スマホンの真意
「中村君も、スマホン持ってたんだ」
「ナカムラユウジさんのスマホンから送られてきたデータには、
こう書かれていました。ナカムラユウジさんは、シズカの事が好きだと」
「えっ!?」
段々と、スマホンは静香の反応を待たずに話を進めるようになっていく。
「僕とナカムラユウジさんのスマホンで協議した結果、
セルフリモート通話機能を使用する事に決めました。
シズカには、ナカムラユウジさんのスマホンが、
ナカムラユウジさんの声で電話をして、
ナカムラユウジさんには、僕がシズカの声で電話をしたのです」
「・・・」
静香にも段々と今回の全容が見えてきていた。
何と勝手なスマホだろうか。何と勝手なロボットだろうか。
「その結果、二人の関係は進展しました。これ以上ない形で、です」
スマホンはまたしてもズバっと言い放った。
「な、なんでそんな事するのよ!自分の恋愛くらい自分で」
反論しようとする静香をビシっと制する様にスマホンは拳をグっと前に出した。
「何か出来ましたか?本当に」
「う。そ、そう改めて言われると」
いざそう言われて考えてみると、全く出来ないと言わざるを得なかった。
「出来ません。僕は誰よりもシズカの事を分析しています。
だから、僕は、ちょっとした切っ掛けを作ったのです。
それもたったの2回、シズカの声で電話しただけです」
「それは、そうだけど。何か騙したみたいじゃない」
「まぁ、それはお互い様ですから。
それに、シズカだって嫌じゃなかったはずです。
この間のデート、楽しくなかったとは言わせません」
エッヘンとスマホンは胸を張る。
「あー。うん。確かに、楽しかった」
「それは、ナカムラユウジさんも同じはずです。
恐らく、後1回僕が電話をすれば、
ナカムラユウジさんはシズカに告白するでしょう」
「はいっ!?なんでそこまで判るのよ」
「シズカ分析のプロとナカムラユウジさん分析のプロがいるんですよ。
それくらい、充電前です」
またしても胸を張る。実に小さな胸である。
「朝飯前、って事よね。多分」
一応付き合ってあげる静香は静香で偉い。
スマホンはそんな静香にまたも落ち着いた声でそっと話し掛けた。
「好きな人同志が仲良くなる切っ掛けを作って文句を言われる理由が判りません。
人が人を好きになるのに、自然な切っ掛けを待つなんて、
あまりにも非合理的過ぎます。
ただ切っ掛けが僕達スマホンだったというだけです。
それは、自然な切っ掛けと何が違うんですか?
それに、僕達が電話した以外は、シズカやナカムラユウジさん自身が行動し、
体験し、そして色んな感情が生まれたはずです。
その感情には何も嘘はないはずです。
僕はこれ以上何もしません。別に機種変してもらっても構いません。
僕はただ、今でもシズカの幸せを考えているだけです」
スマホとは、ロボットとは、
とても思えないくらい達観した意見を述べられてしまった。
しかし、このままスマホンに色々されてしまってはたまったものではない。
「正直、ここまで論破されるとぐうの音も出ないわ。
でも、これ以上は何もしないで」
「どうするんですか?」
心配そうにスマホンは静香の顔を見つめた。
「あした、中村君に全部打ち明けるわ」
「判りました」
「機種変するかどうかは、それから決める」
「はい」
静香はその後、今回自分が許可してしまったが為に、
色々と起こってしまった各機能を停止していった。
勿論、あの分厚い説明書はクローゼットのどこかにしまったままだ。
スマホンが1つ1つ確認画面を出し、
許可の決定を促していったのは言うまでもない。
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