8話


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「………少し話がしたい。いいか?」

 そんなディックが声をかけてきたのは、レイラの泊まる部屋に彼女を送っている途中のこと。目的地にたどり着いたので、扉に手をかけて中へ入ろうとした矢先だった。

 なんだろうかと思いつつも、レイラはさっきまであったことの記憶を遡ってみることとする。




 ある程度の時間になると国王の一言で会議は終わりを告げた。そしてそのあと、侍従たちによってそれぞれの客室へと案内があったのだ。

 各々が誘導されてこの部屋を出ていく中、レイラも手びきによって客室へと戻ろうとしていたのだが―――突如割り込むようにしてディックがレイラの手を取ったおかげで、国王への挨拶もままならぬまま食事の部屋を去ることとなる。

 もっとも、ディックは国王へ挨拶をすでに済ませていたらしかった。なので手を引かれながらもレイラは大慌てで挨拶を国王に返して退室したのだ。

 ただ・・・少しばかり強引な手で連れ出されたはいいものの、廊下へ出るときも廊下を歩くときも会話らしい会話がなされることはなく。疑問に思いつつレイラは手を引かれて歩き続け、そして今に至っている。




 疲れはあるものの幾分かは余力があったので、

「………そこまで時間は取れないとは思うけれど。話があるなら部屋に入って中でしましょう」

 とレイラは言いながら客室へと誘導した。

 扉を開いてディックを中へ誘えば、借りてきた猫のように大人しく中に入って客室の中の椅子へと腰を下ろす。座ったのを見てレイラも扉を閉めると、対面にある椅子へ歩いていって腰掛けた。


 そして、しばらく静かな空気が漂った。聞こえるのはベッドの側にいるスカイの寝息のみで、少しだけ気まずいような雰囲気が二人の間に漂う。

 沈黙を破る気配はなく、ただただ時間だけがゆっくりと過ぎていった。





 ――一体どれほどの時が流れたかは定かではない。切り立った崖を登るように長いかもしれないし、晴れた空を飛ぶように短いかもしれない。

 けれど、どうやら己のなかでようやく考えが纏まったようだった。


 なぜならここで、

「………なにを考えてあの作戦を話したのか、正直に話してほしい」

 とディックがこれまで閉口していた口火を切ったから。

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