7話


 緊張が体を包みこむ、そんな静けさ。


 それを破ったのは意外にも、

「………確かに内容としては実行が可能なものばかりです。多少甘いところはありますが、その部分も含めてきちんと詰めていけば問題ないかと」

 という真っ先に反対の意見を出すとレイラが思っていた宰相で。


 その後を続くように、

「時間は掛かりそうですにゃね。にゃが、悪くないものですにゃ」

「私はいいと思いまーす! 伝達とか雑用は任せといてくださ〜い!」

「………少しでも争いがなくなればよいのですが」

「俺、いや私もこの作戦に賛成です。国と民を守ることこそ我らの誉れ。そのためならばこの命と力を喜んで貸しましょうぞ」

 グレイ、ジェシカ、騎士団長の順に諾の声が次々と上がっていった。

 エレミアも賛成の意を唱えてはいるがどこか心配そうだ。それでも頑張らねばと固く握り拳をつくっているところを見るに、自身のできることで彼女は協力するつもりなのだろう。

 国王は言葉を発することなく雰囲気だけで許諾の意を示した。控えている侍従長は言われるまでもなく同じようにして頷く。あの日のお茶会と変わらず、こちらを全面的に信頼しているのが目に見えてうつった。



 次々と協力的な声が上がるのを見てホッと安堵するレイラ。戦いを知らない小娘の無謀すぎる作戦に否定の言葉は出てくるだろうと覚悟してきたつもりだが、思った以上に好意的で安心してしまう。逆にちょっと不安になるくらいだ。


 おかげで大丈夫なのかと少しの猜疑心が持ち上がるものの、

「ケンカふっかけてきたのを受けて立つだけなんだから大丈夫だよ」

 という少し楽観的な幼馴染ジェシカの言葉がその胸騒ぎを打ち消した。おかげてレイラは心の余裕を持つことができたのだ。






 このぐらいになってくると、リフェイルもようやく決心できたのか許諾の言葉を掲げた。ただし王都制圧の隊列先頭を務めるという役割も志願してきたのだ。

 さすがに思いとどまらせようと手を伸ばしかけるものの、リフェイルは頑固としてその意見を曲げず。結局はレイラが折れてその志願を受け入れたのである。


 そうして殆どの者が同調の雰囲気になったところで、各所にてさっそく話し合いが始まった。

 グレイやリフェイルらは国王を含む騎士団長とともに地図を見ながらどのようにして軍を動かすか話し合い、エレミアやジェシカは宰相と一緒になってどのくらいの費用と時間を必要とするか語り合っている。そんな話し合いの場を行ったり来たりして侍従長が他の侍従らに指示を出しながらお茶の準備やらをしているのが見えた。

 レイラも一度深呼吸をして気持ちを整えたあと、さっそく2つの場所を言ったり来たりして話し合いに加わっていった。









 だからか気づかない。

 ―――レイラの言動に引っかかりを覚えたディックが、グレイたちとの会話に参加しながらも彼女を見ていたことを。

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