第7章

第60話 回想



 実はこのスキルには致命的な弱点がある。


 強大すぎる攻撃から、必ず身を守ってくれるものなのだ。

 普通ならそれほど、大変な物ではなかっただろう。


 しかし、今の自分にはまずい。

 このスキルを発動すると、きっかり一分はその場から動けない。


「シロナ、アリッサ。退避! はやくどっか行って、邪魔だよ!」

「えっ? は、はいっ。あ、でも」

「大丈夫だって、シロナっち。ニルバっちのレベルは、攻略組と同じくらいなんだから、そう簡単には死んだりしないよ」


 背後で、動くのをためらうシロナをアリッサが引っ張って行く気配。

 他の者達の事はどうでも良かったけど、せっかくかばっってやったんだから、あっけなく死なれても寝覚めが悪い。


 ついでに耳をすませて確認すれば、彼等も足音を立てて逃げていくのが分かった。


 でも、


「ニルバさん! ニルバさんは、本当に大丈夫なんですか!?」


 シロナはそれでも僕を置いていく事に抵抗があるようだった。


「うっさい、人の心配より自分の心配してろ!」

「答えになってないです!」


 ああもう、馬鹿シロナ。シロナの馬鹿。


「僕は、大丈夫、だから!」

「本当ですね!?」


 君みたいな低レベルお人よしプレイヤー、この場にいたって邪魔にしかならないのに。


 だけど僕は、そういう馬鹿な奴のこと、それほど嫌いじゃないみたいだ。


 短い間だったけど、彼女との思い出が脳裏に駆け巡る。


 すっとんきょうな出会い方をして、思わぬ機械で相手の事情を聴いて。

 友達に為に無茶をする所にあきれて、今も馬鹿みたいに僕なんかの事を心配してるんだろう。


 もうちょっと、話してみたかったな。


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