月さんが……」
「私達が使えないのにお店に置いておいても意味ないでしょう?」
そう言いながら、柚月が談話室に入ってきた。
後から、ドワンとイリスも続く。
「結局誰も出かけてないのか」
「お店側からは私達がいるかどうかなんてわからないしね」
「わしらのフレンド登録者は関係者ばかりじゃからのう。事前にメールで周知済みじゃ」
「あとは、一応オフライン設定にしてるねー。フレンド情報を」
「完全に
まあ、普段と大差ないと言えば大差ないけど。
「まあね。それにお得意様から武闘大会用の装備の注文がきてるからね。そっちも対応しなきゃだし。外に出てる余裕がないわ」
「そうじゃのう。わしはまだ余裕があるが……柚月はきつそうじゃのう」
「ボクも少し余裕があるかな? この辺は、抱えてるお客さんの数の差?」
「私はそう言う意味では暇ですね。装備品作れませんので」
四者四様の答えが返ってくる。
「それで、マーケットボードとかを移動した理由は?」
「さっきも言ったでしょう。私達が使えないならお店に置いておいても意味がない。なら。こっちにおけばいいじゃない」
まあ、そうだがな。
「おう、そうじゃ、トワ。朝もらってたメールの件、出来ておるぞ」
「あ、ボクも出来てるよー」
「お、そうか、なら間に合いそうだな」
「うん、なんの話かね?」
「俺の装備の素材の話」
「銃の部品かね。普段からそれなりにストックしてるのでは?」
「今日作りたかった武器は特別製だからな。普段のストックが使えないんだよ」
「ふむ、そうであるか。ならば私は少しここで待たせてもらうのである」
「あいよー。1時間以内には終わると思うから待ってて」
「あ、それならお茶入れますね、教授さん」
ユキがお茶の用意のために工房の方へと向かっていった。
さて、俺も今日のための装備作りしますか。
元々はレベル上げ用に作るつもりだったから、ちょうどよかった。
「入ってるところはいつもの共有倉庫?」
「他のところに仕舞ってもしょうがあるまい。わしのもイリスのもそこにあるぞい」
共有倉庫の中身を確認して、頼んでいた狩り用装備の素材が5セット分あることと、作成練習用のアイアン素材が多数あることを確認。
せっかくマーケットボードがそばにあるので、市場からとりあえず練習用のウルフ魔石を購入。
あと、狩り用には何を使おうかな……
ヒグマ系は芸がないし、王都越えた辺りの荒野にいるウルフ系でいくか。
どうやら、市場に出てる魔石に対しても【魔石鑑定】は有効なようで、出品されている魔石の詳細情報が確認できる。
……ふむ、ファングウルフは火属性、ニードルウルフは土属性、ブレードウルフが風属性か。
値段は大差ないし、普段よく使う風属性のブレードウルフにするか。
必要な魔石は揃ったので工房に戻って作業だな。
工房にはユキもいたので、ついでだから料理バフも使おう。
「あ、ユキ。MP回復上昇バフのある料理って何かある?」
「えーと、野菜ジュースかな。それでいい?」
「ああ、構わないよ」
「じゃあ……はい、これ。あまり無理しないでね」
「わかってるよ。それにこの後、狩りだしな」
「戦闘に行くの? それで教授さんと一緒だったんだ」
「まあ、成り行きでな。詳しいことが聞きたかったら教授に頼んでくれ」
「うんわかった。それじゃあ、お茶出してくるね」
ユキは談話室に戻っていったようだ。
さて、MP回復上昇バフもついたし、魔導銃作るか!
……
…………
………………
とりあえず、ウルフで30丁ほど作ってみた。
最高の出来だったのがこれだ。
―――――――――――――――――――――――
アイアンマギマグナム+(ウルフ) ★3
鉄の銃身とウルフの魔石からできた魔導銃
攻撃属性:無
着弾時衝撃上昇効果・小
装備ボーナスINT+4
MATK+30 INT+4
耐久値:100/100
―――――――――――――――――――――――
どうやら、魔石の魔力値を全て均一に揃えると+(プラス)付き装備になるらしい。
とりあえず、アイアンならウルフの魔石で壊れることはないようだ。
……まあ、3倍にしてもアカヒグマの魔力値に及ばないしな。
……問題は、頼んでいた部品、純ミスリル銀の銃身と機関部部品、それからマナウッドのグリップでどこまでの魔力値に耐えられるかだ。
1個無駄にする覚悟で作ってみるか。
とりあえず、ブレードウルフの魔石の中で魔力値の一番低い魔石は……67か。
じゃあ、その2.5倍ぐらいで合わせてみよう。
……【魔石強化】スキルのレベルが20まで上がって、めちゃくちゃ魔力値合わせやすくなってるしな。
……とりあえず魔石値170で揃えることが出来た。
あとはこれを合成して……出来たのがこれだ。
―――――――――――――――――――――――
ミスリルマギマグナム+(刃狼) ★4
ミスリルの銃身とブレードウルフの魔石からできた魔導銃
過剰な魔力が込められているため
脆くなっている
攻撃属性:風
風属性攻撃ボーナス小
装備ボーナスINT+20
MATK+250 INT+20
耐久値:50/50
―――――――――――――――――――――――
あ、これヤバイ奴だ。
そう思った瞬間、俺の体が強制転移させられるのを感じた。
――――――――――――――――――――――――――――――
「トワ様。【魔石強化】を利用してのカスタマイズは控えるようにお願いしておりましたよね?」
「あー、やっぱりアレヤバイ奴ですか」
「はい、魔改造の範囲です」
そう言うわけで、運営管理の隔離部屋に強制転送されたらしい。
「いやー、素材のランクを上げたから大丈夫かなと思って……」
