第66話 その後



(ぼく個人としては)問題だらけの初の大規模イベントは、色々あった後に幕をとじた。


 水龍討伐の最後の方とか疲れすぎて何やったか覚えてない所もあるけれど、あれから死人は一人も出ていないはずだ。


 で、事の次第だけど……。

 町の中を自由してた水龍は、子供がふ化したからで歩いて(飛翔して?)いたらしい。


 子供の行方は分からないままだそうだが、大人になる前に討伐しようという動きが出ているらしい(けど、僕はこれ以上関与しないので、大いに外野で頑張ってほしいところだ)。


 水龍がふりまいて行った呪いの方は、あの町にいたプレイヤーの分なら、無事に全員解けたみたいだ。


 人里離れた所で石化していない限りは、遠くの町にいる人にも順次対応していくらしい。

 まあ、良かったね。

 




 で、僕の近況だけど。

 かわった所はなし、だった。


 何か劇的な変化があるまでもなく、今まで通りひきこもり生活を送っているよ。


 なんか終盤ではちょっと恥ずかしい独白のシーンが入ったような気がするけど、あれはちょっと雰囲気に充てられていただけって言うか……。


 カウントしない方針で。

 劇的に変わった人間がトラウマを急激克服、前線に復帰……なんてすると思った?


 人間、そう簡単に変わるわけないじゃん。


「ニルバさん、はいご飯できましたよ」

「……だけど、最も変わった物がここにひとつありましたとさ」

「どうしたんですか」

「それ、こっちのセリフ。色々言いたいことあるけど、なんでシロナは毎回僕の家にやってきてるわけ?」


 以前と一点だけ変わったのは、シロナがよく僕の家にやってくるようになったという点だ。


 なぜか、ご飯を作ってくれたり家の掃除をしてくれるようになったのだ。


 天気が良い日だと、「散歩にいきましょう」なんて誘って来る事もある。


 え、何怖いんだけどこの展開。


 女の子がかいがいしく親切してくれる事自体は嫌じゃないよ。

 僕だって男だし。

 手料理とかは普通に嬉しい。


 だけど、ねぇ。


 引きこもりの相手とシロナじゃつりあわなくない?


 どんな陰謀?

 どんな嫌がらせ?

 

 でも、シロナだからそういうのじゃないんだろうなぁ。


「こんな引きこもりの家に来るなんて……物好きだよね」

「そんな事ないと思いますよ。ニルバさんは良い人じゃないですか」

「君、頭おかしいんじゃないの?」

「照れ隠しするとちょっと言葉が乱暴になっちゃいますけど、本当は優しい人だって知ってますから」

「勝手に言ってれば」


 シロナの本心は分からない。

 そう難しい事考えてる様にはみえないのが、色々女の子と付き合った事が無い僕には怖いところだけど。


「おかわりいりますか?」

「うん、それはちょうだい」


 でも、安定の引きこもり生活が脅かされてるのに、何だかあんまり悪い気はしないんだよね。


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