第31話 闘技会1


 朝になってリーシャばあちゃんと一緒に帰って来たニーニャは、玄関で出むかえた俺にとびついた。すぐ側にルチアとリーシャばあちゃんがいるにも関わらず、俺の唇を求める。

 なぜか、目の隅に映るルチアがまっ赤になっている。

 俺はニーニャの唇に丁寧に応えてやった。これは俺のムラムラを抑えるためでもあるのだから。

 ニーニャと自分自身が落ちつくと、ルチアにお茶を入れてもらう。


「マサムネ、いい情報を仕入れてきやったよ」


 お茶を一口すすったリーシャばあちゃんが口を開く。


「どんな情報です?」


「もう少ししたら、第四区で不定期に開催される闘技会があるらしいよ」


「闘技会?」


「一対一で勝敗を決める試合さ」


「リーシャばあちゃんは、見たことあるの?」


「ああ、ミーシャが去年出場したからね」


「へえ、どこまで行ったんです?」


「惜しいことに準優勝さ。

 優勝者はぶっちぎりの強さでね。

 さすがのミーシャも、彼女には手も足も出なかったんだ」


「彼女?」


「ああ、その優勝者は女だったのさ」


 ミーシャに余裕で勝つ女? 俺は、ゴリラのような女性を想像した。


「それが、どうしていい情報になるの?」


「あんた、あい変わらず鈍いね。

 ニーニャの人探しは、次、第四区だろう? 

 闘技会に出場すれば、あっさり第四区に入れるじゃないか」


 本当にそんなに簡単にいくのだろうか。それに、闘技会がどれほど危険なのかも分からないわけだから、この話に飛びつくのは止めた方がいいだろう。


「マサムネ、出場してくれる?」


 ニーニャがキラキラした目で俺を見る。ああ、こりゃ、だめだな。


「出てみるかな。

 ただし、ちゃんと調べてからだよ。

 出場しない事になってもがっかりするなよ」


「うん! 分かってる」


 ニコニコしているニーニャを見ていると、出場しないという選択肢が消えていく。

 こうしてよく調べもしないまま、俺は闘技会にエントリーすることになった。

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