第90話 再会
「おい、何するんだよ。不審者」
「お兄ちゃん? お兄ちゃんだっ!」
「はぁ?」
ジト目でいきなりの行動にでた相手に抗議の視線を送っていると、彼女は嬉しそうな表情になってこちらの首に腕をまわして抱き着いてきた。
「お兄ちゃんが、らいかの事を助けてくれたんだねっ。こんなに早く会えるなんて!」
「ぐえ……。ちょ、まっ、待てこのっ。誰がお兄ちゃんだよ……って、らいか?」
感情の高ぶりで腕に力が入ったのか、絞殺されそうになっていると、相手の言葉の一部分が気になった。
「そんなはず。……だけど、まさか。本当にらいか?」
「そうだよ。らいかだよ! ひょうかお兄ちゃん、無事でよかった!」
彼女はこちらのリアルネームを知っているらしい。
この事実を前にして、僕は認めざるを得なくなる。
目の前の少女は本当に、僕の妹……らいかなのだと。
相手の顔をじっと見つめると、似てなくも……ないような。
この世界にいるプレイヤーは、専用のアバター……自分の分身となるキャラクター組んで使ってるから、現実の姿とは違うはず何だけど。
目の前の彼女が僕の妹の来夏だとしたら、僕の事が何で分かったんだ。
それにらいかは、例の一件でオンラインゲームを毛嫌いしていたはずだ?
そもそも、僕がデスゲームに巻き込まれた日に、らいかはログインしてなかったはず。
あの日以来まったく確認してなかったフレンドも見てみたけど、非ログイン状態だって記され続けていた。
なのに、なぜ……?
「お兄ちゃん、良かったー。分かってたけど、やっぱり無事だったんだ。スタッフさんが教えてくれた見た目通りだからすぐに分かったよ」
「ぐえっ、だから、ちょ……らいか、落ち着けって」
とりあえず、このままだと感動の再開の余韻で絞殺されかねない。
久しぶりに会った妹をなだめるのは、そりゃもう大変どころじゃなかった。
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