スマホンから始まる恋
「おはよう」
「あ、課長、あの、ちょっとお話が」
祐二は手に持った資料を一旦静香のデスクに置いた。何やら神妙な面持ちである。
「あ、私も丁度話したい事があるのよ」
「あの、うちのスマホンが、色々イタズラしたみたいで、すみませんでした!」
「うちのスマ、え!?」
二人の声が重なったが、先に反応したのは静香の方だった。
「実は、僕のスマホ、スマホンっていうロボット型のスマホなんですけど、
何か、色んな機能がついてまして。
その中に、知り合いに電話する機能があるみたいなんです。
昨日、うちのスマホンに問いただして、全部聞いたんです。
そしたら、うちのスマホンが勝手に課長へ電話したそうで、しかも、僕の声で」
「う、うん」
「課長に買い出しへ付き合う様、無理やりお願いしたみたいで」
「あ、ううん。それはいいの!私が買い出しに付き合うって決めたんだし」
「ましてやまた食事へ付き合ってくれる様に催促したみたいで。
本当にすみません」
「あぁ、それはね」
祐二は神妙な面持ちから、急に真剣な顔へと変わった。
「あの!もし、課長さえ良ければなんですが。
本当に、また、食事とか、付き合ってくれませんか!」
「え」
「実は昨日、スマホンに怒られたんです。そんなのだからダメなんだって。
ロボットに怒られるなんて本当に情けないなと思って。
だから、僕から改めて、お願いしたいなと。もし、嫌じゃなければ、ですけど」
「全然嫌じゃないよ!私も、また、ご飯行きたいな。」
「ほんとですか!やったー!」
二人の顔がパァっと明るくなった。
「ふふ。あっ、ヤバッ。仕事始めなきゃ、中村君、今日の資料は?」
「あっ!す、すぐ用意します!」
「間に合わなかったらさっきの無しだからねー」
「ま、間に合わせます!」
どうやら手元の資料だけでは足りなかったのだろう。
大慌てでデスクを離れる祐二を静香は笑って見送った。
「ただいまー」
静香はスマホをスマホン本体に装着させる。スマホンの目がパッと明るくなった。
「おかえりーシズカ。ご機嫌だね」
「中村君から、ちゃんと、またご飯行きましょうって誘って貰ったのよ」
「それは良かったです。僕達も、わざとバレる様にしたワケですし」
スマホンはそういうと小さく踊ってみせた。
「は!?わざと!?それってどういう」
「まぁまぁ、いいじゃないですか。上手くいったんですから」
スマホンはハッ!とした表情の様な顔で小さな腕を組んでみせた。
「にしても、ご飯に誘われただけですか?告白とかじゃなくて?」
「え。そ、そうだけど」
「はぁ。二人が結婚するのは当分先の話だなー。また、勝手に電話しようかなー」
「もうっ、機種変するぞー!」
「冗談ですよー。冗談―」
キャーと逃げる素振りをするスマホン。
そんなスマホンを静香はからかう様に指でツンッとつついた。
スマホン T_K @T_K
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