6.チュートリアル終了と合流
チュートリアルでむやみやたらとがんばる人、いますよね?
普通勝てない戦闘に勝とうとする人とか。
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「チャージショット!!」
とどめのチャージショットがウルフの眉間に突き刺さり、ウルフは光に変わった。
さっきのユキから届いたメールから約30分、ウルフと戦い続けこの2戦は完全ノーダメージで撃破出来ている。
ウルフからは経験値が入るようになったのか、この30分でLv5までレベルが上がってる。
スキルも使用しているものについては、軒並みレベルアップしている。
ただ、さすがにチュートリアルなのか、キャラレベルもスキルもLv5でストップしている。
これ以上はチュートリアルではなく、通常フィールドで鍛えろという
さて、そろそろ30分経ったはずだがユキの方はどんな具合だろうか……
ポーン
お、ちょうどユキからメールだ。
『ウルフ討伐終わったよ。何とかノーダメージで勝てるようになった! そろそろ合流しよう』
あっちもノーダメクリアできたか。
それじゃ『了解。こちらもチュートリアルを切り上げて【始まりの街】に向かうことにする』とメールを返信してと。
「あ、終わったー?」
途中から暇そうにしてたサポートAIに顔を向ければ、どうやらこれでこちらもチュートリアルを終わらせるつもりになったと判断してくれたみたいだ。
「いやー、君達ほど真剣にチュートリアルに取り組んだ人は今までいなかったかなー? ちなみに何でここまでやったのか聞いてもいいかな?」
「それはウルフ程度ならノーダメージできないと後が厳しいからだな」
「うわー、意識高いねー。君みたいな生産タイプのスキル設定でウルフに勝てるのもすごいのに、その上初期装備でノーダメージ狙いとか意識高すぎでしょ」
「そうか? βの時は普通にやってたけどなぁ」
「うん、君は意識高いんじゃなくて基準がおかしいんだ」
サポートAIから変な評価をいただきました。
あーでも、確かにノーダメージクリア出来るようになったのは、装備更新してからだったかもしれないから、あながち間違ってないのかもしれない……
「まあいいや、それじゃ戦闘チュートリアルも終了って事で、まずは君にチュートリアル終了のプレゼントだ」
『5000
チュートリアル終了と言うことでアイテムセットが送られてきた。
ちなみに
「さらに君はβテスターだったね。コッチはβテストの特典だ」
『10000E・βアバター装備セット・初級生産素材セットを手に入れた』
コッチはその名の通りのβテスター特典。
10000Eは参加者全員に、残り2つはいくつかの特典の中から選択した特典だ。
10000Eは多いように感じるが、その実、使おうとするとすぐに尽きてしまう程度でしかない。
むしろ、残りの特典がメインで
もっとも、実際に有利なのは数日分程度でしかないので、その数日分でどれだけダッシュできるかが問題なんだけど。
「βテスト時の君の成績は知ってるけど、あれならもっといい特典が選べたんじゃない?」
「いいんだよ。俺達にはこれが一番助かる」
「そっか。まあ、もう変更出来ないからどっちでもボクとしては変わらないんだけど。それじゃ、最後のチュートリアル、この世界のルール説明だ」
そこからサポートAIがこの
それはこの世界の通貨単位の事であったり、各種ギルドの事であったり、βテストからの変更点であったりと内容は様々だった。
特に世界設定として、プレイヤーは異邦人と認識されていることや、βテストの時点から300年後であるなどは興味深い内容だった。
「……そして最後に、この世界のNPCについてだ」
本当に最後にある意味で一番重要な話が始まった。
「この世界のNPC達は、みんなそれぞれ生きている。君達と同じように。それぞれが自我を持ち、生活している。だから彼らをただのNPCとして扱うのは止めた方がいい。彼らはこの世界の『住人』だからね。できれば、それを忘れないで欲しい」
そうこれはとても重要な話だ。
βテスト時もこの内容についてだけは念を押された。
だから、俺の返事は、
「わかった」
その一言でいい。
それに対して目の前の
「うん、理解してくれたようで本当にありがたいよ」
というものだった。
