第1章 ゲームスタート
5.チュートリアル
本日からは1日1話投稿予定です
よろしくお願いします
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「【始まりの平原】か……βテストの時と大分違うなぁ」
【始まりの平原】それはチュートリアル専用に作成された、いわば簡易インスタンスフィールドだ。
βテストの時も同じ場所に飛ばされたのだが……
「そーでしょ! なんて言ったってこれからは正式サービスだからね!」
『平原』の名が表す通りなだらかな草地が広がる光景を見ていると、突然後から声がかけられた。
それもなかなかの大音量だったため、さすがにびっくりしたぞ。
「ようこそ! 『Unlimited World』へ! ボクがチュートリアル担当のサポートAIだよ!」
キャラメイク時にも見た妖精型のサポートAIがそこにいた。
キャラメイク時のサポートAIとはまたずいぶんテンションが違うなぁ……
「はじめまして、トワだ。しかし、キャラメイクのサポートAIとはずいぶん違うな」
「そりゃそうだよ、キャラメイクのサポートはクライアント側で処理しなきゃいけなかったからね。その分、余計なシステムを割り振れなかったんだよ」
へぇ、キャラメイクはクライアント側、つまりユーザー側のVRギアで行ってたのか。
でもそれって、何らかの原因でVRギアが壊れた場合、キャラメイクからやり直しじゃなかろうか。
「あ、一度キャラメイク完了まで行ったキャラデータはサーバー側に保存されてるから大丈夫だよ」
なんだか、心を読まれた気がするけどそういうことなら心配はいらなかったという訳か。
「さて、それじゃ早速だけどチュートリアルを開始するよ! まずは自分のアバターを確認して違和感がないかチェックしてね!」
陽気なサポートAIのセリフとともに目の前に大きな姿見が出現する。
その姿見には、青みがかった銀髪に狐耳と尻尾をつけたアバターの姿が映る。
これは間違いなく
その後、歩いたり走ったり跳んだりしゃがんだりなど、色々な動作を試してみたが特に大きな違和感は感じられなかった。
あえて言うなら、狐耳と尻尾の感覚が少しくすぐったいような気がする感じだな。
「うーん、特に問題はなさそうだね! 次は戦闘チュートリアルだけど、ここから先はスキップすることもできるよ。どうする?」
「もちろん受けていくぞ。銃なんて使ったことないしな」
「りょーかい! じゃあまずは、いでよ『的』」
すると3メートルぐらい先に文字通りの的が出現した。
こういう所はなんというかファンタジーしてるよなぁ……
「それじゃあの的を撃ち抜いてみてね。あ、チュートリアルフィールドでは弾数無制限だけど、通常フィールドでは弾丸を持ち歩かないと銃は使えないから注意してね!」
「なるほど弾数は有限ね。ちなみに弾丸の補充はどうすればいいんだ?」
「一番弱い弾なら街に行けば買えるけど、オススメは自分で作成することかな! 【銃】スキルには初期スキルとして【弾丸作成】があるからそれを使って弾丸を作ってね! 弾丸の素材は金属類の他にも石ころや木の枝なんかでも作れるよ! あ、火薬は特に必要ないからね」
「やっぱり妙なところでファンタジーしてるよなぁ……」
銃弾なのに火薬が必要ないとはいかなる弾丸なんだろうか……
「んー、火薬が必要ない理由は銃を自分で作成出来るようになればわかるよ、きっと」
「そっか、変なこと聞いて悪かったな。そろそろ、戦闘チュートリアルを始めさせてもらうよ」
「いやいや、疑問に答えるのがボクの役目だからね! さあ気にしないでちゃっちゃと始めよう!」
俺は初期装備のハンドガンを的に向けて構えた。
1発目は狙いが甘く的の端の方に当たっただけで終わったが、2発目はしっかりと的の中央付近に当てることができた。
ちなみに発砲音はほとんどなかった。
続けて3発、4発と続けて当てていくと6発目で的が壊れた。
どうやら設定されていた耐久力分のダメージを与えることができたらしい。
「おー、6発で破壊出来るとはすごいね。今までの人達は大体10発前後かかってたのになー」
「まあ的の中央付近に集中して当てることができたからじゃないのか。ところで、弾のリロードってどうすればいいんだ?」
「あ、弾切れ起こす前に聞いてくれた! えっと、これも【銃】スキルの初期スキルで【リロード】って言うのがあるから、それを使えばその銃に設定されてる最大弾数まで補充出来るよ」
この反応だと、今までは弾を撃ち尽くしてからリロード方法を聞いたプレイヤーがほとんどなんだろうな……
まあ、リロードスキルを使うだけでリロードできるというなら楽でいいか。
その後もリロードスキルを試しながら、的をいくつか破壊して見せた。
的を撃ち抜く過程で銃の扱いにも大分慣れて、動かない的なら狙った場所付近に当てられるようになった。
的の距離も変えて色々試してみたが、有効射程は最大7~8メートルといった所だった。
これ以上の距離で当てると、露骨にダメージが減っているのが見て取れた。
弓に比べると、短弓と分類されてる弓と大体同じくらいの射程かな。
多分これは武器がハンドガンだからで、スナイパーライフルみたいな武器種があればもっと伸びるんだろう。
