第89話 落下生物注意



 唐突な出来事を前にして考えたい事は山ほどある。

 疑問も、次から次へとあふれ出てくる。

 けど残念ながら、目の前の状況が示す通り、長々と物思いに意識を割いている余裕はなさそうだった。


「ニルバさん! あのままじゃ、落ちちゃいます!」


 空の穴から出現したプレイヤーは、宙を飛ぶ術をもっていないのか、そのまま落下していく所だ。

 意識は……あるようだけど、現状の理解ができてないのか呆然としてるようだった。


「他の奴動けよ。ああ、もうっ!」


 有名な観光地なんだろ、天空の大地ブルーフォールは。

 絶対他にも何人かこの事態に気づいてそうな人間がいるはずなのに。

 何で誰も動こうとしないんだよっ!


 悪態をつきながらも、星屑の革靴の効果で、宙へと駆ける。


 そして、放っておけばそのまま天空の大地に激突してしまうだろうプレイヤーを受け止めた。


 落下速度とあわせて、受け止めた際にダメージを被らないように調整したけど、余裕で間に合った。


 腕の中に受け止めたそのプレイヤー……少女の様子を窺う。


 立て続けに起こった事に対して、理解が追いついてないのか、こちらにぼうっとした視線を向け続けている。

 だが、ふと目が合った瞬間にビクってなられた。


「ふぁっ!」

「ちょ、暴れないでくれる!? 落っことすから」


 シロナの件に引き続いての落下生物発生の危機。


 事故にならないよう身構えながら文句を言うと、少女はすぐに大人しくなった。


 フードの中を覗き込む様にこちらの顔をじっとみた少女は、何を思ったのか次の瞬間「えいっ」……っと行動。

 こちらのフードをめくっていた。


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