第62話 第一関門



 回想を終わらせたのは敵の攻撃だ。


 ブレスが効かなかった事から、水龍は攻撃手段を変えたようだ。


 己の巨体を生かして、こちらに体当たりをかましてくる。


 龍一体分の質量が本気のスピードを出してこちらにぶつかって来る光景ってどんな?

 これぞ、仮想世界のだいご味だよね。

 なんて、そんな事考えてる場合じゃないって。


 ここで現実世界動揺の物理法則が働いていたら、人間なんて軽くひしゃげてしまっていただろう。


 けれど、ここは仮想世界だ。

 淡い赤の光を放つ盾が、激突してくる水龍の衝撃を全て封じた。


 まだ、スキル発動時間内。

 衝撃が発生したエフェクト光がまったけれど、僕に影響はない。


 体当たりが通らなかった事で、一定の憎悪値……ヘイトを稼いでしまったらしい。


 モンスターのターゲットは完全に僕にうつっている。


 水龍は、「キシャアァァア」「グワァアアア」みたいな雄たけびをあげながら、今度はするどい爪を振りかぶって来た。


 半端ない迫力があったけど、それも、防いだ。


 そろそろかな。


 もうすぐ、制限時間がなくなる。

 動けないうちに、他のザコモンスターがやってきて、周囲を囲まれたら移動できなくなってさすがに詰んでたけど、そこまで僕の運は悪くなかったみたいだ。


 第一の関門は突破した。


 次は……。


 僕は愛用の剣、イクスロンドを構える。


 炎の属性攻撃がついているから、通常攻撃よりはダメージを与えられるだろう。


 僕一人で、どこまでダメージを与えられるだろう。

 何事もなく撤退できる、とは考えない方が良いだろう。


 龍モンスターの移動速度は、プレイヤーが出すそれよりもはるかに上だ。

 逃げ切れやしない。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る