34.金曜日の学校 ~あるいは愚か者の末路~

 本日1話目の投稿

 今回は読み手にとっては非常に不快に思うかも知れません。

 それでも構わない方はどうぞお読みください。


 嫌な方は35話で今回のあらすじを前書きに書いてあるのでそちらをお読みください。

 あらすじだけ読んでもらえれば今回の内容を無理に読む必要はあまりないです。

 それではよろしくお願いします。





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 この物語はフィクションです。

 この物語はフィクションです。


 大事なことなので2度言いました。

 現実でこんな人、いませんよね?


 それから最初は三人称視点、後半はいつもの悠から見た一人称視点です。


 **********



「チクショウ、どうして俺がこんな目に……」


 彼はありていに言えば、どこにでもいる普通の少年であった。

 趣味がネットゲームMMORPGというのも、この時代では珍しいものではない。

 どんなジャンルのゲームをするか、どの媒体を使って遊ぶかなどの差はあれど、『ゲームが趣味』というぐらいなら大して珍しくはない。


 彼はゲームの中では、そこそこにできる方だった。

 どんなゲームに置いてもボリュームゾーンと呼ばれるいわゆる中間的なプレイヤー達より、常に一段階上の立場にいた。

 簡単にいってしまえば、プレイヤーとしては『わりと』上手な方だったのだ。


 そう、あくまで『わりと』上手なだけであって『すごく』上手なわけではない。

 100人いれば30番から40番ぐらいになる、その程度であったのだ。


 彼はそれでも良かった。

 全体を見ればその程度でしかなくとも、それだけの腕前があれば十分周りの賞賛を受けられたからだ。


 しかし、彼の周りに人が集まることはなかった。

 理由は単純、彼は自己中心的で我が儘が過ぎる性格だったのだ。


 彼はいろいろなゲームを渡り歩いた。

 そのゲームで毎回そこそこの実力をつけ、だがその性格が災いして友人や仲間とよべるものは一度もできなかった。

 彼に協調性というものが少しでも備わっていれば、また違った形でそこにいられたかもしれない。


 彼はある日『Unlimited World』というゲームのことを知った。

 そして運良くβテストの参加権を入手できた。


 βテストの中でも彼はそこそこの実力を示すことができた。

 だが、そこでも彼に仲間とよべる相手はいなかった。


 そして『Unlimited World』の正式サービスが始まったとき、彼はいつも通りにそこそこの実力を見せつけた。

 βテストの時の知識を活かし、ワイルドドッグを狩りレベルを上げ、次はウルフを狩りレベルを上げる。

 そして、第2の街を目指す臨時PTの募集にのり、キラーマンティスを倒して第2の街にたどり着いた。


 第2の街にたどり着いたあと、彼は臨時PTのリーダーだった男から「クランに参加しないか」と誘いを受けた。

 彼の戦闘技術が気に入ったらしい。

 彼は二つ返事でその男の所属するクランへの参加を決めた。

 そのクランの名前は『漆黒の獣』と言う。



 そのクランは、はっきり言ってしまえば似たもの同士の集まりだった。

 彼のように、周りとなじむことのできない、だがプレイヤーとしての腕前は高い人間達、そんなクランである。


 彼らの腕前はそれなりにではあるが高く、そこそこまでは『攻略組』とよべる位置にいた。

 しかし、協調性に欠ける人間が多い彼らを支援してくれる人間など次第に少なくなり、第4の街へと最前線が移る頃、彼らはすでについて行けなくなっていた。


 そして彼らは考えた、なぜ自分達は最前線にいられなくなったのか。

 答えはすぐに出た、装備やアイテムの質が悪いからだ、と。


 彼らはすぐに行動を起こした。

 生産系クランに接触し、に加えようとしたのだ。

 そのような要求は当然決裂したが、彼らはしつこく要求し続けた。


 また、同時に新人勧誘にも手を伸ばした。

 その新人達を鍛えて生産者として使ばいいと考えたからだ。

 その勧誘は、時に強引な手段に出てでも行われた。


 こうして彼らは周囲より『悪質なクラン』として目をつけられるようになっていった。



 彼は新人勧誘を担当することになっていた。

 だが、彼の強引な勧誘では人は誰一人として集まらなかった。


 なので彼は手段を変えることにした。

 ゲームの中で集められないなら、現実の知り合いで同じゲームをやっている人間を集めればいい、と。

 自分にはβプレイヤーという実績があるのだから、簡単に人を集められるだろうと高をくくっていたのだ。

 しかし、蓋を開けてみれば結局一人も集めることはできなかった。



 仕方が無いため、またゲーム内で勧誘をするか、と考え街中を仲間と歩いていたとき、目の前を知り合いクラスメイトのプレイヤーが歩いているのを見かけた。

 彼はすぐにその知り合いを呼び止め、自分達と一緒に次の街を目指そうと声をかけた。

 最初こそ渋られたが、結局は彼女達と一緒に行くことになった。



 その後の事は、彼はあまり覚えていなかった。


 第3の街に向かう途中で彼女達が逃げ出した。

 そのあとを追いかけて仲間と一緒に彼女達が逃げられないように周りを取り囲み、改めて仲間に誘った。

 途中で見知らぬプレイヤーが割り込んできて邪魔をした。

 その後、いきなり視界が暗転し強制ログアウトを受けた。


 再ログインしようとしてもエラーとなり、しばらくすると運営からメールが届いた。

 『ハラスメント行為による利用規約違反として6週間のアカウント停止とする』という内容だった。

 運営に問い合わせたが、取り合ってはもらえなかった。



 そこまでが昨日までのこと。

 学校に行ったときに事件があって自宅謹慎にされてしまったが、彼にとってはたいした問題ではなかった。

