38.狼は銀月に吠える 3 ~パワーレベリング 2 ~
というわけで、今回はレベリング回です。
このときの行動が、後に色々なことの原因に……
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「ストーンゴーレムか、残念」
25階のボス部屋に入ったところで、白狼さんがそんなことつぶやいた。
「レアボスの方がよかったんですか?」
「ドロップ品がいいからね。『ロックゴーレムの魔核』はあると色々便利だから。強化枠を1つ潰してしまうけど」
へえ、白狼さんでも耐久力自動回復のお世話になることがあるのかな?
「さあ、こいつは早いところ倒してしまって次の階層に急ごう」
白狼さん達は速攻でロックゴーレムを攻撃しだした。
さすがにロックゴーレム程度では相手にならず、ほぼ消耗なしに切り抜けることができた。
俺とユキは遠距離から少しだけ魔法攻撃を行っただけだった。
そして1階層降りて地下26階。
今日の探索はここからが本番だ。
「それではここからは予定通り2人がメインで戦ってもらう。多すぎる分はこちらでしっかりと間引かせてもらうから安心してくれ」
「それじゃあそっちは頼りにしてますよ」
「ああ、それでは行こう」
こうして俺達の鉱山ダンジョン深層部探索が始まった。
出てくる敵は前の階層までのモンスターの純粋強化版に加え、ミニゴーレムやスケルトンと言った無機物系、あるいはアンデッド系モンスターが出現し始める。
これらのモンスターは、他のモンスターより一回り強いが、代わりに弱点を突けば大ダメージを与えることができるといった特徴がある。
ちなみにミニゴーレムは水属性が、スケルトンには光属性が有効だ。
26階に入って数戦こなしてみたが、俺達2人で同時に受け持てる相手の数は大体3匹までだった。
そのため、それ以上の敵が現れた場合、『白夜』のメンバーに間引きをしてもらっていた。
〈【水魔法】レベルが上がりました〉
〈【水魔法】が一定レベルに達しました。【海魔術】に進化可能です〉
26階に入って最初に上がったスキルは【水魔法】。
上位進化が可能になったのでさくっとSP3を支払って【海魔術】を入手。
これで【海魔術】の成長率は悪くなってしまうため、ミニゴーレムを相手にするときは別属性の魔法へと切り替える。
まずは、上位進化の近い【風魔法】を鍛えることにしよう。
〈【風魔法】レベルが上がりました〉
〈【風魔法】が一定レベルに達しました。【嵐魔術】に進化可能です〉
26階もそろそろ終わりそうな頃、2個目のスキル進化が可能となった。
今度は【風魔法】の強化版【嵐魔術】だ。
これもSP3を支払って早速取得。
〈【海魔術】【嵐魔術】を取得しました。条件を満たしたため【氷雪魔術】を取得可能になりました〉
お、複合属性魔術も覚えられるようになったか。
これもSP6を支払って覚えてしまおう。
そうこうしている間に地下への階段を見つけた。
小休止の間にスキルの確認をしていると、白狼さんが話しかけてきた。
「調子はどうだい、トワ君」
「上々と言ったところですかね。この階だけで【水魔法】と【風魔法】が進化。それからこの2つの魔法進化先の複合属性魔術を覚えることができましたよ。ユキの方はどうだった?」
「私も【槍】スキルが派生して【薙刀】になったよ。あと【鎧】が進化できるようになったけど、これはどうすればいいかな?」
「素直に【皮鎧】に派生でいいんじゃないか? ユキの装備って鎧としては皮鎧扱いだろう」
「それもそうだね。じゃあ【皮鎧】に進化させるね」
「ああ、それから【体力上昇】と【敏捷性上昇】はどうなってる?」
「【体力上昇】は進化できるようになってたから【体力上昇Ⅱ】に進化させたよ。【敏捷性上昇】は今、レベル29だからもうすぐ進化だね」
「そうか。魔法系統はどうなってる?」
「そっちはあまり進んでないかな……【回復魔法】がレベル24、【付与魔法】がレベル28、【光魔法】がレベル22、【風魔法】がレベル18かな」
「ユキさんは魔法も育てているんだね……なら、次の階層まではユキさんがタンクを務めて、そのあとは『白夜』のタンクが役割を受け持つよ。そうすればユキさんも後衛から魔法攻撃してもらえるからね」
「ありがとうございます。それではお言葉に甘えますね」
「うん、それがいい。それじゃあそろそろ行こうか」
白狼さんの号令に従い、俺達は次の階層へと進んでいく。
〈【回復魔法】レベルが上がりました〉
〈【回復魔法】が一定レベルに達しました。【治癒魔術】に進化可能です〉
次に進化可能になったのは【回復魔法】。
だがこれは別の統合進化先があるために進化を見送る。
〈【光魔法】レベルが上がりました〉
〈【光魔法】が一定レベルに達しました。【光輝魔術】に進化可能です〉
〈【光魔法】【回復魔法】が一定レベルに達しました。【神聖魔術】に統合可能です〉
27階も終わりに近づいてきたところで【光魔法】が進化可能になったというアナウンス。
