お父さんからの贈り物

買った物をお母さんに渡したおれは、二階へと駆け上がった。

自分の部屋に入ると、魔法関連の本が無数に並んだ本棚の中から、一冊を抜き取る。

おれが持っている本の中で、一番分厚い本。

少し古びたそれは、ずっしりと重い。

これは、おれが魔法を好きになったきっかけになった本。

お父さんがくれた本です。

中には、沢山の魔法の呪文と方法が書いてある。

もちろん、全て試しました。

どれも一度も成功したことはないけれど、おれは大好きな本です。


『これで、ユウトも魔法使いになりなさい』


お父さんのことを思い出して、懐かしくなりながら本を開く。

そういえば、最近は開いてませんでしたね。

もらった当時は、毎日朝から晩までこの本を読んでいたんですけど。

もっとも、まだ俺は字が読めなかったので、お母さんとお父さんに読んでもらってました。

あまりにせがみすぎて、お母さんにはよく怒られましたっけ。

「………あれ」

昔のことを思い出しながらページをめくっていると、ある異変に気づく。

このページって………

左下のページ数を凝視する。

171ページ。やっぱり間違いない。

「ページに文字が………書いてある!?」

全500ページあるこの本の中で、この171ページだけ、もらった時から白紙だったのに………!

おれは、急いで書かれてある文字に目を走らせる。

そこに書かかれてあったのは、異世界へ行くための方法だった。

両手で本を持ち、こう唱える。

「魔法神、メターストに告ぐ。我、魔法を扱う者なり。我に力を与えよ………」

本に書かれてある呪文を、読み上げる。

「トリップサード………!?」

おれがそう唱えた瞬間、本が光り出した。

「ーーっ」

眩しくて、目を開けてられない。

おれはぎゅっと目をつぶると、本を胸に抱き寄せた。









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