第15話 火炎団2


 ドロス、パメルの二人は、火炎団から斥候として派遣され、東の『ゴミ箱』まで偵察に来ていた。

 

「ドロス兄貴、しかし、北の『ゴミ箱』でやった狩りは、楽しかったでげすね」


「ああ、殺し放題だったからな」


「しかし、バーニーの兄貴たちはどこ行っちまったんでしょうねえ」 


「大方、捕えた女でも使って、どっかで遊んでるんだろうよ」


「こっちじゃ、俺も女を捕まえてえでげす」


「パメル、安心しな。

 東の『ゴミ箱』は、北に比べりゃ三倍は大きいんだぜ。

 女もそれだけ多いってこった。

 それより、『狩り』が上手くいくかどうかは、この調査に掛かってるんだから気合入れな」


「へへへ、今から楽しみでげす」


 その時、話し声が聞こえてきて、二人はさっと頭を下げた。様子をうかがうと、彼らが潜んでいる場所から少し離れた草原で、子供たちが遊んでいるようだ。


「なんでえ、子供かよ。

 驚かしやがって」


「兄貴、いっそ殺っちまいやすかい?」


「馬鹿! 

 そんなことしてみろ。

 住民が警戒しちまうだろうが。

 子供のおしゃべりからでも、情報は取れるんだ。

 聞き耳立てとけ」


「へい、分かりやした」


 子供たちは、少し体が大きな少年中心に遊んでいるようだ。

 そのうち、小さな男の子が、少年が頭にかぶっていた布を手でつかんだ。

 

「こらっ、ミコス!

 それは、取っちゃダメ!」


 そう叫んだ声は、少年ではなく明らかに少女のものだった。少女の隠された長い髪がはらりと宙に舞う。それは、鮮やかな赤色だった。


「おい、パメル。

 あれをさらうぞ」


「でも、兄貴、騒ぎになるんじゃ?」


「一人ぐれえなら構わんだろう。

 それに、あの女から直接情報を聞きだしゃいいからな」


「分かりやしたでげす」


「いいか。

 お前は、まずガキの一人を押さえろ」


「へい」


「後は俺に任せな」


 パメルはその小柄な体を活かし、意外なほど機敏に動いた。

 子供たちの輪から少し離れた一人に駆けよる。

 パメルが後ろから子供の首に手を掛けたタイミングで、ドロスが姿を現す。

 パメルに捕えられた子供が、大声で泣きだした。


「あ、あなたたち誰っ!? 

 何するのっ!?」


 赤い髪の少女が叫び声を上げる。

 ドロスがそれに答えた。


「お前がこっちに来な。

 そうすれば、ガキは放してやる」


 少女は迷いもせず、すぐに答えた。


「いいわ。私の代わりに、その子を離してやって」


「そりゃ、おめえの心がけ次第しでえだぜ」  


 少女は、両腕を頭の上まで挙げた。


「そのまま、こっちへ来い! 

 ゆっくりとだぞ」


 ドロスは、近づいてきた少女に、熟練の手つきで縄をうった。


「パメル、仕事は終わりだ。ずらかるぜ」


「へい」


 パメルが、捕えていた子どもを乱暴に突きとばす。ドロスが赤髪の少女を肩に担ぐと、二人は森に隠した馬を目指し、草原を走りだした。

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