そして【光魔法】と【回復魔法】が一定以上になったため、目的である【神聖魔術】へと進化させることが出来るようになったため、早速進化させてみる。
【神聖魔術】を覚えるためにSP8を支払う。
「ユキ、こっちは【回復魔法】と【光魔法】の進化終わったから、自己回復多めにしてもらって大丈夫だぞ」
「うん、わかったよ。それじゃあ、自分で回復するようにするね」
【回復魔法】にはセルフヒールという、自分自身しか回復出来ないが即時発動・固有クールタイムなしの魔法がある。
ユキもこれを使えるため、自力で回復しようと思えば一人でもそれなりに耐えられるのだ。
これによってユキの【回復魔法】スキルの成長速度も上がり、27階の階段にたどり着く頃にはレベル28までになっていた。
「うん、ユキさんも思ったより順調そうだね」
「はい、『白夜』の皆さんが支えてくれるおかげでレベル上げに専念できますので」
「それはよかった。上位メンバーを連れてきたかいがあるというものだよ。それで、次の階からはタンクを交代と言うことでよかったかな?」
「そうですね。ユキの魔法スキルも鍛えておきたいですしお願いできますか」
「うん、任されたよ。2人は安心してスキル上げに専念してくれ。あ、でもうちのタンクへの回復は忘れないでくれよ」
「わかってますって……それじゃあ行きましょうか」
28階層からはレッサーゾンビという敵も追加になった。
こいつも光属性に弱いため、ユキの【光魔法】の経験値にちょうどいい相手だった。
〈【火魔法】レベルが上がりました〉
〈【火魔法】が一定レベルに達しました。【炎魔術】に進化可能です〉
お、俺の最後の未進化魔法スキルも進化できるようになったみたいだ。
すぐに【炎魔術】に進化させよう。
〈【炎魔術】【嵐魔術】を取得しました。条件を満たしたため【雷鳴魔術】を取得可能になりました〉
条件を満たしたので複合属性魔術も取得。
合計でSP9支払ったが、魔法系は優先させて覚えておく。
「白狼さん、俺の魔法スキルが全部進化終わりました。なので、ここからは物理攻撃に切り替えますね」
「了解したよ。とは言っても、君は
「あ、俺は【格闘】も持っているので接近戦もしますよ。無理そうでしたら諦めますが」
「……ガンナーが接近戦もするのか……そういえば君は【爆撃機】だったね。すっかり忘れてたよ」
そういうわけで俺は前衛火力としてこの先は戦った。
……やっぱり後ろから仲間の攻撃が飛んでくる状況っていうのは、たまに慣らしておかないとダメだな。
こうして28階の攻略も順調に進み、階段にたどり着いたときには【銃Lv29】【格闘Lv25】まで上がっていた。
「やっぱりこのダンジョンは未進化スキル、というよりスキルレベル30までならすぐに育っていくね」
「やっぱりこのダンジョンには何か仕掛けがあるんですね?」
「ああ。もっとも、僕達も教授から聞いた話なんだけどね……」
いわく、このダンジョンでは種族レベルや職業レベルが上がらない代わり、スキルレベルが極端に上がりやすくなっているらしい。
特にその階層以下のスキルレベルのスキルはぐんぐん育つとのこと。
階層をスキルレベルが越えていても+5程度の差までなら、かなり効率よく育つらしい。
つまり、このダンジョンは30階までなので、がんばればスキルレベル35相当までなら育てられる、と言う事だ。
もっとも、種族レベルや職業レベルが上がらないため、相対的にステータス不足になりやすく、実際にはそこまでおいしく狩れないとのこと。
俺達がここまで効率よく成長できているのは、ひとえに『白夜』のサポートのおかげというわけだ。
うん、完璧なパワーレベリングだな。
「……まあ、君達のプレイヤースキルも高いからこそ、ここまで効率よく行ってるんだけどね」
「そうですか? ……よし、回復アイテムの分配も終わったし行きましょうか」
ここに来てMPポーションの消費が激しくなってきた。
ユキが魔法スキルを重点的に鍛えているためだ。
元々そんなにMPの高い種族ではないし、BPもタンク向けに割り振っているはずだ。
そのため、MPポーションで回復する機会が多くなってしまっている。
「……せめて【魔力回復上昇】を取れていればなぁ」
初期スキル選択で【魔力回復上昇】を選択する枠がなかったことが悔やまれる。
「うん? トワ君は【魔力回復上昇】がほしいのかい?」
どうやら俺のつぶやきが聞こえてしまったようだ。
「ええ、俺じゃなくユキ用ですけど。ユキに初期スキルで【魔力回復上昇】を取らせる余裕がなかったもので」
「そういうことなら僕達がスキルブックを譲っても構わないよ。王都周辺のボス周回していれば時々落ちるから、確かいくつか在庫が残ってたはずだ」
「それじゃあ、戻ったら1つ売ってもらえますか」
「わかった、相場が10万Eから15万E当たりだから10万Eで売るよ」
「ありがとうございます。それではよろしくお願いします」
意外なところから手に入れることができたぞ。
前から買おう買おうとは思っていたけど、なかなか手頃な値段では売りに出てなかったからなぁ。