「残念ながら、あのレベルの魔力値を扱うには、まだ素材の質が足りていません」
どうもそう言うことらしい。
「……まあ、こちらとして悪意を持って作成したわけでないことは理解しておりますが……」
「ちなみに、このバグって何が原因なんだ? それがわかれば避けられると思うんだけど」
「さすがにそれを教えるわけには……はい、はい!? わかりました、そういう指示でしたら……」
「何かありました?」
「室長から今回のバグについての詳細と回避策について、情報開示するように指示がありました」
「それはまた、太っ腹な決断で」
「そもそも、昨日トワ様達のところを訪れた際に説明するつもりだったみたいです。ただ、忘れてしまっていただけで……」
あの室長、ダメじゃないかな。
「とにかく情報を開示させていただきます。まずは……」
そこからは今回のバグが制作クリティカルの上限値設定漏れであること、制作クリティカルを出さないためには魔力値を全て揃えないこと、あと出来れば魔力値の上昇幅を2倍程度までに抑えてほしいことが告げられた。
それから、今回できた魔改造銃にも譲渡不可属性をつけるらしい。
他に使える人はいないだろうけど、念のための措置だそうな。
「……本当にお願いしますね? 5月1日のメンテナンス後でしたら製造クリティカルを出していても構いませんので……」
GMさんは本当に疲れているようだ。
「わかりました。今日のところはその条件で作ります」
「ご理解いただきありがとうございます。それでは元の場所にお送りいたします。……本当に頼みますね」
「了解。でもその条件を外してもクリティカルでたら責任持てないよ?」
「大丈夫です。魔石値2倍でしたらクリティカルがでても基準値ギリギリのはずですので……」
「……不安しかないけどわかりました。それじゃあ元の場所に戻してください」
「はい、かしこまりました。……願わくば、今日はもう会わないことを祈ります。それでは」
そして再び強制転移が行われて、俺は工房部に戻された。
……とりあえず、この危険物は個人倉庫の奥に封印かな。
そして、2倍なら大丈夫という話を聞いたので、魔力値2倍、130前後にしてみた。
で、できた結果はこれだ。
―――――――――――――――――――――――
ミスリルマギマグナム(刃狼) ★4
ミスリルの銃身とブレードウルフの魔石からできた魔導銃
高い魔力が込められているため
強力な銃になっている
また、全体的なバランスもよく
魔法触媒としても強力である
攻撃属性:風
風属性攻撃ボーナス小
装備ボーナスINT+25
MATK+120 INT+25
耐久値:130/130
―――――――――――――――――――――――
さっきよりもバランスがよくなっているな。
この調子で残りも作ってしまうか。
―――――――――――――――――――――――
ミスリルマギマグナム(刃狼) ★5
ミスリルの銃身とブレードウルフの魔石からできた魔導銃
高い魔力が込められているため
強力な銃になっている
また、全体的なバランスもよく
魔法触媒としても強力である
攻撃属性:風
風属性攻撃ボーナス小
装備ボーナスINT+35
MATK+140 INT+35
耐久値:140/140
―――――――――――――――――――――――
うん、★5品が出来た。
1丁だけだけど。
多分、中級錬金セットではここが限界なのだろう。
早く上級錬金セットがほしいな。
とりあえず商品鑑定してもらって戻るか。
そろそろ約束の1時間だ。
――――――――――――――――――――――――――――――
談話室に戻ると柚月以外の全員が残っていた。
「準備は出来たのかね」
「ああ、ちょっと待って。ドワン、『ハードコート』ってスキル使える?」
このゲームにおける『ミスリル』はファンタジーによくある硬い金属ではなく、銀の一種の扱いなのだ。
そのため、純ミスリル銀はかなり柔らかい。
『魔法触媒としては優秀だが打ち合うとすぐダメになる』というのが、このゲームにおける純ミスリル銀の認識だ。
「うむ、使えるが。新しい銃にかけてほしいのか?」
「ああ、純ミスリル銀って柔らかいからさ。念のためにね」
「わかった。銃を貸せ」
ドワンに作った魔導銃4丁を渡す。
「これが魔導銃か。今までのはオートマチックのハンドガンのような形状だったが、今度のはリボルバーのマグナム銃の形だな」
そう、魔導銃をデフォルトの形で作るとリボルバーマグナムに似た形になるのだ。
どちらかというと、
「ほれ、かけてやったぞ。それでだ、お主と教授は鉱山ダンジョンの深層に挑むのじゃったな。わしも連れて行け」
「あ、私も行きます」
ドワンとユキが同行を希望してきた。
「あー、教授?」
「心配はいらないのである。もう全員に事情は説明済みである」
「その上で連れて行っても構わないと?」
「トワ君と私の火力があれば問題ないのである。31階から先は、敵の同時出現数が減るのである。2人でも十分だったところに、もう2人増えるのであるからな。
「それなら問題ないか。俺とユキが神聖魔術使えるからな」
「そう言うわけである。2人の準備もすでに整っているのである。さあ、鉱山ダンジョンの深層に向かうのである」
「はいはい。でも30階からだと、すぐにロックゴーレム戦だけど大丈夫か?」
「問題ないのである。あの時とは火力が違うのであるからな」
少し心配だが問題ないか。
俺達『ライブラリ』の3人は『擬装の腕輪』を身につけて姿を変える。
「さて、それじゃあ鉱山ダンジョンの入口まで行きますか」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます