10.スキル取得方法とスキルブック

 スキル取得方法についての説明回です。


 退屈かもしれませんがご容赦のほどを。


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 あれよあれよという間に、これから覚えるスキル群が決まってしまった。


 具体的に2人ともに覚えるスキルは、【気配察知】【夜目】【光魔法】【隠蔽】【魔力感知】だ。

 【隠蔽】は相手の看破からステータスを表示させないようにするためのスキルで、このままではいずれ悪目立ちする可能性もあるから受け取っておけとのこと。

 【魔力感知】は名前の通り周囲の魔力の流れや魔力のある場所などを識別できるスキルで、【気配察知】と組み合わせることでより強力な索敵能力を発揮出来るから早めに覚えろと決められた。


 ユキだけが覚えるスキルは【挑発】1つのみで様子を見ることとなった。

 ユキはこの手のゲームについては初心者程度と言うこともあり、手札の数を増やしても上手く扱いきれないだろうと言う判断だ。


 対して俺は、上記スキルに【看破】【罠発見】【罠解除】【罠作成】【火魔法】が追加と、全部で10種類も覚える事になってしまった。


 教授いわく『君ならこの程度のスキルは必要に応じて使い分けられるであろう』とのこと。

 確かに、使い分け程度ならできそうだが、初心者にありがちな『スキルを覚えすぎて器用貧乏』になりかねない。

 特に罠関係のスキルはフィールドではあまり使用機会がなく、主な使用場所がダンジョンになるためスキルを育てる機会があまりないのが痛い。


 まあ、このゲームはスキル取得数に制限はなく、スキルを覚えただけでもわずかに強くなれるから、方針としては間違っていないんだけどさ。


「ふむ、覚えるスキルはこんな所か。始まりの街だけではなく、第2の街まで行ければ提供出来るスキルの種類も増えるはずなのだがね」

「あの、さすがにもらいすぎなんじゃ……」

「その点については心配いらんよ。高いと言っても値段がはるのは魔法系ぐらいで、それ以外は数千E程度でしかないからね。正直、まだ情報の価値と釣り合いが取れていないぐらいだ。さすがにこれ以上の分については、素直に借りと言うことにさせてもらうがね」


 恐縮しているユキに対し、教授は軽く答えを返す。

 実際、俺にもここまでの価値があるとは思ってなかったんだけどなぁ。

 最初に提示したスキル分程度の価値はあると思っていたけど、まさかここまで高く買ってもらえるとは。


「あ、そういえば、このゲームでスキルを覚える方法って、このスキルブックというのを使うしかないんですか?」

「あー、そういえばユキにこのゲームのスキル取得方法は説明していなかったなあ」


「ふむ、それではその点についても説明しようか。まず、このゲームでスキルを覚える方法は大きく分けて3種類ある。まず1つめは、SPつまりスキルポイントを消費して覚える方法だ。だがこれはSPという限られたポイントを使ってしまうため、あまりお勧めしないな。なにせSPはスキルを上位進化や派生させるためにも使用するからな」


「スキルの上位進化や派生ですか?」

「うむ。スキルは一定レベルまで鍛えると、それ以上上がらなくなるが、そういったスキルはより上位のスキルや、別のスキルとの組み合わせで別の上位のスキルとなる事がある。それが、上位進化と派生だな」

「なるほど、わかりました。ありがとうごさいます」


「スキルを覚える2つめの方法だが、普段の行動で覚えると言うものだな。これは、例えば【剣】スキルであれば、素振りをしたり剣を使って敵と戦ったりしていればそのうち覚えるというやつだ。一般的なスキル取得方法はこれになるな。欠点は、魔法のような現実には存在しないものは覚えにくい事と、覚えるまでに個人差があると言うことだ」

「身も蓋もない言い方をすれば、個人のセンスで覚えやすいものが決まってしまうってところだな」


「そして最後の3つめの取得方法が、これから使おうとしている『スキルブック』だ。これを使えば、そのスキルが確実に覚えられるからな。欠点は、覚えにくいスキル群はダンジョンの報酬でしか手に入らなかったり、モンスターのレアドロップだったりと入手方法が限られてくるため、どうしても高くなってしまうと言うことだろう」


