第34話 闘技会4 


「ずい分早かったですね」


 控室に戻ると、声をかけられる。

 一つ前の試合を勝ちぬいた青ローブの青年だ。

 俺が手にした武器を見ると、驚いた顔になる。


「そんな武器で、『棍棒ダルケン』を倒したのですか?」


「武器は大きさじゃないからな」

 

 俺は、二本のダガーをジャグリングしながら答える。

 彼は何か言いたそうだったが、ニーニャが俺を引っぱり椅子に座らせた。


「マサムネ、強いのね」


「小さな頃から、戦う訓練をしていたからね」


「あなたの世界では、それが普通なの」


「違うね。というか、断じて違う」


 俺は毎日の古武術修練を思いだし、げんなりしてしまった。

 ニーニャは、俺の耳に口を寄せた。


「女性の扱い方も習ってたの?」


 彼女はそう言うと、さっと俺の頬にキスした。

 これはヤバいな。

 控室のおしゃべりがピタリと止む。


「俺、あいつにだけには、ずぇーってえ負けねえ!」

「殺す!」

「覚悟しとけっ!」


 ほら、キスのせいで無駄に敵を増やしてるよ。

 刺すような視線を俺が受けとめていると、第二回戦が始まった。

 一回戦の結果で対戦を組んでいるようで、俺は第一試合を勝ちあがった青ローブと対戦することになった。


 ◇


「マソムネ選手、ドゥカーリオ選手、開始位置について」


 主審の合図で赤い開始線を踏む。  

 対戦相手は、すでにワンドを構えている。


「初めっ!」


 ドゥカーリオは、青ローブの裾をなびかせながら後ろに飛ぶ。そうしながら、詠唱を始めている。


 けれど、それはこちらも予想済みだった。

 俺は開始の合図とともに、まっ直ぐ相手に向かって跳びだしていた。ドゥカーリオの詠唱が終わる前に、背後に回った俺がダガーの切っ先を彼の喉に浅く食いこませる。


「そ、そんな……」


 ドゥカーリオは、信じられないという声を出したが、すぐにワンドを手から離した。


「勝者、マソムネ!」


 ダルケン戦とは、くらべものにならない歓声が上がった。

 つき添い人席からニーニャが飛びだしてきて、俺に抱きつく。

 俺は彼女の腰を抱えるようにして、控室へ下がった。

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