第30話 手がかりとメイド育成
ルチアが買ってきた布を使い、メイド服を仕立てにかかった。
彼女が着ているこの世界のメイド服は、スーツかメイド服か分からず、なにか納得できない。いつもじいちゃんの服を作らされていた俺には、服を仕立てるなど造作もないことだ。
ついでに友人が教えてくれた、メイドの作法も教えておく。
「お帰りなさい、ご主人様」「行ってらっしゃいませ、ご主人様」というヤツだ。
俺の家にはテレビもスマートフォンもPCも無かったから、そういった情報は友人から仕入れるしかなかった。マンガや雑誌など家に持ち帰ろうものなら、風呂の薪として燃やされた。
俺がどんなに上手く隠しても、じいちゃんはそういったものを必ず見つけた。
ルチアには、オムライスの作り方、ケチャップもどきでその上にハートマークを描くことも教える。しかし、これでいいのかね、友達が言ってた通りにしてるんだけど。
とにかく、ルチアは俺がイメージしていたメイドに近くなった。
メイド服を作るとき採寸していて気づいたのだが、彼女は非常に豊かな胸をしていた。以前の服を着ているときは目立たなかったが、俺が作ったメイド服を着せた途端、「うわあっ!」と思わず声が漏れてしまうほどだった。
ニーニャはその胸を見て、信じられないという顔をした後、俺の顔をじろじろ見ていた。
◇
人探しの方だが、とうとうニーニャが目撃情報らしいものを手に入れた。「らしい」というのは、写真を見せて尋ねている訳でもないので、確かな事は分からないからだ。
しかし、彼女の探し人は、金髪だそうだから、お目当ての人物である可能性はかなり高い。なぜなら、この世界では、ほとんどの人が濃いブロンドのような髪色で、金髪の人はすごく珍しく、俺も今まで一人として出会ったことがないからだ。
ちなみに、俺のような黒髪、ニーニャのような赤髪も、他には見たことがない。
その目撃情報によれば、金髪の女性は城壁外から第5区を通り、第4区へ入ったそうだ。馬車の客車から、その横顔がちらりと見えたらしい。
ニーニャは、まだ第5区での人探しを諦めていないが、どうも第4区への入り方を考えているようだ。
◇
ある時、家に帰るリーシャばあちゃんをニーニャが送っていくという事があった。ニーニャは顔にススをつけ、髪を茶色い布で包む、『ゴミ箱』当時の姿に戻っていた。
二人は翌日帰ってくるという事で、ムラムラが起こらないか俺はちょっと心配だったが、それに備え、昨晩ニーニャに「お清め」しておいたから、今の所は大丈夫のようだ。
この日は、マーサも、西の『ゴミ箱』にある自分の家に帰っていたので、屋敷には俺とルチアだけということになった。
いつもより早めに夕食をとり、入浴した。浴槽に入っていると、ドアが開いたのでニーニャが予定を早めて帰ってきたのかなと思っが、立っていたのはメイド服姿のルチアだった。
まっ赤な顔をしている彼女は、震える声でこう言った。
「だ、旦那様、お背中流させていただきます」
あー、そういえば、俺の世界では、メイドはそういうことを言うって、さっき夕食を食べながら、冗談交じりにルチアに話しちゃったからな。友人の情報が間違ってたら、どうなるんだこれ?
俺は仕方なく浴槽のまん中に座り、彼女に背を向けた。
ところが、少し待ってもルチアは俺の背中を洗おうとしない。振りむくと、ほとんど全裸になった彼女がいた。
「ほとんど」というのは、首に巻いている黒いリボンだけ、そのままつけているからだ。
俺はあわてて反対側を向いた。ルチアの形が良い肉感的な足が目に入る。彼女が浴槽の中に入ってきたのだ。
俺はルチアに背中を向け、座った。
彼女は俺の背中に液状の石鹼をたっぷり塗ると、腕を前に回してくる。俺の背中に彼女の大きな双丘が触れる。
双丘の先にある乳首が固くなっているのが分かる。
そのまま、彼女は俺の背中を自分の身体で洗いはじめた。
なぜ、彼女はそんなことをするのだろう?
そう考えた時、はっと気づいた。そういえば、昨晩ニーニャを清めながら、俺の世界ではメイドがそういうことをすることがあるらしい、という誠に不確かな友人情報を話したんだった。
ルチアは、毎晩のように俺たちの寝室を覗いてるからね。
「君にばかり洗わせるわけにもいかないね」
俺は一瞬でルチアの背後に回りこむ。こういうときでも、反射的に古武術の技が出るのが少し悲しい。
手のひらにたっぷり石ケンを垂らし、それでルチアの背中を洗ってやる。
「ああっ!
ご主人様っ」
ルチアは、首筋から耳にかけてが赤くなる。その耳元でささやいてやった。
「いつも覗いている悪い子には、お仕置きだよ」
背中の正中線を背骨に沿ってすっと撫でると、それだけでルチアは中腰の姿勢から腰を落とした。背中がふるふる震えている。
軽く耳たぶを噛んでやる。
「あん」
ルチアの背が反りかえる。首筋に息を吹きかけると、震えが強くなる。彼女の豊かなブロンドの髪をかき上げ、首筋から耳にかけて手を這わせる。
「くんっ」
俺の手が身体の前に回ると、ルチアの反応はさらに大きくなった。腰からおへそのライン、おへそから脇の下のラインを撫でていく。
「ああっ」
俺の手が豊かな胸を優しく撫でると、彼女は身体を大きく震わせた。
「んっ、いっ」
体の前面にあちこち触れられた彼女は、やがて、首をがっくりと前に垂れてしまった。
彼女の体に布を巻き、その身体を抱えあげ部屋まで運ぶ。彼女の部屋は、俺とニーニャの寝室から見て一つ奥の部屋になる。つまり、覗きができる部屋だ。その部屋は、彼女が自分で選んだ。
ルチアをベッドに降ろす。目を開けた彼女が、俺の首に手を回してくる。
ルチアの唇が俺のそれに触れる。彼女は舌を入れてこようとしたが、俺はそれを許さなかった。ベッドに横になった彼女を手で愛撫する。
「ああっ! ご主人様にこうされるの、ずっと夢見てたのっ!」
彼女は、どこに触っても身体が震えるほどに高ぶっていた。俺は、そんな彼女が動けなくなるまで愛撫してやった。
彼女に毛布をかけ、俺の部屋側の壁を確認する。そこには、五十センチ四方くらいの絵が掛かっていた。それを取りはずすと、壁に両開きの小さな扉がある。引きあけると、人の頭がやっと入るくらいの空間があり、奥の壁には小さな木片があった。それを外すと小さな穴になる。これは、俺の部屋にある肖像画の目の位置に当たる。それは俺の部屋で確認してあった。
覗くと、ちょうど俺とニーニャが使っているベッドが目にはいってきた。今、俺とニーニャの部屋に灯りはついていないが、俺は夜目が利くからね。
その後、自分の部屋に帰ると、久しぶりに一人だけのベッドで寝た。
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