第33話 闘技会3

 

 闘技場は思ったより大きかった。円形の壁が取りかこんでおり、地面に赤色で大きな円が描いてある。恐らく、あれが場外を示す「闘技線」だろう。

 円の中心あたりに、白い服を着た男が立っている。あれが審判だな。


 俺と対戦相手は、審判の前にある開始線まで近づく。向こう側の壁の上、つまり観客席には他から区切られた、広い座席がある。恐らく貴族だろう、きらびやかな衣装に身を包んだ人々が並んでいた。

その中には、モーゲイン裁判長の姿もあった。隣に座わる少女と談笑している顔は、裁判の時と違い、くつろいだものだった。


 審判の声で俺は我に返った。

 

「では、両者、足で開始線に触れて」


 対戦相手のムキムキマンは前傾姿勢をとり、すぐに飛びだせる姿勢をとった。

 俺は両手に一本ずつダガーを持ち、その手をだらりと下げた自然体だ。


「初めっ!」


 審判の合図があると、予想通りダルケンは俺めがけて跳びだしてきた。

 観客の歓声が高まる。


 相手の初撃を、俺は余裕をもってかわした。

 巨大な棍棒が、ズシンと土の地面にめりこむ。


 あれほど重い武器になると、初速も遅いし、一度動きだしたら方向を変えるのが容易ではない。

 物心ついたころから、じいちゃんから、「お前は、攻撃をかわすのだけは天才的だ」と言われた俺にとっては、ちょろい相手だ。


 相手の二撃目をかわすと、後ろへ回りこむ。毎日の練習で身体に染みついた動きは、後ろに回られたことすら相手に気づかせない。

 耳の後ろをダガーの柄で強打する。

 ダルケンの筋肉ではちきれんばかりの身体が、ドシンと音をたてて倒れた。


「勝者、マソムネ!」


 わずかな静寂の後、審判が叫ぶと、場内が湧いた。

 つき添い人が座る椅子の方を見ると、手を叩きながらぴょんぴょん跳ねるニーニャの姿があった。

 ニーニャと俺は、手を繋ぎ控室に戻った。

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