10万Eだと即売れ、20万Eを超えると売れ残りってところかな。
この機会にユキの魔法方面も鍛えておこう。
〈【銃】レベルが上がりました〉
〈【銃】が一定レベルに達しました。派生技能取得が可能です〉
〈【格闘】レベルが上がりました〉
〈【格闘】が一定レベルに達しました。派生技能取得が可能です〉
その後、30階の最深部、ボス部屋前までに物理スキルも派生技能取得可能なレベルまで育った。
戦闘系スキルは『派生進化』ではなく『派生技能取得』になる。
この差は、派生元となったスキルが上位スキルに統合されるか、そのまま残るかという差だ。
なお、『派生進化』で上位スキルに統合された場合でも、進化前のスキルは当然使用できる。
【格闘】は投げ技や関節技などにも補正がつく【体術】スキルを取得した。
だが、【銃】スキルについては派生先が1つしか表示されておらず、それ以外が「???」表示だったために取得を見送った。
ユキの方も大量のMPポーションと引き替えに、無事、上位魔術スキルを手に入れることができた。
進化先は俺と同じ、【嵐魔術】と【神聖魔術】だ。
【付与魔法】も【付与魔術】に進化している。
「無事、1周ですべてのスキルを進化できたようだね」
「はい、ありがとうございました」
「いやいや、気にしなくてもいいよ。僕達もかなりの量の鉱石を獲得できてホクホクなんだから。正直、もう1周ぐらいお願いしたいぐらいだ」
「ああ、PT効果による生産品の品質上昇ってやつですか」
「そうだね。僕達だけで潜ってもここまでの品質のものは入手できないから本当に助かるよ」
「それならこのあと、もう1周本当に行きますか? 時間は大丈夫ですし、全員で殲滅戦をすればかなり早く回れるはずですし。ユキは時間大丈夫か?」
「うん、私もあと1周ぐらいなら平気だよ」
「そうか、ならもう1周お願いしよう。もっとも、その前に例のスキルブックは渡すけどね」
「ありがとうございます。それじゃあさくっとボスを倒してしまって、次に行きましょうか」
30階のボス、通常であればそれはロックゴーレムなのだが……
「なんでレアボスのアイアンゴーレムがいるんでしょうね……」
「これが物欲センサーってものだろう。とにかく、倒してしまおう」
アイアンゴーレムは全力を出した全員の攻撃によってあえなく消えていった。
なお、ドロップはほとんどが鉄鉱石か魔石だったのに対して、ユキが『アイアンゴーレムの魔核』を手に入れたのだった。
ボスを倒して脱出後、白狼さんは一度クランホームに戻り【魔力回復上昇】のスキルブックを持ってきてくれたので買い取った。
このスキルブックをユキに使ってもらい、【魔力回復上昇】スキルを覚えたあと、2周目の深層攻略を行った。
2周目は『白夜』のメンバーも全員攻撃に参加する形となったため、1周目の半分程度の時間で終了した。
なお、2周目は25階、30階ともにボスとしてロックゴーレムが出たが、『ロックゴーレムの魔核』がドロップしたのは俺とユキの2人だけだったのには苦笑いするしかなかった。
**********
いつもお読みいただきありがとうございます。
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作者のモチベーションアップにつながります。
~あとがきのあとがき~
パワーレベリングには賛否両論あると思いますが、自分は否定的な立場ですね。
PTでの立ち回りやスキル回しがレベリング中には身に付かないですから。
もちろん、セカンドキャラでやる分には構わないと思います。
この件は荒れそうな気がするので、ご意見等はなしでお願いします。
あと、魔法スキルの進化が色々出てきているので簡単にまとめ。
基本魔法
火魔法→炎魔術
水魔法→海魔術
風魔法→嵐魔術
土魔法→地魔術
光魔法→光輝魔術
闇魔法→暗黒魔術
回復魔法→治癒魔術
呪魔法→邪魔術
進化前が『魔法』、進化後が『魔術』なのは仕様です。
(ただし、プレイヤーからはひとまとめに『魔法』と呼ばれることが多い)
進化前の魔法は進化後も使えます。
複合属性魔術
炎+嵐→雷鳴魔術
炎+地→溶岩魔術
海+嵐→氷雪魔術
海+地→濁流魔術
光輝(光MAX)+治癒(回復MAX)→神聖魔術
暗黒(闇MAX)+邪(呪MAX)→死滅魔術
神聖魔術および死滅魔術を覚えた場合は光輝・治癒、暗黒・邪はそれぞれ統合されて使えなくなります。
(神聖魔術および死滅魔術がそれぞれ元の魔術を完全にカバーしている訳ではない)
それ以外の複合魔術は覚えても元の属性が消えるわけではありません。
今現在トワが覚えていない属性については、今のところ新しく覚えさせる予定はありません。
魔法はその性質上、覚えれば覚えただけ全体の威力向上につながるのですがSP管理が追いつかなくなります。
ホント、こんなめんどくさい設定考えたの誰だ……()
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