第111話 バグ転移



 答えを確認する様にアリッサはその場から数歩歩いた先で、草地の地面をつま先で指し示した。


「ほら、ここだよ」


 本来地面があるはずの場所は、なんだか故障したゲーム画面みたいな状態になってた。


 灰色の砂嵐の模様が見えている。

 ここは現実じゃなくて仮想世界だという事をこれでもかというくらい思いださせてくれる光景だ。


「ここを踏むとバグを利用した転移減少が起きて、別のフィールドに飛ばされちゃうけど。どうする?」

「行くに決まってるだろ」

「お、ニルバっち、男前!」


 アリッサの言葉に即答すると、なぜか彼女に満足そうな顔をされる。


「さっすが私達の王子様、そうこなくっちゃね。まー、ここでしり込みするようのだったら、私はここまでついてきてないし」


 アリッサのその見たてって、どこから引っ張り出してきたものなんだろう。

 ていうかよくそんな恥ずかしいワード普通に言えるね。

 嫌がらせか。

 僕が王子様の柄じゃないって分かって言ってるだろ、絶対。


 そんなだから、僕はむっとしながら応える。


「だって準備は出来てるんだし、ここにきてしり込みする必要ないだろ」


 別に、万全の準備をしてから転移に挑戦する方が良かったし、他にもバグがないか探してみようとしてみても良かったんだけど、今回は他のだれでもない僕の妹が関わってるんだ。

 ためらってなんていられない。


 決意を新たにしていると、シロナが分かったような顔をしてアリッサの評価に同意していた。


「そうです。ニルバさんだったら、きっとやりますよ」


 だーかーから。何で君達そうなるのさ。

 向こう見ずな性格してるつもりはないし、結構慎重にこれまで行動してきたんだけど?


「それが家族というものなんですから」


 ああ、そういえばシロナには弟がいたもんね。


 だからこういう時は自分もそうするって事か。


「ささ、ニルバっち。そんな憮然とした顔してないで、さくっと行っちゃおう」


 言われなくたって。

 とっくにそうするつもりだよ。


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