シンクロキャンセル
被害者の名前は一方通行。大量発生した不審者の難民を学校ギルドに紹介しているところを狙われた。なのに目撃者がいない。正確には名乗り出る名前がない。
学校に行くためには理解不能なオブジェ『崇高』という電車に乗らなくてはならない。
「定期券は私でいいよ」
「便利だね」
「だね」
ホームに立つと飛び込みたくなる。
いけない。こんなことでは駄目だ。
伝説の連続殺人鬼をゲットしないと。
電車が来た。来たかもしれない。きっと来たんだ。来た。
電車内は主人公になりたい人で溢れていた。
自分の人生に価値があるなんて信じられないのがポップだ。
風景が流れていく。
無意味な建造物の繰り返し。
工事途中の禁止看板。
正常な設定の敷金。
建設現場のラジオ音楽の夢想。
『U.N.オーエンは彼女なのか?』が脳内再生した。
「彼らを転生させるために助けてあげてもいいんじゃないかな?」黒音。
「駄目だよ。そしたら報われない人生に不毛という意味がなくなっちゃう」
「それってひどいことじゃないの?」黒音。
「ひどいという次元を画面から超越しているんだよ」
「コンテニューはなし?」黒音。
「なし」
意識に時間を奪われている。これが搾取の進化系。
広告が無惨に人間の姿を切り刻んでいる。早く英雄になりたい。
きっとなれる。
なれる?
なれる。
なれるの?
なれるよ。
侮辱を体験することで人は大人になるのだろうか。発達障害の幸福。
降伏の幸福。なにもせず理不尽に社会から命令される面白さが人を魅力的にする。
電車に乗ったことは忘れよう。それは一時的な記憶障害だ。
「大丈夫?」黒音。
「大丈夫」
「怖くない?」黒音。
「怖くない」
「じゃ、降りよっか」
あっという間の時間。
墓場に行くかと思われた崇高さは死体を吐き出した。
復活の呪文。
さあ学校戦だ。
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