6話


 そうして語られた案というのはこうだ。


 まず、すぐにグラスウォールの王都を制圧するのではなく軍を王都から離れた地方や辺境に動かしてほしいこと。これは王国民を保護するのと同時に王都を取り戻すための助力を取り付けるための布石だということも同じように説明していく。

 それから軍隊だけでなくエンデリアにある傭兵組織ギルドにも力を借りたいことを宰相に告げた。理由としては、傭兵組織独自の連絡網を使ってとある噂を流してもらいたかったからである。

 その内容というのが、




 ―――『不死鳥の乙女が遠い蒼空より舞い降り、王国グラスウォールを救いにきた』という少し先の未来を予言めいたもの。




 この噂が流れれば傭兵組織から依頼を渡しにきた商人たちに伝わり、それらが国を旅する旅人たちへと伝播していってグラスウォール王国へ届くかもしれないとのことだった。それに、王国民に届けば自分たちにはまだ希望があるのだという指揮向上にも繋がるはずなのだと。


「その策は確かに有効な手段だと言えるでしょうが………逆に敵側にも貴女がここにいるとバレてしまうのでは?」

 という騎士団長の質問に対しては、

「そうかもしれません。けれど、あたしがあの城から救出された時点で相手側にもわかりきっていると思うのです。あたしがどこに囲われてどこにいるかなんてすぐに。だから、あえてこちらから誘い出してみるのもありかなと思ってこのような作戦に至りました」

 と言いながらディックに言って持ってきてもらった紙筒を受け取ると、レイラはテーブルにその紙筒を広げた。すぐさま騎士団長や宰相が身を乗り出し地図を覗き込む。

 描かれていたのはエンデリア王国やグラスウォール王国を含むいくつかの国の簡単な地図で。どうやら事前に王宮にある図書の部屋で借り受けてきたようだ。

 その地図を見ながらレイラはさらに言葉を紡ぐ。それと同時にグラスウォールのいくつかの場所に指を起き、そこで何をするのかも話を始めた。

 彼女が指し示したのは王都周辺をぐるりと囲むような場所ばかりで。


 曰く、指を指した場所には軍隊を置いて城門正面を除く王都周辺を確実に包囲してほしいこと。一部の隙間なく、誰一人として王都から逃さないようにすること。

 曰く、王都の入口には数名の兵士と集まってもらったグラスウォールの民たちに待機してほしいこと。

 ―――そしてその隊列の一番前には、噂の真実を決定づける象徴として自身レイラかリフェイルを立たせること。


 曰く、隊列が完成したあと最前線の号令をもって王都を無血の制圧開始とし、これを成功させること。


 以上がレイラの考えた実現可能かもしれない提案内容である。






「……すべてがこのような形で動けるとは思っていません。それでもあたしの考えた最適解だと思う提案です。その、いかがでしょうか………?」

 もう一度固く拳を握りしめると、レイラはぎこちなく頭を下げる。同時にまたこの部屋は静寂に包まれた。

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