11.ウルフ狩り

 初戦闘回です(チュートリアル除く)


 ただ、敵も(トワ基準で)弱いのであっさりと流します。


 **********



 冒険者ギルドのクエスト掲示板でウルフ討伐を含め、北の森で達成出来るクエストを受けた俺達は、始まりの街の外に出て北の森へと歩いていた。


「ウルフが主に生息してるのが、森の中なんだよね」

「ああ、ウルフは街周辺の森に生息してる代表的なモンスターだな」


 北の森に向かう途中の平原では、多くのプレイヤー達がモンスターを追いかけ回していた。

 正直、初心者装備セットでは、ウルフの相手は危険だからな。

 よほどの自信がある人間か、あるいは無鉄砲なバカかしか北の森までは足を伸ばさない。


 そうなると、街の周囲に広がる平原とそこに存在するモンスター達が主な狩り場となる。

 似たような装備のプレイヤー達が、草原の周囲に群がっているのが見て取れる。


 ちなみに俺はβテスト特典で手に入れた『βアバター装備セット』を開封して、βテストの時に使用していた服に変わっている。

 もっとも、これは『アバター装備』という見せかけだけの重ね着みたいなもので防御力などは一切ない。

 とはいえβテスト時の装備品は見た目にもこだわってデザインされているので、他の初心者装備のプレイヤーからすれば目立つだろう。


 それらの中にも自分と同じように見た目が違うプレイヤーが混じっていたりもする。

 おそらく自分と同じようにβプレイヤーで装備を引き継いだプレイヤーだろう。


「なんだか人が一杯だよね」

「サービス開始当初はそんなものさ。さあ早いとこ北の森まで行こう」


 俺達は足早に平原の中を森へと歩いていった。



 ――――――――――――――――――――――――――――――



「ここが北の森……」


 人であふれかえっていた平原とは異なり、森の中は静まりかえっていた。

 北の森はβテストの時では推奨レベル7からという事になっていた場所なので、それを考えると自分達にはまだ格上の場所だ。

 ただ、デスペナでアイテムやお金のロストがないこのゲームでは、推奨レベルより少し低いぐらいが戦いがいがあってちょうどいい。


「さあ、これからの予定を説明するぞ。まあ、基本的には【気配察知】で敵の居場所を見つけながらのサーチ&デストロイになるが、最初は少数で固まっているウルフから仕留めていこう」

