7.冒険者ギルドに行こう

 冒険者ギルドに向かいます。


 向かうだけで、テンプレはないですよ。


 **********



「それでね、私のチュートリアル担当になった精霊さん、シャイナちゃんって言うんだけど、最後にお話始めたら止まらなくなっちゃって。トワくんのメールが来るまでそんなに長い時間話してたって気付かなくってね……」

「いや、もういいからわかった。あまり長い時間待ってた訳じゃないからホントに気にしてないぞ」

「そう? でもトワくんを待たせたのは事実だし、ゴメンね」


 無事ユキと合流出来た俺は、チュートリアルクエストの行き先でもある『冒険者ギルド』に向かっている。

 その途中、歩きながらさっき遅れた理由を説明されているのだ。


 待ち合わせに遅れたりした場合、過剰に謝り倒してくるのがユキ……雪音の癖である。


 本人もかなりまじめな性格で、集合時間に遅れたりすることは滅多にないし、遅れても数分程度である。

 遅れたのが数分であっても、まるで数時間遅れたかのように謝ってくるのがいつもの事なのだ。


 今回のことは、時間をキッチリ決めていたわけでもないし、何より俺の方でもエアリルとそれなりの時間話していた。


 そういう意味では逆の立場になっていた可能性も高いし、謝られるような事でもない。

 それでも謝ってくるのがユキなのだ。


 ちなみに、逆の立場になった場合、ユキはまったく気にしない。

 一言二言謝ったらそれで終わりにしてしまう。

 むしろ数分程度の遅れで謝ると、逆に謝られてしまうのだ。


 そういうある種いびつな関係は今後正していかなければいけない課題だが、今は気持ちを切り替えてユキが謝るのを止めるのが先だ。


「俺の方でも担当だったエアリルと結構長く話してたし、今回の件はおあいこってことでもういいだろ。いつまでもこうしてるわけにもいかないしさ」

「あっ、うん、そうだよね。ゴメンねトワくん」


 最後に小さく謝られて今回の件は終わりとなった。

 そして、話は次の話題へと移る。


「ところで、トワくんはなんて称号手に入れたの? 私は『光精霊の祝福』だったけど」


 そう称号の話題だ。

 称号システムはβテストの時からあったが、確認された称号は少ない。

 そして、βテストで確認された称号の中に『加護』や『祝福』というものはなかった。


 そういった情報を集めて公開していたクランがβテスト時にあって、ユキを待ってる間に昔のつながりで確認をとったが『そのような称号は確認されていない』という回答だった。


「俺の称号は『風精霊の祝福』だな。おそらく、ユキの称号の風属性版だ」

「そっかー。『祝福』って部分ではおそろいだね」


 こういった『おそろい』と言った部分を見つけては喜ぶのもユキの特徴と言える。

 正直、恥ずかしい気持ちもあるがこのような部分まで否定するのはよくないので、基本あまり気にしないようにしている。


「とりあえずステータスを確認して詳細を見てみるか」

「うん、そうしよう」


 さすがに道を歩きながらステータスを確認するのは危ないので、道の端によってステータスウィンドウを開く。



 名前:トワ 種族:狐獣人 種族Lv.5

 職業:メイン:見習い銃士Lv.5

    サブ:見習い錬金術士Lv.1

 HP:34/34 MP:64/64 ST:39/39

 STR: 2 VIT: 4 DEX: 7

 AGI: 9 INT:12 MND:10

 BP:14 SP:14

 スキル:

 戦闘:

【銃Lv5】【格闘Lv3】

 魔法:

【魔力Lv5】【水魔法Lv5】【風魔法Lv5】【回復魔法Lv2】【魔力回復上昇Lv3】

 生産:

【錬金Lv1】【調合Lv1】【生産Lv1】

 その他:

 なし

 特殊:

【AGI上昇効果・中】【風属性効果上昇・中】【風属性耐性・中】

 称号:

【初心者講習免許皆伝】【風精霊の祝福】



 ……なんだか知らない称号とスキルが増えてる……

 とりあえず【初心者講習免許皆伝】の方から詳細を確認することに。


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【初心者講習免許皆伝】

 チュートリアルでウルフ師範を30分以内に封殺した証

 戦闘についてあなたはもう初心者ではない


 BPボーナス:6 SPボーナス:6


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 ……ああ、なるほど、チュートリアルでウルフと戦っていた間に手に入れてたんだな。