 こうして教授によるスキル取得方法の講義が終了した。

 これについては、事前にスキル取得方法を教え忘れていた俺の問題だな。


「さて、スキル取得方法もわかったところで、早速だがスキルブックを買いに行くとしようか」

「そうだな、これ以上情報交換する事もなさそうだし行こう」

「うん、わかった」


 俺達は教授に連れられて冒険者ギルドを後にする。

 教授が向かった先は、大通りから少し外れたところに建っている少し小さめの店だ。


「こんな所にスキル屋があったとはな。てっきり街の大通り沿いかと思ってた」

「大通り沿いの店にあるスキル屋は、もうろくな商品が残ってないという話だな。先ほどクランメンバーを向かわせたが、実際に売り切れの商品が目立っているとのことだ」

「それで、さっき言っていたスキルはこの店でもそろうのか?」

「うむ。もちろんそろうぞ。むしろ、ここで手に入るスキルを提示していたのだからな」


 そう言って店の中に入る教授のあとを追い、俺達も店の中に入っていく。

 そこには店主らしき、まだ若めの青年が店番をしていた。


「邪魔をさせてもらうよ。マルコム殿」

「いらっしゃいませ。教授さん。後ろのお二人はお連れの方ですか?」

「うむ、私の連れでトワ君とユキ君だ。こちらは雑貨屋店主のマルコム殿だ」


 俺達とマルコムさんはお互いに軽く自己紹介をする。

 店内は雑貨屋と言うだけあって様々な商品が並べられていた。


「あ、これ初級調合セットだ」


 並べられている商品の中に初心者セットよりも1段階上の調合セットを見つけた。

 そのほかにも錬金や料理用の初級セットも店に並べられていた。


 生産ギルドなどに用意されている生産スペースに行けば同等のものが使用出来るが、ここは新しい生産セット類をすべて購入しておく。

 こうすることで、野外などでも生産活動が可能になる。

 そしてスキルブックの一覧を眺めていると、その中に【道具作成】のスキルブックがあったのでそれも購入した。

 ユキの方でも料理に使う調味料関係がいくつか手に入ったようで満足げだ。


「ふむ、それではまた来るよ。店主殿」


 買い物を終えた俺達は雑貨屋を後にする。

 教授が購入したスキルブック類は、一度俺が全部受け取り、ユキに彼女用のものを渡すという形にした。


「ふむ、先ほどの店の会計はすべて私持ちでもよかったのであるがな」

「さすがに自分達の生産活動で使う道具は自分達でそろえるよ」


 そのようなやりとりをしながら、次の目的地である魔法学校を目指した。

 魔法関係のスキルブックはここで取り扱っているらしい。


 魔法学校でも雑貨屋と同じように自己紹介から始め、教授が今回購入するスキルブックを購入していく。

 さすがに魔法学校の方では、教授が購入する分以外で俺達が欲しいようなものは取り扱っていなかった。


 その後、教授にお願いして大通り沿いのスキルショップにも案内してもらったが、やはりそこの品揃えには売り切れの商品が目立っていた。

 特に汎用性の高いスキルは値段が高めなのにもかかわらず、ほぼ売り切れていた。

 魔法学校でも回復魔法のスキルブックは売り切れていたあたり、需要のあるスキルは値段に関係なく売れていると言うことだろう。


「さて、今回の取引はこれで終了であるな」


 所変わって、改めて冒険者ギルドに戻ってきた俺達3人は、ギルドに併設されている酒場で買った商品の受け渡しをしていた。


「ありがとう、教授。思ったよりも簡単にスキルがそろって助かったよ」


 そう、スキル屋ではほとんどの有力商品は買い占められた後だったため、自力で雑貨屋を探そうとするとそれだけで数時間かかりそうだった。

 やはり情報というのはそれだけで価値があるものなのだ。


「こちらこそ有力な情報をもらって助かるのである。……まあ、今回の分だけで貸し借りなしとは行かないので、今後も何か情報が欲しければ遠慮なく連絡してもらいたいものだ。もちろん提供する側でも構わないぞ」

「そうそう有力情報なんて手に入らないよ。多分、今後は情報を聞く側にまわるだろうさ」

「トワ君は情報を提供する側になりそうな気がするのは、私の勘なのであるがな」


 妙に俺のことを買ってくれている教授とのアイテムトレードを終え、ユキに彼女の分のアイテムを渡す。


「あれ、トワくん、スキルブックって本じゃないの?」

「ああ、スキルブックって名前だけど、実物は金属製のプレートなんだ。これに魔力を通す、という設定で、このアイテムを使おうと思えば自動でスキルが覚えられるんだ」


 そう言いながら、インベントリから自分用のスキルブックを1つ取りだし使用してみせる。


〈スキル【火魔法】を取得しました〉


 システムメッセージが表示され、スキル一覧にも【火魔法】が追加される。

 その様子を見ていたユキが自分用のスキルブックを使用し始めたので、俺も残りのスキルブックを使用し始める。


【気配察知】【夜目】【光魔法】【隠蔽】【魔力感知】【看破】【罠発見】【罠解除】【罠作成】【道具作成】が、俺のスキル一覧に追加された。


「ふむ、スキルの取得も問題なくできたようだね。それではこれで失礼させてもらうよ」

「ああ、助かったよ教授。それじゃあまたな」

「ありがとうございました。教授さん」

「うむ。礼にはおよばんよ。私としてもスキルブックが問題なく使えることが確認できた訳だしな。ところで、これから君達はどうするのかね?」

「うーん、俺のクランメンバーはまだログインしてきてないし、とりあえず生産素材集めついでの狩りにでもいってくるよ。レベル的にウルフ辺りがおいしいかなと思ってる」

「ウルフは初期装備ではまだまだきついと思うのだがね。まあ、君達なら大したことはないのだろう。それではまたな」


 そう言い残して教授は去って行った。

 さて、俺達もクエストを受けてウルフ狩りと行こうか。


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 誤字・脱字の指摘、感想等ありましたらよろしくお願いします。



 ~あとがきのあとがき~


 今後、本編中でスキル取得方法の話が出るかわからないので補足説明を。

 例えば【剣】スキルですが、剣をもって素振りをしていれば、そのうち取得出来ます。

 素振りの回数は素振り仕方が上手ければ上手いほど、少ない回数で取得出来ます。

 それはもう、10回ぐらいで覚えられる人だっているほどに。


 逆にヘタな人向けの救済策として最大試行回数制も取り入れられています。

 条件は厳しいですが一定回数以上、同じ行為を繰り返せばスキルを取得出来ます。

 具体的な話をすると【剣】スキルなら素振り1000回などですね。


 あと、魔法をスキルブックなしに自力で覚えようとした場合、自分で魔法のイメージを作りそれを発動させなければなりません。

 βの時はオリジナル呪文を唱えて練習してる人もいた、と言う設定です。

 オリジナル呪文を唱えるって、傍から見てると普通にイタイ人ですよね。

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