第37話 闘技会7
魔術師セリカ対魔術師キリグ、美少女対イケメンおじさんの戦いは、キリグの水魔術から始まった。
素早い詠唱で水の玉を作ったキリグは、それをすかさずセリカに向け撃ちだした。セリカはさらに素早い詠唱で土の壁を作り、水玉が自分に届くのを防ぐ。
しばらく、キリグが攻撃しセリカが防御するという戦いが続いた。二人の詠唱速度は、早口言葉もまっ青というレベルだ。
セリカの詠唱速度がそれ以上は上がらないと見たキリグが、一気に勝負を決めに行く。セリカがまだ前の攻撃を防御しているタイミングで、火の玉を飛ばした。
詠唱は、すでに音の連なりとしか聞こえない速度だ。
火の玉が、セリカに迫る。
観客が息を呑んだ。
「なっ!?」
キリグが愕然としたのは、いきなり巨大な水の壁が現れたからだ。セリカには詠唱した様子はなかった。
火の玉は水の壁にぶつかると、ジュッと音を立てて消えた。
「む、無詠唱……」
キリグのつぶやきは、シーンとした闘技場の隅々まで届いた。
「おじさん、気がついた?」
セリカが、いたずらっぽい笑みを浮かべる。
「今まで、おじさんくらい早く詠唱する人が誰もいなかったから、使うチャンスが無かったんだよ」
キリグは声も無い。
「じゃ、今度はこちらの番ね」
セリカがニヤリと笑う。
「受けとめられるかしら?」
少女は瞬くうちに三つの玉を作りだすと、それをキリグに向けて撃ちだした。
キリグは防いだ。水の壁で最初の火の玉を。
しかし、火の玉の後ろから飛んできた土の玉が、簡単に水の壁をつきやぶる。キリグはその直撃を受け、宙に舞った。
その体にさらに水の玉が激突する。
キリグの身体はやすやすと赤い線を越え、観客席下の壁に叩きつけられた。
闘技場内からは歓声すら消えた。
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