第28話 屋敷での生活(上)
ニーニャと俺は、第五区の屋敷で生活を始めた。
この前まで『ゴミ箱』で生活していたわけだから、その差は凄まじいものがある。
生活は快適そのものだった。
俺たちはモーゲイン裁判長に頼み、二通許可証を作ってもらった。これは、マーサとリーシャばあちゃんの分だ。
俺たちの通行証と違い第五区の住民とは認められないが、ハウスキーパーという名目なら好きなだけ第五区に滞在することができる。
マーサは西の『ゴミ箱』での仕事が好きだから、一週間の内二日は向こうへ帰っている。リーシャばあちゃんは、屋敷がいたく気に入り、ほとんど『ゴミ箱』へは帰らない。
彼らを雇う費用だが、ルチアが売ったワンドは、全部で二万ディールもの値がついた。日本円でいうと二百万円くらいか。当面はそれから支払えばいいだろう。
ニーニャは、お風呂に夢中だ。
この世界には、いろんな入浴剤があるようで、それを次々と試している。一番のお気に入りは、「ぬるぬる風呂」だ。名前は、俺が勝手につけてみた。
まず浴槽に普通にお湯を入れ、そこへこの入浴剤を入れる。すると、ぬるぬるしたお湯ができあがる。
体を拭かず、そのままお湯から上がると、少ししてヌルヌルが粉に変わり柑橘系のいい香りを放つという優れものだ。
◇
日課になっている第五区の人探しを終え、入浴していると、浴室の扉が開く音がした。この浴室は、部屋の入り口から浴槽が直接見えない間取りになっている。
バスタブで横になっている俺の視界に、ローブ姿のニーニャが入ってくる。
「あれ? 俺、入浴中の札をかけ忘れてた?」
ニーニャは黙って首を左右に振ると、なぜか赤くなっている。
「どうしたの?」
「私も入ろうかなって……」
「ああ、それじゃ、俺はもう出るよ」
「ま、待って、そのまま入ってて」
彼女は小さな声でそう言うと、後ろむきになり、ローブをはらりと落とした。綺麗な背中のラインが露わになる。彼女は、ローブの下に何も着けていなかった。
「め、目を閉じてて」
俺が目を閉じると、浴槽に何か入れている気配がする。その後、隣にニーニャが滑りこんできたのが分かった。浴槽は二人並んで入っても十分余裕があるほど大きい。
「もう、目を開けていいわよ」
目を開けると、すぐ横にニーニャの美しい顔があった。お湯につかったばかりなのに、上気したような赤い頬をしている。
俺は愛しさがこみあげ、彼女のおでこにキスをした。
彼女は手でお湯をかき混ぜている。
お湯は、すぐにとろみが出てきた。どうやら、ニーニャがお湯に「ぬるぬる風呂」の
ぬめぬめつるつるした温かいお湯は、何ともいえず心地よかった。
「マサムネ、撫でて」
手のひらで彼女の身体を撫でていく。最初、左手だけで撫でていたが、途中から気合を入れ、両手で撫ではじめる。
ニーニャは上気した顔を湯に浮かべ、時々、「はあっ」や「うんっ」という声を漏らしている。
すでにかなりの情報が書きこまれている、脳内ニーニャ=ノートを元に、彼女の身体を隈なく撫でていく。
ニーニャは次第に息が荒くなり、何度もピクピクしていた。
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さすがに「ぬるぬる風呂」という題にする勇気がありませんでしたっwww
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