「わかったよ。あと、採取ポイントがあったらどうするの」

「採取ポイントは積極的に取っていこう。ここまで来れば他の人もほとんどいないし、採取中にモンスターから攻撃を受けないようにだけ注意してれば問題ない」

「うん、それじゃあ始めようか」


 早速、【気配察知】で見つけたウルフ2匹の元へ向かう。

 ウルフはリンクして集団で襲いかかってくるため、少人数だと負けることが多い。

 だが、少数の群れを見つけて引きつけるやり方であれば十分に対処出来る。

 さて、見つけたウルフ2匹に先制攻撃でも仕掛けてみますかね。


「行くぞ、ウィンドカッター」


 風属性の速さ重視の魔法を一発撃ちこんでみる。

 すると、


「ギャウン!!」


 ウィンドカッター1発でウルフのHPバーが砕け散った。

 えー、威力上がりすぎじゃないかな……


「グルル……」


 2匹目のウルフがこちらを警戒し始めたので、


「アクアバレット」

「ギャウン」


 お、こっちはHP半分ほど削ったところで止まったな。

 やっぱり風属性強化の効果が高いことがわかる。


「えーと、ユキ」

「うん、後は任せて!」


 体勢を崩したウルフにユキが突っこんでいきとどめを刺す。

 ライトボールからの二段突きで十分倒せる程度の威力が出てるな。


「トワくん、一度にもっとたくさんが相手でも問題ないと思うよ」

「そうだな、とりあえず段階的に増やしていこうか」


 微妙に締まらない感じで俺達のウルフ狩りは幕を開けた。



 ――――――――――――――――――――――――――――――



「これでとどめ、ライトストーム!!」


 あの後、数時間におよぶ狩りの結果、俺達の種族Lvが10にまで上がっていた。

 Lv10になったのがかなり前なので、改めて経験値バーを確認してみると、次のレベルアップ目前であった。


 なお、銃弾についてはある程度減ったら『弾丸作成』スキルで木の枝を木の弾に加工して使用していた。


「いやぁ、我ながらかなり早いペースでレベルあげてるなぁ」

「そうだね、でもちょっと物足りないかな」


 段階を踏んで一度に戦うウルフの数を調整した結果、5匹までなら問題なく処理出来るようになった。

 気付かれないようにファーストアタックをとり続けた結果、【奇襲】と【隠密】スキルを獲得してしまった。

 【奇襲】は相手の意識外から攻撃したときにダメージが増加するスキル、【隠密】は自分の気配を薄くして相手に気付かれにくくなるスキルだ。

 俺は着実にスカウト方面のスキルを伸ばしていっているらしい。


 ユキの方も、【祝福】で効果の増した【光魔法】を中心に【槍】や【鎧】スキルのレベルが着実に上がっていた。

 【鎧】スキルは適度にダメージを負わないとレベル自体が上がらないのだが、自分で【回復魔法】や【付与魔法】の使えるユキはその2つを上手に使って、最小ダメージでやり過ごすようにしている。

 【回復魔法】は俺の方でも使えるので、上手くダメージコントロールしながら戦ってきたのがここまでの戦果だ。

 ちなみに、回復アイテムの補充や食事はセーフティーエリアで調合や料理を行いすませていた。


「いやー、結構レベル上がったね、トワくん」

「そうだな。でもそろそろ時間だし戻ろうか」

「え、ああ、もうこんな時間なんだ」


 今のゲーム内時刻は午後8時、ゲーム時間は現実の2倍に引き延ばされているため、現実時間では午後4時となる。

 俺達は【夜目】スキルがあるのであまり気にならないが、森の中はほぼ真っ暗である。

 結構、森の奥の方まで進んでしまっているため、今から街に引き返せば夕飯の準備にちょうどいい時間になるだろう。


「ゲームも楽しいけどリアルも大事だよね。帰ろう、トワくん」

「ああ、そうだな。まあ、帰り道も倒しながら行くことにはなるんだけど」


 帰り道も道中にいたモンスターをすべて倒しながら進んだ結果、Lv11になり、ウルフの討伐数は100匹の大台を超えていた。


「それじゃあ、トワくん。また後でね」

「ああ、また後で」


 冒険者ギルドでクエストの清算を終わらせた後、街の南側にある広場で午後8時頃に合流する約束をして別れた。

 そしてログアウトする前に妹に『6時頃に晩ご飯にする』とだけメールを書いて送り、ログアウトした。



 ――――――――――――――――――――――――――――――



「「いただきます」」


 ちゃんと午後6時頃にログアウトしてリビングにやってきた妹と晩ご飯を食べることにする。

 話題はやはりUWの事となっていた。


「それでお兄ちゃんはいまどんな感じ?」

「今種族レベル11まで上げたところ」

「ずいぶん早くない?」

「雪音とウルフ狩りがんばったからな」

「ああ……かわいそうなウルフさん」


「それでそっちはどうなんだ」

「サリーとカリナと合流してまずは装備を更新、その後、ワイルドドック狩りしてたかな。晩ご飯食べた後は、ウルフに挑もうかって予定になってるよ」

「結局、遥華もウルフ狩りに手を出すんじゃないか」

「だって必要な事だもん」


 二人で話をしていると、不意に遥華からこんな言葉が出てきた。


「あ、そういえばわたし【火精霊の加護】って称号手に入れたんだ。お兄ちゃんも似たような称号持ってるでしょ」

「持ってることは断定なんだな。ああ、風精霊のやつを持ってるよ」

「やっぱり、お兄ちゃんも持ってたかー。陸斗さんも【土精霊の加護】を手に入れてたし、ひょっとして雪姉も持ってる?」

「ああ、雪音も光精霊のやつを持ってるよ。詳しく聞きたければ本人に直接聞いてくれ」

「えー、どうせお兄ちゃんと一緒にいるんだから、お兄ちゃんから聞いても一緒じゃない」

「とにかく、親しい間柄とはいえ他プレイヤーの詳しい情報を聞くのはマナー違反だぞ」

「はーい」


 ゲーム関連の話をしながらの夕食も終わり、後片付けをしていると


「お兄ちゃん、この後の予定ってどうなってるの?」


 と声がかかる。


「んー、雪音と合流してクランメンバーと合流かな。早めに生産職としてレベルあげたいし」

「やっぱり『ライブラリ』も合流かー。ねえ、今から装備の発注ってできるかな?」

「それは本人に聞いてみないとわからないな。しばらくは鍛冶レベル上げに専念だろうし、できてもよほどのことがなければ市場に流して終わりじゃないかな」

「うーん、やっぱりそうかー。あ、でも発注できるかどうかだけは聞いておいてね」

「はいはい。それじゃ先にお風呂入らせてもらうぞ」


 その後、寝る支度を調えた俺は改めてログインしたのだった。


 **********


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