第110話 モンスターポップ×2



 その言葉は、バグについての知識は一般プレイヤー並みにある僕でも、聞き慣れないものだった。


 モンスターポップキャンセル……何だって?


 一つ一つの単語の意味は分かるるけど、それが無数に連なるとよく意味が分からなくなってくる。


 僕達の理解が及んでない事を見ながら、アリッサはその言葉の意味を詳しく解説してくれた。


「モンスターのポップは分かるよね? フィールドでモンスターを退治すると、いなくなっちゃうけど、一定時間後にまた自然に出現するってやつ。同じ場所に出現するんじゃなくて、ランダムで座標を決めてるから、ポップ場所でずっと待機してても無駄っていう」


 それなら知っている。

 わざわざ調べなくとも、ある程度フィールドに出たプレイヤーなら、誰でも知っている事だ。


 同じ場所で延々とモンスターが湧き続けていると、出現時に敵の不意をついて攻撃する事が可能になってしまうから、想定よりも狩りの難易度が下がってしまう。


 だから、どこにモンスターが出現するのかを分からなくして、モンスターの背後をとったり、または取られてたりしながら戦う事が出来るようにした。つまり、危機感のある戦闘を演出できるように、プログラムが調整しているのだ。


「でも、それがちょっとおかしな事になる時があってね。二体のモンスターが同じ場所にポップしようとする事があるんだよ。かなり珍しい事例だから、目撃者がうんと少ないんだけど」


 そこまで聞けば、答えに辿り着くのは早かった。


「ちょっと、まて、まさか……」

「え、どういう事なんですか?」


 まだ、理解できて無さそうなシロナに向けて、僕は頭の中に思い浮かべた推測を口にする。


「それがバグになるんだよ。同時にモンスターが出現しよとしたけど、できなくて、その空間を構成している情報がおかしくなる」

「その通り、ニルバっちせいかーい!」

「つまり、さっきアリッサが声を上げたのは、そのバグが発生した跡地がこの近くにあるって事なんだろ」

「おお、そこまでたどり着いちゃった。うん、MPKBは何か修正されないままなんだよね。一説にはバグに見せかけた仕様か? ……なんて言われてるし」


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