14.妹達との合流

 ログアウトした俺は、キッチンに向かい朝食の準備を始める。

 朝食は簡単にトーストと目玉焼き、それに野菜ジュースだ。


「おはよー、お兄ちゃん」


 午前8時頃、遥華が起き出してきた。


「おはよう遥華。朝食の用意はすぐできるから、とりあえず顔でも洗ってこい」

「はーい」


 ゆるいやりとりをしながら朝食となり、朝食を食べ終わった後は自然とUWの話題になる。


「お兄ちゃん、今日の予定はどうなってるの? あとわたし達の装備は?」

「今日は9時からログイン予定。あとお前達全員分の装備はできあがってるから受け取りにこい。あと、ブロンズブレストアーマーの★4品があるから8kでよければ売るぞ」

「8kか武器と合わせて13k。ならわたしは買おうかな。他の皆はログインしてから聞いてみるよ」

「ああ、そうしてくれ。じゃあ、朝食の後片付けは任せたぞ」

「はーい。ログインしたらすぐに装備の受け取りに行くから待っててねー」


 朝食の後片付けを遥華に任せた俺は、再度UWにログインした。



 ――――――――――――――――――――――――――――――



 ログイン時刻は現実時間で8時30分頃。

 待ち合わせまではゲーム内時間で1時間ほどあるので生産スペースを1時間だけ借り、残りの薬草をポーションに調合する作業を行っていく。

 途中でユキも合流したので、ユキ用の装備品一式を渡し、キリのいいところで作業を切り上げて商品鑑定を行ってもらい、自分達の分を残して作ったポーションを市場に流していく。


「商品鑑定かぁ、そういえばそんなシステムもあったよね。忘れてたよ」


 隣ではユキも自分が作った料理の鑑定をしてもらっている。

 ユキの料理も鑑定が終わったら市場へと流す予定だ。


 だが問題になったのは、ユキの知識不足から来る市場価格の設定の甘さだった。

 最初、ウルフの焼き肉が★1で100Eで売られているのを見たらしく、自分の★3の料理を500Eで売ろうとしていたのだ。

 さすがにそれは俺が介入して止め、試しに1500Eで出品してみたが、1分かからずに売れたらしい。


 そのため、販売価格を2000Eから2500Eの2種類を設定して、今日は様子見。

 バフ効果がかかった★4の料理については強気の10000Eを設定することにした。


 ちなみにユキの作った料理には作成者を表す『銘』が設定されていたが、それは消してから売ることにした。


『お兄ちゃん、ログインしたよ。いまどこー』


 現実時間で午前9時になる頃、ハルからのフレンドチャットが飛んできた。


『生産ギルドの中だ。生産ギルド前の広場で合流しよう』

『りょうかーい。すぐに向かうね』


 ユキの方でもリクから連絡があったようなので、同じく生産ギルド前の広場で合流するように伝えてもらう。

 俺達は、生産ギルドを出てすぐ目の前の広場でハル達の到着を待っていると、5分とかからずにハル達がやってきた。


「おまたせー、お兄ちゃん。さっきぶりー」

「おひさしぶりです、えと……こちらではトワさんですね。サリーです、よろしくお願いします」

「トワさん、おひさしぶりー。カリナだよー」

「ああ、皆よろしくな」


 三者三様の挨拶を受けた後、ユキの方でも3人と挨拶と自己紹介を行っていく。


「それで、お兄ちゃん。装備の方はどうなってるの?」

「ちょっと待て、いまトレードするから……ほれ、こんな感じだ」


 ハル用の装備をトレード申請で送る。


「お兄ちゃん……まだサービス開始2日目午前なのにこんな装備作れちゃうんだ……」

「えっと、すごいですね……」

「ボク達の装備もこんな感じなの……?」

「うわ、市場に出品されてる同等品質の装備だと値段が30kになってるよ……」

「あくまで、ハル達は身内価格ってことになってるからな。今回は素材にも余裕があったから、この値段だな。次からはもっと高くなると思えよ」

「りょーかい。さぁ、お兄ちゃんの気が変わらないうちに早いところトレードをすませちゃおう」


 そう言って早々にトレードをすませる3人。

 ちなみに全員ブレストアーマーも購入してくれた。

 昨日のうちにこれらが買える程度には金策もできていたようだ。

 ……なお、今回の装備を買ったおかげで、また金欠になったらしいのはお約束だろう。


 その後、5人で現在の状況を確認しあっていると、リクが合流してきた。


「お待たせ。トワ、さっさと品物を出せ。ああ、ブレストアーマーも買うぞ」

「せわしないな。ほれ、リクの分の装備だ」


 初心者装備のままだったリクに装備をトレードすると、すぐさま装備を変えるリク。

 そんなに急いで何かこのあと予定でもあるんだろうか。


「なんだか急いでるようだけど、このあと予定でも入ってるのか?」

「いや、まだ予定はない。でも、急いで準備すればいいPTパーティ募集に乗れるかもしれないだろ?」


 ふむ、どうやらリクもこれからの予定は入っていないみたいだ。

 どうせならこのメンバーでパーティを組んで……


「ねぇねぇ、この後の予定がまだ決まってないなら、ここにいるみんなでPT組んで狩りに行かない?」


 どうやらハルも同じ事を考えていたらしく、そのような提案をしてくる。


「このメンバーでか……うん、バランスも取れてるみたいだしありだな。あえて言うなら、純魔職がいないのが不安か」

「この辺りで狩れるモンスターなんて、物理も魔法も関係ないから問題ないだろ。あと、狩りが終わったら集まった素材買い取るぞ」

「っていうことは、採取もしながらって事か。まあ、今から募集して行くよりも効率的か。それに全員装備の更新済んでる見たいだしな」

「俺とユキは、昨日も初心者装備のままウルフ狩りしてたからな。そう考えれば、効率よくサクサク狩れるだろ」


 そう、このメンバーに渡したブロンズ装備があれば、ウルフなんて目じゃない。

 むしろ、ウルフの上位種にあたるグレイウルフ辺りが、今日の狙い目だと思っている。


「それじゃPT申請送るから、今日の午前中はこのメンバーで北の森で狩りだな」


 パーティを組み終わった俺達は、一度冒険者ギルドにより北の森関係のクエストとあともう1つ追加でクエストを受け、北の森へと向かうのだった。



 ――――――――――――――――――――――――――――――



「いやー、PTが強いとホントにタンクとしては楽ができていいな!」


 そんなことをリクが言いだすぐらいにはウルフ狩りは楽だった。

 全員の装備が強化されているため、2発程度で誰でもウルフを倒せてしまうのだ。


 タンクをリクに任せている分、ユキも攻撃に専念できるし、リクの攻撃力も申し分ない。

 俺のINTも着実に上がり、まだレベルの低い【火魔法】スキルでも十分な攻撃力が出せてしまっている。


 そういうわけで、ウルフ狩りは30分程度で切り上げて上位のグレイウルフの縄張りまで来たのだが、実質的な難易度はあまり上がらなかった。

 敵を倒すまで2発で終わっていたのが3発ぐらい必要になったぐらいで、動きもウルフと比べてあまり目立った差はなく、むしろ体が一回り大きくなったため、こちらの攻撃が当たりやすくなったりもしていた。

 タンク役のリクも、特に危なげなく敵をさばいていた。


 戦闘を10時過ぎまでこなした頃には全員の種族レベルが13から14に達していたので、俺はある提案を持ちかける。


「それじゃ、そろそろエリアボスのキラーマンティス行ってみようか」


 俺はそう唐突に今日の本題を切り出した。


 **********


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