番外編 日常

「おはよ、沙織」


「おはよ……沙織」


「おはよう、真琴、愛梨……今日も仲良く一緒にご登校?」


朝、いつものように沙織と挨拶を交わす。

前までと違うのは、私と愛梨が一緒に登校している事だ。


「だって、一緒に住んでるんだから当たり前でしょ?」


「まぁ、そうだけど……真琴のご両親も思い切ったね」


呆れているのか、感心しているのか、そのどちらともとれる様子で沙織が言う。


「あはは、その事については私もビックリしたけどね」


私と愛梨が姉妹だと言う事実を知った後、両親から愛梨を養女に迎えたいとの提案があり、愛梨は二つ返事で了承した。


「真琴と一緒に住めて、嬉しい……❤」


「私も嬉しいよ、愛梨❤」


笑顔でそう言ってくれる愛梨を、私はぎゅっと抱き締める。


「朝からイチャイチャし過ぎでしょ…学校でこれだと、家ではどれだけラブラブなんだか」


「別に普通だよ?一緒に遊んで、一緒にご飯食べて、一緒に寝てるだけだし」


「……真琴、お風呂も一緒」


「あ、愛梨……それは内緒」


「………」


二人がどういう生活をしているかを沙織に聞かれ、何となく最近の生活を思い返してみる事にした。





――起床。


まだ寝ていたい時間だけど、ゴソゴソと隣で動く気配。

暫くして、ゆっくりとカーテンの引かれる音が聞こえてくる。


「……ん」


隙間から漏れる、眩しい朝の光が目に染みた。


「……真……琴、起きて……真琴」


私を呼ぶ声が聞こえる。


「もう朝だよ、起きて真琴……?」


耳元で聞こえる、甘くて優しい声。私の大好きな声。


「ん……あと5分、寝かせて……」


「ダメ、起きて……真琴」


柔らかい手で体を揺すられるのが心地いい。


「じゃあ、キス……してくれたら起きられるかも」


「むぅ……」


私の我儘に、愛梨が口を尖らせる。


「……オデコで、良い?」


「……だめ」


「……じゃあ、ホッペ?」


「……やだ」


オデコもホッペも充分に魅力的な提案だが、恥ずかしそうに俯く愛梨を見ていたら色々と我慢できなくなってきた。


「……」


愛梨は顔を真っ赤にして黙り込む。


「ねぇ、愛梨ぃ……ほら、もう一声♪」


「……クチビル?」


「バッチコイ!」


……チュ❤


モジモジと恥ずかしそうにしながら、愛梨がおはようのキスをしてくれた。


「真琴、甘えん坊……これでいい?」


「うん♪おはよ、愛梨❤」


「おはよ……真琴❤」


一応、起きて挨拶はしたものの何か物足りない。


「愛梨……」


「なぁに、真琴?」


「もっとしたい❤」


そう言って、私は愛梨をぎゅっと抱き締める。


「真琴、ダメ……学校、遅れちゃうよ?」


「大丈夫♪愛梨、今度は私から……ね❤」


「真琴、強引……ン❤」


愛梨を抱き締めたままベッドに倒れ込み、本日2度目のキスをした。



――朝食。


「いただきます」


「いただきます」


二人で一緒に手を合わせ、朝御飯を食べる。

朝食は御飯派かパン派かで意見が別れるところだが、我家の朝食は御飯、味噌汁、納豆が定番。


更に私からのリクエストで、愛梨の作った卵焼きが追加された。


「やっぱり、愛梨が作った卵焼きは美味しいなぁ♪……お弁当のも美味しかったけど、熱々だとまた格別な美味しさよね!」


「~♪」


愛梨は好き嫌いなく、何でも美味しそうに食べる。

以前、黙々とお弁当を食べていた時に比べるとかなり印象が違って見えた。


「愛梨は納豆も大丈夫なのね」


「納豆、スキ……❤」


そう言って、納豆を美味しそうに頬張る。


ムカッ


「……私と納豆、どっちが好き?」


「?」


私の問い掛けに、愛梨は不思議そうに首を傾げた。


「愛梨は、私と納豆のどっちを食べたいの!?」


「……真琴は、食べ物じゃないよ?」


「私は愛梨と卵焼きだったら、愛梨を食べたいもん!」


「!?」


戸惑う愛梨も超可愛い。


「……私と納豆、愛梨はどっちが食べたい?」


「わ、私が食べたい……のは……ま、まこ……」


「……真琴、馬鹿な事を聞いてないで早く食べて学校行きなさい」


母が居るのを完全に失念していた。







――入浴。


「愛梨、一緒にお風呂入ろ❤」


「……うん」


愛梨と一緒に脱衣所に行き、服を脱ぐ。

自分の服を脱ぎながら、気が付くと愛梨が服を脱ぐ姿をガン見していた。


「真琴、そんなにジッと見られてたら恥ずかしい……」


「あ、ごめんね。愛梨の肌ってスベスベで綺麗だから、つい見惚れちゃってた」


愛梨と一緒に暮らすようになって、もう何度もお互いの裸は見ているのだが、いつ見ても愛梨の肌はとても綺麗で、抱き合っている時もついつい頬擦りしてしまう程だ。


「真琴だって、綺麗だよ……その、胸……も、大きいし……」


「え~、胸なんて大きくても何の役にも立たないし……」


「フワフワしてて柔らかそう、プリンみたい❤」


「そっか、愛梨はプリンが好きだったっけ……ン~、ちょっと味見してみる?……なんちゃって……って、愛梨?」


ちょっとしたノリで言ってみたのだが、愛梨が物欲しそうに私の胸を凝視している。


「真琴の……プリン」


「あ、愛梨……何か目が怖いんですけど?」


「……いただきます」


「え、ちょっ……待っ……アーッ!?」


※全年齢版なので割愛



――就寝。


「おやすみ、愛梨」


「おやすみ……真琴」


一緒の布団に入り、愛梨をぎゅっと抱き締める。


「愛梨、暑くないかな?」


そろそろ5月も後半、布団の中で抱き締め合うのは流石に暑いかも知れない。


「大丈夫……だよ、真琴……石鹸の良い香り♪」


そう言って、愛梨は私の胸に顔を埋める。


「あ、愛梨……もうお風呂の時みたいにしちゃ駄目だからね?」


「……真琴の胸、柔らかくて、温かくて、甘くて大好き❤」


プリン・ア・ラ・モードを美味しそうに頬張っていた時の蕩顔で、ジッと私の胸を見つめる愛梨。


「だから、私の胸はプリンじゃないからねっ!?」


「……?でも真琴、お風呂の時は凄く気持ち良さそうだっ……」


「あ、愛梨!ストップ!スト~ップ‼」


※全年齢版なので……以下略






「……ラブラブだ、コレ!?」


「……」


愛梨も一緒に思い返していたのか、顔を真っ赤にして黙り込む。


「……ハイハイ、お幸せにお二人さん」


呆れる事すら面倒になったのか、投げやり気味に沙織が言った。

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