第74話 結界破りの魔道具


「聖なる印よ、我が呼びかけに応えよ」


 シュテインが呪文を詠唱する。地面に置かれた二つの金属片が糸のような光で繋がり、その上にアーチ型の平面が現れた。それは裏口のドアへ向けゆっくり動いていく。

 平面が動いたことにより、薄青く光る、アーチ型のトンネルのようなものができた。 

 俺とシュテインは、にわか作りの青いトンネルを通り、裏口のドアにたどり着いた。


「この程度の結界なら、何とか侵入できそうだね」


 その後、俺たちは、離れの正面玄関、本館の裏口、本館の正面玄関と、この魔道具を試していった。

 さすがに、本館の正面玄関は、トンネルができた所まではよかったが、すぐに見張りの衛兵が集まってしまった。

 シュテインがごまかしてくれたが、俺だけなら容赦なく攻撃を受けていただろう。それほど衛兵は殺気立っていた。


 最初、俺は結界が張られていても、スキルクラッシュで消せばいいと考えていた。しかし、結界自体が壊されると警報が鳴る仕組みになっているらしく、シュテインの魔道具に頼ることになったのだ。


 ◇


「実験で分かったことは、この魔道具が中程度の結界には効果があるけど、強い結界になると通用しないということだね」

 

「つまり、場所を選んで使わないといけないってことか」


 実験の後、俺とシュテインは、彼の部屋で実験の検証をしていた。


「魔力が無い俺が使う事に問題はないのか?」


「ああ、マサムネ、それは大丈夫だよ。

 魔法陣を組む時に魔力を注ぐ方式を使っているから。

 それが原因で、強い結界に通用しないみたいだけど、これは仕方ないよね」


「忍びこむ場所がどこになるか分からないが、中程度以下の結界を張っていてくれることを祈ろう。

 シュテイン、とにかく魔道具ありがとう。

 費用の方は、きちんと請求してくれ」


「友達だからいいよ、って言えばいいんだろうけど。

 そうすると、君は気兼ねして次からボクに頼まないかもしれないから、費用はきちんともらうよ」


「ああ、そうしてくれ」


 こうして万事準備を整えた俺は、人探しを本格化させることにした。

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