「いやー、理解してくれたようで本当に助かるよ。中にはまったく聞く耳を持たない連中もいたからさ。……まあ、その結果、苦労するのは彼ら自身だろうけどねー」
と、楽しそうに笑う妖精。
βテストからの情報を少しでも調べていれば、そのような態度は取れたモノじゃない事はすぐにわかるはずなんだけどな。
事前情報を調べないって層はそれなりにいるし、その上で『たかがゲーム』と思って好き勝手するバカはいる。
ゲームのAIが進化して、
「さて、君との時間はなかなか楽しませてもらったよ! チュートリアルはこれで終了だけど、聞き直したいこととか確認したい事とかあるかい?」
「それじゃあサポートAIさんの名前を教えてもらえるかな?」
そう、この妖精、最初の名乗りから『サポートAI』で、最後まで自分の名前を名乗っていない。
最後に自分で『住人』の事を語っておきながら、名乗らずにすませようとしてる。
せっかく仲良くなれそうな
「ふふふ、そうきたか。やっぱり君は面白いなぁ。今までの中で僕の名前を聞いてきたのは初めてだよ! ボクの立場とかを聞いてきた
おいおい、俺は1時間遅れでゲームを始めてるんだぞ。
それなのに誰も名前を聞いていないとかあるのか……まあ、本人が『初めて』と言っているんだからあるんだろうなぁ……
こんな面白そうな『住人』、また会えるものなら会いたいぞ。
「いいだろう、ボクの名前を教えてあげよう。ボクの名前は『エアリル』、風の精霊に連なるものエアリルさ!」
そう自分の名前を高らかに宣言する
いや、見た目から精霊じゃなくて妖精だと思ってたぞ。
「ふふ、その顔はボクのことを精霊だと思っていなかった、って顔だね。まあ、自慢じゃないけど精霊になったのは最近で、それまでは風の妖精だったからあながち間違いじゃないけどね!」
やっぱり元は妖精だったのか。
それにしても元気だな。
「さて、ボクの名前を知った君、トワにはボクからのプレゼントをあげよう」
〈称号『風精霊の祝福』を取得しました〉
なんか、特別っぽい称号をもらえたんだけど。
「本来ならここで与えられるのは『祝福』じゃなくて『加護』なんだけどね。トワには色々楽しませてもらえたから、特別に『祝福』を与えたよ。色々便利な力が宿っているはずだから後で確認してね!」
「ああ、よくわからないけど、気に入ってくれてありがとう」
「さて、最後と言いながらまた長く引き留めてしまった気がするけど、他に聞きたいことはないかな?」
「ああ、称号のこととか聞きたい気はするけど、後で調べることにするよ。とりあえず、今聞きたいことはもうないかな」
「そうか、それじゃあ君の後ろに開いた
「わかった。それじゃあ、またなエアリル」
「ああ『また』ね、トワ。君とはまた会いたいものだね! あ、そうだ最後に忠告だけど、担当した
「了解。それじゃ失礼するよ、エアリル」
その言葉を最後に、俺はゲートに入り【始まりの街】へ転送された。
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「さて、街に着いたはいいけど肝心のユキはどこにいるのか」
ゲートから出た先は【始まりの街】の中心部付近、転移門広場だ。
ここにとどまっていると、後から出てくる人の邪魔になるので、すぐにその場を移動する。
そして周りを見渡してみるが、ユキらしいプレイヤーの姿はない。
アバターの特徴は教えてもらっているから、見落としてるはずはないんだけど。
そして
「うーん、一度メールを送ってみるか」
そう思い今どこにいるのかをメールで聞いてみると、
『ゴメンナサイ。精霊さんと話し込んでてまだチュートリアルフィールドにいるの。もうすぐ行くからもうちょっとだけ待ってて』
と返事が返ってきた。
(っていうか、チュートリアルフィールドだとフレチャはつながらないんだな……)
割とどうでもいい気がすることを考えてみる。
そのあと、βの頃の知り合いに連絡を取って称号のことについて確認していると、ついに転移門からあらわれる待ち人。
アイスブルーの髪をショートボブした猫獣人。
「あ、お待たせ。待たせちゃってごめんね、えーとトワくん」
「待ったのはあまり気にしてないから構わないさ。ユキ」
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