 事態が大きく動いたのは、UW運営から発表された処分内容だった。


【クラン『漆黒の獣』および悪質な行為を行っていたプレイヤーの処分について】


 内容を確認すると、『漆黒の獣』は多くの問題行動が認められたため管理者権限によって強制解散となったこと。

 そして、一部の特に悪質な行為を行っていたプレイヤーについてはアカウント凍結処分とすることが書かれていた。

 アカウント凍結処分になったプレイヤー名は公表されており、その中には彼の名もあった。


 彼は運営に問い合わせたが『正式な決定であり覆ることはない』という答えが返ってきただけだった。


 ――許せない


 彼はそんな衝動に身を任せて行動を始め、外に出て――


「君、こんな時間に何をしてるのかね」


 を身につけた男達に絡まれた。


「うるさい! お前達には関係ないだろう!!」


 彼は隠し持っていたカバンを振り回して男達に襲いかかり――



 警察に補導された。



 ――――――――――――――――――――――――――――――



『と言うわけで、君の言っていた彼は今我々の元にいるから安心してほしい』

「あなたたちのお世話になっている時点ですでに安心できないんですけどねぇ」

『それは確かに。だがこれで彼の件について気をもむ必要はなくなったろう?』

「何もなければそれが最善だったんですけどねぇ」

『ああ、そうだな。彼も訳のわからない供述を繰り返してるばかりらしいしな』

「先に断っておきますけど、今回の一件、俺は何もしていないですからね」

『ああ、それは理解しているよ。ただ、君から注意しておくように言われていて実際に見回りをさせてみれば、と言う奴だ。我々としても君を疑わざるを得ないのだよ。もっとも、君には完璧なアリバイがあるわけだが』

「ついでに言えば電話とかでも接触はできませんよ。彼の連絡先なんて一切知らないし」

『わかっているよ、と言うか、もう調べは済んでいるよ。まったく、空恐ろしい話だ』

「そう言われましてもね。まあ、こちらとしては一つやっかいごとが減った程度にしか思えませんが」

『そうだろうな。ともかく無辜の市民を守るは我々のつとめだ。悪いようにはしないさ』

「よろしくお願いしますね。それじゃ」


 俺は必要な事を聞けたので電話を終えた。

 しかし、台所から包丁を持ちだして外を歩くとか、本当に頭大丈夫だろうか。

 そんなの普通に捕まるに決まっているのに。


 電話を終えたら自分の席に戻った。


「悠くん、何の電話だったの?」

「んー、知り合いの人からの電話。たいしたことじゃないよ」

「そう? ならいいんだけど」


 周りを見回してみると片桐と鈴原がいたので彼女達には伝えておこうかな。

 多分、今回の件の当事者の一人だし。


「おーい、片桐、鈴原。ちょっといい?」

「あら、あなたの方から私達に話しかけるなんて珍しいわね。それで何かしら」

「園田の事覚えてる?」

「……いや、さすがに覚えてるけど」

「園田が警察に公務執行妨害と傷害未遂で捕まったらしいから教えておこうかと思って」

「「はい?」」

「うん、それだけだから。それじゃ」

「いや、待ちなさいよ。どうしてそんなことになってるのよ」

「さあ? 今取り調べている最中らしいよ」

「どうしてあなたがそんなこと知ってるのよ」

「警察の知り合いに聞いた」

「……わかったわ、これ以上聞かないことにする」

「うん、そうしてもらえると答える手間が減って助かる。それじゃ」


 ……今日はこのあと職員会議だろうなあ。

 大変そうだな、山神先生。


 **********


 いつもお読みいただきありがとうございます。

「面白かった」「これからも頑張れ」など思っていただけましたらフォローや評価をお願いします。

 作者のモチベーションアップにつながります。


 本話の内容は色々批判も浴びそうですがこのまま通します。

 これでも『この話はさすがにない』と考えて修正するかどうかギリギリまで悩みました。

 その上でこう言う話の内容になっているのは作者の構成力と表現力の問題ですね。


 ~あとがきのあとがき~


 三人称視点とか書いたことないので上手くかけているかとても不安です。

 もし、知らず知らずに一人称視点が混じっていてもご容赦を。

 ついでに、そのような場所があったら指摘してもらえると嬉しいです。


 それから園田某君はこれにて完全退場となります。

 名前自体はたまに出てくるかもですが、本人は一切出てきません。

 むしろ、完全に退場してもらわないとリアルパートで余計な話を書かなきゃならなくなります。

 そのための強制退場であり、後先考えずにキャラを作った作者の問題です。

 あと、某(なにがし)と名前を呼んでいますが設定上ではちゃんとフルネームを考えています。

 ただ、悠がフルネームを覚えているのは違うだろ、と言う事で園田某という扱いになりました。


 あと、悠と電話をしていた相手は悠の伯父さんに当たる人です。

 今後も話に出てくるかどうかはリアルパートの進行次第と言ったところでしょうか。

 リアルパート方面については結構行き当たりばったりに作っている側面があります。

 なので今回のような非現実的な力業に頼らなくちゃいけないこともしばしば……

 まあ、悠が警察ともつながりを持っている事を示すには良いタイミングでしたが。


 それから、園田某君の行動を考えるのに普段の倍近い時間を使ってしまいました……

 自分にはいわゆるザマァ系の作品は書けそうにないです。

 この手の自己中悪役の行動原理とか考えてもまったく浮かびませんでした。


 あと、園田某氏の行動はこれでもマイルドにした方です。

 初期原稿では台所から包丁を持ちだしていましたので()


 他人に見せる気のなかった頃の原稿って好き勝ってやってて恐い()

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