第61話 過去の出来事



 ついでに思い出したくもない事まで思い出してきちゃったよ。


 それは、VRMMOにはまって、いくばくかの時間が立った頃の事。


 妹を誘って、一緒に冒険をしていた記憶。


 知り合ったばかりのプレイヤーと一緒に即席のパーティーを組んで、新しいフィールドに出かけたんだっけ。


 でも、そいつらは普通の一般プレイヤーじゃなかった。


 初心者や中級者になりたてて粋がってるカモを探していた、プレイヤーキラー……PKだった。


 僕と妹はそんな事も知らずに、勝手の分からないフィールドの奥まで進んで、そこで彼らの裏切りにあった。


 上級者用のダンジョンの中にとじこめられて、突如絶望的な環境に放り出された。


 痛みや、苦労は色々あったけど、この際そんな事どうでも言い。


 裏切られた、というのがショックだった。


 仲が良いと思ってた。

 これから友達になって、付き合いも増えていくんだろうなって、思えてた。


 それなのに。


『お兄ちゃん、私もうVRMMOやらない』


 一番初めの最初に体験した、仮想世界のゲームの中で妹の心に、傷をつけた。


 だから。

 よく知らない人間を簡単に信用してしまった、自分自身が一番許せなかった。


 でも、

 そんな奴等ばかりじゃないって事は理屈で分かってたから。


 この世界に閉じ込められた時も、攻略には協力してた。


 命がかかってるし、自分の身だって危ないし。

 さすがにそんな状況まで我が儘通そうだなんて思わないよ。


 それなのに……。


『お前たちに背中を預けるなんて無理だね』


 攻略に必須だったフィールドボスの打倒の時、仲間に裏切られた事がどうしても許せなくて……。


 僕は攻略組から離脱していったんだ。


 限界だった。

 これ以上、人を信じるなんて僕にはできないよ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る