200枚組のサザンオールスターズ
『ニッポンのビートルズ』という10文字、そこから即座に連想するミュージシャン、だいたい国民の何割くらいが同じ結論に行き着くのか、『ニッポンのビートルズ』という10文字は、もう10数年前にもなるか、おれが高校生時代を過ごしていたころだったら、たやすく、多大なるコンセンサスのもとで、その10文字は、解答を誘発したはずだ。
サザンオールスターズ。
一家に一枚あるCDアルバム。
家庭によってバラつきがある。
おれの家はどうだったか。「一家に一枚」というからには、ベストアルバムである。井上陽水はあった。山下達郎もあったかもしれない。
ただ、サザンオールスターズの『海のYeah!!』、これがやはり決定的なベストアルバムだった。このアルバムを所有している日本の世帯は多いと思うが、こういう一家に一枚イズムをマスコミに強調されると、うんざりするし、苛立ちも覚える。
しかしながら、『海のYeah!!』は、『TSUNAMI』を出すまでのサザンオールスターズの集大成かつ見取り図であることを主張することを我慢できないベストアルバムだということ、そこをおれは見失いたくはない。このアルバムすなわち邦楽の見取り図だとは思わない。ベストアルバムなので、うわべだけを削って削って、で終わりかねない。
だけれども、あくまで『海のYeah!!』はサザンオールスターズの入り口にすぎず、その入り口で立ち止まっている──つまり、結局のところ音楽にあまり関心がないミーハーのまがい物、の多いこと多いこと……と攻撃的なセリフを吐きたくなるが、ここはおれの痰壺ではなかった。
『海のYeah!!』でサザンオールスターズをわかった気になっている無知蒙昧のミーハーと、『海のYeah!!』に収録されている楽曲群がしょせん「
ならば、『海のYeah!!』収録曲群の背後にひしめく膨大に積み重ねられた楽曲、さらには、やはりストックを積み重ねた、収録曲という半分は「見せかけの代表曲」の背後に存在する、サザンオールスターズが『勝手にシンドバッド』以来、ロックバンドとして暮らしてきたその時代、その時代の情報、もしくは「やらかし」めいた事件の数々──こういうもの、こういうことを『
それは、頭がいいヤツが支払うべき対価。音楽を受容する自由ではなく、音楽文化現象を分析する義務──そういうことに思いを馳せる、自惚れとは誤解されたくない自負が、2枚組の『海のYeah!!』を、200枚組のサザンオールスターズに拡張させる。
『君たちは何を求めるのか』 ばふちん @bakhtin1988
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