第12話 スキルクラッシュ


 俺とニーニャは、マーサさんの仕事を手伝いながら、空いた時間で人探しをしていた。

 ニーニャが探している相手の顔すら知らない俺は、彼女について回っているだけなんだけどな。

 ただ、俺が彼女の横にいる意味が無かった訳ではない。ニーニャ一人だと勘違いしたヤツが、何度か彼女に手を出そうとしてきたから。

 そいつらは、俺が声を掛け、手と手の間で丸石をお手玉すると、慌てて逃げていった。  

 一人、刃物を抜いた男がいたが、俺が投げた石が足元の地面にめり込むと、刃物を捨てて逃げだした。その刃物は、俺の私物になっている。ナイフが無くて困ってたんだよな。


 夜のキスは、相変わらずだ。ニーニャも口の周りが赤くなっているのが分かったから、なるべくソフトにキスするようにした。すると、なぜかニーニャがピクピクする回数が増えた。そして、なぜか、もう二着ニーニャの服を買うようマーサさんに言いわたされた。

 

 マーサさんが理不尽な「税金」を払ってから、五日が過ぎた。

 その日、集落の外れに人が集まっていたので、様子を見にいった。

 そこには、下着だけの格好となった三人の男がいた。先日、マーサさんに偽の税金をたかった男たちだ。ねずみに似た男が何か叫んでいるが、よく聞きとれない。住民たちが罵声を浴びせているからだ。

 ヤツらは魔力を失い、城壁外へ捨てられたんだろう。 


 三人に近づくと、俺は大声で叫んだ。


「天罰だ!」


 住民は一瞬シーンとしたが、口々に叫びはじめた。


「天罰だ!」

「天罰よ!」

「天罰じゃ!」


 ねずみたち三人は、耳を押さえ地面にうずくまった。

 命より大切な魔力を失う可能性がある行為をする者は、もう出ないだろう。

 自分のスキルを試すため三人を利用したことについては、全く後悔していない。

 ねずみたち三人で試してみて分かったことは、次の事だった。


 指あるいは手で狙いさえすれば、後は心の中で思うだけで対象の魔力を壊せる。


 他人の魔力を壊す自分の能力を、俺は『スキルクラッシュ』と名づけた。

 まあ、そのまんまなんだけどね。

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