 正直、スキルレベルやら種族レベルやらが色々上がるので、ログ見てなかった。

 BPボーナスポイント6とSPスキルポイント6は、開始直後では結構大きい。


 ただ、説明文に『封殺』ってあるからノーダメージ撃破が条件だろう。

『30分以内』という条件も合わせると、かなり厳しい条件になる。

 その30分を外でモンスター狩りするのとどっちがおいしいか、と言う話になってしまうな。


 さて次は本命の【風精霊の祝福】だ。


 ―――――――――――――――――――――――


【風精霊の祝福】

 風の精霊に連なるものと友誼を結び祝福を受けた証

 その身は風に乗り、風の祝福を得るだろう


 スキル【AGI上昇効果・中】

    【風属性効果上昇・中】

    【風属性耐性・中】


 ―――――――――――――――――――――――


 うん、こっちの称号の方がやばかった。


 【AGI上昇効果・中】は、現在のAGIを1.2倍に割合強化するスキル。

 残り2つは風属性魔法の強化と耐性だな。


 本来なら『加護』と言っていたし、きっと与えられるのは『効果・小』や『属性・小』だったのだろう。

 今の段階なら誤差の範囲だが、この先成長していけば十分な効果が期待できるはずだ。


 エアリルめ、さらっと爆弾を落としていってくれた。

 これどうしたものかな……


 隣りにいるユキの表情を見ると、ニコニコ笑顔だった。

 ……多分、この称号効果の大きさわかってないんだろうなぁ。

 こういうときはゲーム知識の少なさがうらやましい。


 何か口に出す前にユキにパーティ申請を送る。

 申請の承認はすぐなされ、ユキにパーティチャットで話しかける。


「……なんだかたいそうな称号だったみたいだが、ユキの方はどうだった?」

「えっと、説明するより見てもらった方が早そうだから、トワくんにも見えるようにするね」


 そうして見せてもらった称号の詳細は、俺の称号よりもある意味やばかった。


 ―――――――――――――――――――――――


【光精霊の祝福】

 光の精霊に連なるものと友誼を結び祝福を受けた証

 その身は光の力をおび、光の祝福を得るだろう


 スキル【MND上昇効果・中】

    【光属性効果上昇・小】

    【光属性耐性・中】

    【闇属性耐性・小】


 ―――――――――――――――――――――――


 MND上昇、つまり魔法防御と状態異常耐性上昇に光属性と闇属性に対する耐性。

 タンク職にとって、鬼門になりやすい魔法防御上昇は大きいな。

 ガチタンク職にとっては特に欲しい称号だろう。


「……ユキ、この称号の内容については他の誰にも見せないようにな……」

「え? うん、わかった」


 この効果内容は絶対にこちらから明かさないようにしておこう。

 無価値なやっかみが絶対に頻発する。


「よくわからないんだけど盾やるには便利なんだよね、魔法防御が上がるのって」

「ああ、それに状態異常耐性も上がるから、盾には無理してでも手に入れたいスキルだな」

「……ああ、それで他の人に教えちゃいけないんだね。わかったよ」


 こういうときはユキの聡明さがありがたい。

 何も知らない初心者が自慢してまわったら、嫉妬の嵐がひどいだろうからな。


「……でもハルちゃんとリクには教えてもいいよね?」

「……まあ、リクもタンク志望だからうらやましがられるだろうけどな」

「リクならうらやましがっても、それで終わりだから平気だよ。実際、何もできないし」

「確かにそうだけどなぁ……」


 哀れなのは、姉弟のヒエラルキーと言ったところか。


「それよりもトワくん、そろそろ冒険者ギルドに行こうよ」

「……ああ、最初の目的はそれだったな」


 称号のインパクトが大きくて、正直、目的を忘れてたよ。




 ―――――――――――――――――――――――――――――――




「さて、ここが目的地の冒険者ギルドなわけだが」

「混んでるね~」


 冒険者ギルド前に到着した俺達ではあったが、目前の様子を見て立ち止まっていた。

 さすがサービス開始当日の午後と言った感じの光景が目の前で繰り広げられていた。


「PT募集! こちら物理アタッカー2!」

「ヒーラー様どこかにいらっしゃいませんかー」

「HP回復ポーション募集中。値段は応相談で」

「どこかにカワイコちゃんいませんか!」


 うん、最後はおかしいがおおよそ予想通りの募集合戦だ。

 聞こえてくる内容から言ってヒーラーが不足してるのかな。

 まあ、俺達はしばらく2人PTで行動する予定だから参加するつもりは一切ないが。


「賑やかだね~。活気があってうらやましいな」

「ユキが普段するゲームはこう言う集まりはないのか?」

「うーん、MMOって基本やらないから。対戦でもテーブルゲームぐらいしか普段1人じゃやらないし」

「それならこの状況はあまり慣れてないよな」


 ちなみにβテストの時も初日はこんな感じだった。

 良くも悪くもオープン当初の活気は程度の差こそあれ、大手ならどこも同じようなものだろう。


 まあ、俺達の目的は募集にのることでも、募集することでもないので、ここはさっさとギルド内に入ってしまおう。


「さて、冒険者ギルドに入るか」

「うん。でも、これだと中も混んでるんじゃない?」

「ああ、それは平気だよ。まあ、入ってみればわかるから行こう」


 **********


 誤字・脱字の指摘、感想等ありましたらよろしくお願いします。



 ~あとがきのあとがき~



 トワの【風精霊の祝福】で【土属性耐性・小】が手に入っていないのには理由があります。


 火・風・闇の精霊は比較的攻撃的な精霊にため、防御性能が低いからです。

 逆に水・土・光は防御的な精霊のため、反発する種類の攻撃から身を守ることもできます。

 つまり、後者の精霊と友誼を結び『加護』や『祝福』受けると逆属性の耐性も手に入ります。


 これがトワの耐性スキルが少ない理由となります。


 あと、各精霊と上昇するステータスの一覧表です。

 本編中には出てくる予定が今のないためここに掲載します。


 火精霊:STR強化

 水精霊:DEX強化

 風精霊:AGI強化

 土精霊:VIT強化

 光精霊:MND強化

 闇精霊:INT強化

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