さすがに数百メートルとかは狙えないだろうけど。
「銃のチュートリアルはもう十分かなー。じゃあ次は魔法のチュートリアルに移ろう! と言っても魔法は簡単なんだけどね」
いや、現実にない分、魔法の方が難しいだろう。
まあ、魔法のチュートリアルはβの時にも受けてるから実際に簡単なのは知ってるけど。
「魔法の使い方は簡単。
1.狙いをつけます
2.使いたいスキルを唱えます
3.魔法が発動します
以上!」
そう、基本的な使い方はこれで済むのだ。
応用をしようとすると色々難しいのも魔法なのだが……
一種投げやりにも聞こえる魔法の使い方を聞いた後、俺は【水魔法】と【風魔法】の初期スキルで的を破壊していった。
「うん、基本的な戦い方はバッチリだね! それじゃ本格的な戦闘のチュートリアルに移ろうか!」
サポートAIのセリフとともに今までの的ではなく、角の生えたウサギ、ホーンラビットが1匹現れた。
こいつよりも弱いモンスターは存在するけど『戦闘』チュートリアルなら妥当な相手だろう。
「さて、それじゃさっさと終わらせるか」
まず手始めに、銃を構えて1発撃つ。
「キュッ!?」
ノンアクティブ扱いだったのか目の前で撃ったのに特に回避もせずに当たるウサギ。
もっともHPバーは10分の1程度しか減ってない。
「キュッ!」
反撃とばかりに突っこんでくるウサギを横にステップしてかわして、水魔法の初期スキルを撃ちこむ。
するとHPの3分の1ほどが一気に減りさらに体勢を崩したため、追加で風魔法の初期スキルもたたき込む。
そのことでさらにHPが3分の1減って、ウサギは吹き飛ばされる。
「水魔法は体勢を崩して、風魔法は上手くいけばノックバックって所かな。じゃあとどめチャージショット!」
これで残りのHPバーも砕け散りホーンラビットとの戦闘訓練は完了した。
チャージショットの威力はともかく、魔法の初期スキルの威力が予想以上に高かったのは、おそらく種族による魔力適性の高さだろう。
試しにもう1戦ホーンラビットと戦闘してみたが、チャージショットと各魔法の初期スキルの威力はほぼ同等だった。
「初級の戦闘チュートリアルは完璧だね! 次の段階の戦闘チュートリアルに行ってみる?」
「次の段階があったのか……うん、一応受けてみよう」
「よーし、それじゃ次の相手はウルフだ! がんばってね!」
サポートAIの宣言通りに出現するウルフ。
こっちはホーンラビットとは違い、最初から
「グルァァァ」
こっちに向かって飛び込んでくるウルフに対し、俺はカウンター気味に頭部に向けて裏拳をたたき込む。
【格闘】スキルは近接戦での対処用に取得していたのだ。
さすがにSTRも【格闘】も低い現状、見てわかるようなダメージは与えられなかったが、追撃で水・風・チャージショットのコンボを叩きこむ事でHPを4割ほど削ることに成功した。
「今の攻撃でも4割程度か……やっぱりウルフはまだまだ格上だな」
まあ、負けてやるつもりはないんだけどね。
と言うわけで、警戒して動きが慎重になったウルフに対してこちらも牽制射撃をくわえたり、自分から距離を詰めて攻撃してみたりといった具合にたたみかけ、ほぼノーダメージでウルフとの訓練も勝利した。
「いやー、すごいね! ウルフ相手にここまで苦戦せずに勝てたのは君を含めて今のところ53人、いや今チュートリアルを受けてる人も含めて54人かな!」
「まあスキルレベルもまだ低いし、まだまだ感覚がなまってるな。ちなみにウルフとの戦闘訓練も何回でもできるのかな?」
「うん、もちろん
「ちなみにこの後のチュートリアルの予定ってどうなってるんだ?」
「この後は『Unlimited World』の諸注意をして終わりかなー。生産系のチュートリアルは存在しないから街に行ってから何とかしてね? 簡単じゃないかもだけど」
ふむ、できれば今のステータスでもウルフ程度完封出来るようになりたいけど、あまり時間かけて雪音を待たせるのもな……
ポーン
ん? メール?
チュートリアル中でも受信できたのか。
差出人はユキ(雪音のアバター名)か。
『トワくん。チュートリアル終わりそう? できればもうしばらくチュートリアル続けたいんだけどダメかな?』
あっちもまだ時間がかかる、つまりもうしばらく戦闘チュートリアルを続けたいって所かな。
あれで結構負けず嫌いだからな、ウルフ相手にがんばるって所かな。
じゃあコッチも返信っと。
『こっちももうしばらくウルフ退治を続けるよ。今から30分後ぐらいを目安に切り上げるつもり。終わりそうになったらまたメールするよ』
さて、これで心置きなくウルフ退治に専念出来るな。
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誤字・脱字の指摘、感想等ありましたらよろしくお願いします。
~あとがきのあとがき~
ウルフ相手に苦戦しなかった人数がやけに少ないのは、βの上位者のほとんどが戦闘チュートリアルをスキップするためです。
熟練者にチュートリアルなんて必要ありませんよね、普通は。
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